建築業に役立つノウハウ集

工事請負契約書とは?作成する際のポイントと注意点

工事請負契約とは発注者と請負人の間で交わされる契約です。請負人は工事の完成を約束し、発注者はその完成した建物に対し報酬を支払います。その際必要になってくるのが契約書です。契約書は工事請負契約書、工事請負契約約款、設計図、見積書からなり、様々なトラブルが起こった時に解決しやすくするためにも大変重要な書類です。

建設業法改正による変更点や契約する際に見ておくべき項目についてお話します。

工事請負契約書とは


まず工事請負契約とは、発注者と請負人の間で交わされる契約をさします。「住宅建築工事請負契約」や「住宅リフォーム工事請負契約」など種類があります。

請負人は工事の完成を約束し、発注者はその完成した建物に対し報酬を支払います。
その際に必要となるのが工事請負契約書です。

工事請負契約書とは、建設やリフォームする内容について施主(お客様)と工事請負者(工務店・リフォーム会社)の双方が工事内容や金額、期間などの詳細について合意したことを示す契約書類です。工事の規模に関わらずすべての工事で工事請負契約書を交わす必要があります。

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工事請負契約書の内容

工事請負契約書には、下記の16項目を必ず記載する必要があります。
これらの項目は、約款のように定型の契約条項と契約(工事)毎に内容が変わってくる項目に分かれています。
ここでは、記載義務のある項目一覧とその中で契約毎に内容が変わる項目を解説します。

記載義務がある項目一覧

工事請負契約書に最低限書かなければならない項目は原則として定められています。

  1. 工事内容
  2. 請負代金の額
  3. 工事着手の時期及び工事完成の時期
  4. 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
  5. 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来高部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
  6. 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  7. 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  8. 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  9. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  10. 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
  11. 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  12. 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  13. 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
  14. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  15. 契約に関する紛争の解決方法
  16. その他国土交通省令で定める事項

▼参考:令和2年10月1日施行 建設業法 第19条  (令和3年3月現在)

※令和2年10月に施行された改正法です。間違いのない様にご確認ください。(傍線部が変更された項目です)

契約(工事)毎に内容が変わる項目

記載義務のある項目の中には、契約(工事)毎に内容を書き換える必要がある項目があります。

  • 工事名、工事内容
  • 現場住所
  • 工期(着工から完工までの期間)
  • 工事を施工しない日、施工しない時間帯
  • 請負代金額
  • 請負代金の支払い時期と方法
  • 調停人(定めない場合は削除)
  • その他の項目、備考など

これらの項目の記載には注意が必要です。
必ず、契約内容と照らし合わせ誤りのないよう記載しましょう。

▼工事請負契約書のテンプレートをダウンロードできるサイトをまとめました。
テンプレートを確認することで、理解を深めることができます。
工事請負契約書 テンプレートサイト 10選

契約書はどんな時に必要か

結論から言うとどんな工事であっても契約書は必要です。民法では当事者同士の合意があるならば口約束だけで書面で残さなくても契約を結ぶことができるとされています。しかし建設業は特別で、民法とは別に建設業法が定められているのです。建設業許可の有無や工事の金額、規模などは関係なく工事をする際は必ず契約書は必要となってきます。以下の工事に関わる仕事を建設業といい、建設業法のルールに従わなければなりません。

土木一式工事/建設一式工事/大工工事/左官工事とび・土木・コンクリート工事/石工事/屋根工事/電気工事/管工事/タイル・れんが・ブロック工事/鋼構造物工事/鉄筋工事/ほ装工事/しゅんせつ工事/板金工事/ガラス工事/塗装工事/防水工事/内装仕上工事/機械器具設置工事/熱絶縁工事/電気通信工事/造園工事/さく井工事/建具工事/水道施設工事/消防施設工事/清掃施設工事/解体工事
 ▼参考:令和2年10月1日施行 建設業法 (令和3年3月現在)

更に建築業法には次の二つの記載があります。

第十八条 建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
 ▼参考:令和2年10月1日施行 建設業法 (令和3年3月現在)

以下はこの二つの条文をもとに、契約書の目的や役割を解説します。

請負契約の双務化

請負契約書が果たす役割の一つは、不平等な契約の締結を防ぐ点にあります。
扱う金額が大きい建設工事では、発注者が有利な立場を利用し、不平等な契約を提示する場合があります。
このような請負契約を結ぶ上での義務の偏りを「請負契約の片務性」と呼びます。

受注者側にとって不利な契約の事例は、以下の通りです。

  • 代金の支払時期・内容の不明確さ
  • 一方的な契約内容の変更により、損害賠償を請求できない
  • 不可抗力による損害負担を強いられる
  • 資材の購入先を指示される

工事請負契約書を交わしておくことでこのような問題を回避できます。
しかし、対等な契約を交わすだけでは不十分です。問題の解決方法をあらかじめ定めておきましょう。

認識の擦り合わせ

扱う金額が大きい建設工事の場合、契約内容の不明確さや認識の違いによって、後日トラブルが生じる可能性があります。
工事請負契約書には、認識のすり合わせを行い詳細に内容を記載することでトラブルを回避することができます。
先にも述べましたが、万が一トラブルが生じた際に大きな問題へと発展しないよう解決方法を定めておくとよいでしょう。

工事請負契約書の作成方法


工事請負契約書の作成は、主に市販の工事請負契約書を購入し手書きで記入する方法、エクセルやソフトを利用し作成する方法があります。
また、無料で配布されているテンプレートを活用するなど作成方法は様々です。
しかし便利だとはいえ、無料のテンプレートは、請負者にとって不平等な内容になっている場合があります。
記載義務のある項目や必要事項を必ず確認してから利用するようにしましょう。

ここでは、工事請負契約書を作成する上で注意が必要な項目について詳しく解説します。

▼テンプレートサイトまとめ
工事請負契約書 テンプレートサイト 10選

工事名称・工事場所・工事期間・請負金額

工事請負契約書1~4

工事の基本情報ともいえる、工事名称、場所、期間、金額です。

「何を、どこで、いつからいつまで、いくらで」という基本的な情報なので工事請負契約書を交わしていなくても何かしら書面などで残しているケースはあります。
しかし最終的な契約としてお互いの認識に齟齬がないよう、工事請負契約書にも詳細な情報を記載しておくようにしましょう。

また、2020年10月建築業法改正により、「著しく短い工期の禁止」の規定が追加されました。発注者・請負者ともに合意があっても、長時間労働を強いるような不当な短期工事は禁止されています。明確な期間は定義づけられていませんが、契約内容や過去の似た工事の実績などにより判断されるため注意が必要です。

注文者と請負者

工事を依頼するお客様と請け負う工務店やリフォーム会社とのサインを書く部分です。

お客様の状況によっては「工事する人と入金する人が異なる」というケースがあり、親の家をリフォームするために息子さんが支払うということもありますよね。

親御様は工事内容に納得しているのに、入金する息子さんとトラブルになって・・・しかも注文者は親の名前、なんてことにならないように「誰が注文者なのか」は明確にしておきましょう。

また、法的に義務付けられてはいませんが押印欄を作っておくとよいでしょう。
押印がある場合、契約文書の真正性が担保され、万が一何か大きなトラブルがあった場合でも、証拠として認められやすくなります。

支払い方法

工事請負契約書5

上述した請負金額を、「いつ、どのように支払うか」を明記するのがこの項目です。
支払予定日・支払の項目(着工金、完工金等)・税込みか税抜きかなどを明記しておくと良いでしょう。

工事の規模によっては、契約締結時、着工時、引き渡し時と区切って支払ってもらったり、逆に小規模なら一括で支払ってもらうなど詳細を決めることが可能です。

支払金額

一般的な支払い条件は契約締結時金10%、工事着手金30%、中間(上棟)金30%、完成引渡金30%で設定されていますが、請負会社によっては建物の完成前の契約時に大幅な請求をしてくる場合があります。
万が一請負会社が倒産した場合や、契約解除によって工事が途中で止まってしまった場合に過払い金は取り戻すことは難しい為、出来高に応じて支払いを行うのが好ましいです。

違約金

工事請負契約書を作成するにあたって、工事の遅れによって発生する違約金について適切に記載する必要があります。
利用する約款によって金額の規定は異なる為、確認漏れにより、より多くの違約金をとられてしまう場合があります。

例えば、民間建設工事標準請負契約約款(乙)を利用した場合、通常が5~10%なのに対し14.6%の違約金請求が行えることになっています。
建設工事において取り扱う金額は大きい為、数パーセントでも抑えたいものです。
必ず、利用する約款に記載されている金額を確認するようにしましょう。

追加費用

工事が始まってから契約時に決まっていた費用に大幅な追加費用がかかってきてしまうということはよくあることです。工事をして初めてわかることもあるので追加費用がかかるのは仕方のないことではあるのですが、契約書には含まれず別途要件として水回りの工事や、外構工事などが書かれていることがあります。こういった項目が契約書に含まれているかどうかは見ておくべきでしょう。

また、民間建設工事標準請負契約約款(乙)の場合、協議の上発注者の承諾がなければ追加費用の請求はできません。
必ず追加工事に際して、追加費用を請求する可能性がある旨を記載しておきましょう。

添付書類

一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が用意してくれている工事請負契約書だけだと、詳細な工事内容が事細かに記すことができません。

具体的な工事内容を見積書や仕様書、設計書を添付して契約書類の一部とすることで、あとから食い違いがないようにします。

クレームに関する取り決め

工事開始後、「近隣住民からクレームによって工事が延長してしまった」という場合があります。
しかし、約款によってクレームでの工事遅延は違約金の請求の対象となってしまいます。
こうした事態を防ぐためにも、クレームによる工事の遅れを可能とする旨を記載しましょう。

  • 施工管理システム

工事請負契約書の手書きはコストの無駄

お客様との食い違いが発生しないために、工事請負契約書は必須書類です。

ですが、これを毎回手書きで作成するとなると大量の案件をさばくリフォーム会社にとって時間のロスは大きいものになります。

たいていの場合、業務時間が短くなるというよりは「残業して完成させる」ことになるでしょうから、会社としては必要な対応だとしても担当者たちは疲弊する一方です。

また、現時点で工事請負契約書を用意しない工事を続けているリフォーム会社の多くはその他の管理も「紙」「Excel」など非常にアナログな対応を取っているケースが多いものです。

工事請負契約書に必要な情報のほとんどが、業務が進むなかで必ず記録されているはずなのに契約書を作るタイミングで改めて手書きするのは手間以外の何物でもありません。

契約書などの書類が出力できる業務管理システムを導入しよう

顧客管理、見積、原価管理などさまざまな業務をまとめて管理するシステムの「一元管理システム」と呼びます。

一元管理システムはさまざまな部署や職種の担当者が利用することもあり、「情報がひとつの場所にまとめられる」のが大きなメリットです。

特筆すべきはこの一元管理システム、ほとんどの場合業務書類が出力できるようになっています。

お客様の契約日や工事内容、金額など様々な情報はシステムに入力できるようになっているので、それらの情報をもとに帳票が出力可能です。

一元管理システムが使えれば、工事請負契約書の作成は最低限の手間で完結します。

これを機に、会社全体の仕組み再構築を検討するのも手段のひとつです。

▼一元管理に関する記事はこちら
Lesson9.一元管理とは

工事請負契約書を作成できる『建築業向け管理システム アイピア』


アイピアは、クラウド上で、建築業に必要な機能が揃った一元管理システム。
工事請負契約書の発行だけでなく見積管理、顧客管理、その他工事に関わる帳票等様々な機能に対応しています。

【アイピアで出来ること(一部)】
・顧客管理
・見積書作成
・請求書作成・入金管理
・原価管理(労務費管理も可能)
・発注書管理
・工程表作成
・案件進捗管理
・労務費管理(出面表)
・帳票(工事台帳、見積書など100種類以上)
・スクリーニング機能(分析機能)

まとめ

今回は、工事請負契約書とは何かについて解説いたしました。
工事請負契約書は、契約を交わすうえでトラブル防止や双務性を保つために大変重要な書類です。
その為、作成の際は必ず必須項目や契約内容を確認しましょう。
とはいえ、工事請負契約書以外にも工事請負契約約款、見積書、設計図など契約するにあたり膨大な量の書類に目を通さなければならないのは本当に手間ですよね。
工事請負契約書を作成できるシステムを利用することで、データの整合性が取れるため、契約内容のチェックや文書の作成時間が短縮されます。
これを機にシステム導入も検討してみてはいかがでしょうか。

 

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