元請業者も下請業者も、お互いに気持ち良く仕事をするためにはルールが必要です。
そのような建設の現場で活躍するのが工事下請基本契約書です。
元請業者が下請業者へ仕事依頼を行う際には必須な書類でもあります。
近年ではエクセルやワードではなく、システムを使い電子化している企業も増えました。
この記事では、工事下請基本契約書の記載事項を始め作成方法や注意点についても紹介していきます。
工事下請基本契約書とは
元請人が下請人に工事をお願いした際にルールを決め、お互いに合意をしたものを書面化したものが、工事下請基本契約書と呼ばれています。
お互い何かあった時のために必要な書類です。
工事下請基本契約とは
工事下請基本契約とは、下請人に元請人が工事をお願いする際の合意を指します。
元請業者と下請業者のパワーバランスを見た時に、圧倒的に元請業者が上になります。
何もルールを作らないまま仕事を引き受けてしまうと、いざトラブルが起きた時に下請業者が不利になってしまう可能性があり危険です。
仕事を一生懸命頑張って下請人として働いても損をする形を採らないように、建設業法ではしっかりと規制を行っています。
契約書に記載する内容も決まっていますし、お互いがしっかりと確認し合って合意したというサインと押印もしなけければなりません。
工事請負基本契約書の必要性
詳しくルールを定めずに契約書を交わしていた頃は、下請人が不利な内容で契約させられていた例がありました。
そのため、工事請負基本契約書では元請人が都合良いような契約書にしないために、工事標準請負契約約款が定められています。
決して下請人だけをひいきするような内容でもなく、お互いにとって公平になるようなルールが定められているのも特徴です。
トラブルが起きた時にも、双方の権利義務が守れるようにと工事標準請負契約書があります。
民法では口頭での約束でも問題ありませんが、万が一トラブルになった時言った言わないの話になってしまうと大変です。
工事請負契約約書があれば書面で約束した証拠を残せるため、いざという時を考えると必要です。
約款に関する記事はこちら
工事下請基本契約書を締結するタイミング
お互いに安心して着工をするためにも、その前に書面でやり取りを行うことが重要です。
まだしっかりと工事下請基本契約書を交わす前の段階でトラブルが起きてしまったら、大変なことになってしまいます。
いざという時すぐに書面をチェックできるようにするためにも、契約は着工前に行いましょう。
工事下請基本契約書の書き方(記載項目)
元請人の有利にならないように、必ず書かなければいけない事項もあります。
ここから、工事下請基本契約書の記載事項について紹介していきます。
記載項目
必ず工事下請基本契約書に書かなければいけない記載事項は、これまで14項目でした。
ルールの改正があり、今は15項目に増えています。
工事内容
何の工事を行うのか、具体的な内容を記載します。
そのまま具体的な内容を記載する場合と、『別紙の設計仕様の通り』と記載する場合があります。
別紙を利用する場合は、一緒に講じない内容の付いた別紙を添付することが必要です。
請負代金の金額
金額の書き方は、単純に額を記載できれば問題ありません。
その下に括弧を使って、取引にかかる消費税についても記載できれば、さらに親切な工事下請基本契約書になります。
工事着手・完成時期
工事着手がいつで完成がいつか、すぐに見てわかるように年月日の順番で記載をします。
そして年月日の前に、『工期』と付けます。
請負代金の前払金の支払時期や方法
前金を支払う場合には、その時期やどのように支払うのかを書きます。
しかし、前金は必ず支払うべきものではないため、ない場合も考えられます。
この場合は何も記載しなくてOKです。
工事が延期・中止した場合の損害賠償
下請人もさまざまな仕事を行っていて、スケジュール管理をしています。
急遽工事が延期になったり中止になってしまったりすると、予定も変わり大変です。
そのため、万が一工事が延期になったり中止になったりした場合、どのような対応をするのか具体的な内容を決めておきます。
災害・不可抗力などによる工期の変更や損害賠償の負担
災害を始め自分たちではどうにもならないことが起きてしまった場合は、下請人は基本的に損失を負担しません。
そのため、『履行遅滞の責を負わない』と記載しておきましょう。
価格などの変更に基づく請負代金または工事内容の変更
世界情勢によっても急に物価が上がってしまい、資材の急激な高騰に見舞われてしまうケースもあります。
元請人にとっても予測でいないケースがありますので、この場合は下請代金の変更が可能になると決めておきます。
第三者に対する損害賠償
下請人を信頼して任せているため、万が一工事で何かあった時には下請業者に責任があります。
しかし、下請人ではなく元請人の指示で、第三者へ被害を与えてしまうケースもあるかもしれません。
その際は元請人に責任がありますので、『第三者に損害を及ぼした場合には、甲の負担とする』などと記載します。
注文者による資材の提供または機械の貸与の方法に関する定め
資材の提供や機械の貸与がある場合は、どちらがどのように負担をするのか、貸与を求められるのかを記載します。
頼む内容によっては資材の提供や機械の貸与がないケースもありますので、その際は記載する必要はありません。
工事の検査の時期および方法
いつ工事の検査を行い、時期は完成からどの程度の日数以内に行うのか決めて記載をします。
工事完成後の請負代金の支払時期および方法
いつ元請人は下請人に代金を支払うのか、わかりやすく記載します。
年月日、その次に金額を書きましょう。
工事の補償保険契約の締結やその他の処置に関する定め
工事の補償保険契約などを定めている場合は、記載を行います。
規定がない場合は記入しなくても問題ありません。
履行の停滞などによる遅延利息、違約金、その他の賠償金
工事が万が一約束の期日までに終わらない場合など、違約金を支払うようにと記載します。
契約に関する紛争の解決方法
万が一トラブルが発生してしまい、紛争が起きてしまった時、どの裁判所で裁判をするのか記載します。
工事を施工しない日と時間帯
今までは工事を施工しない日と時間帯の記載はありませんでしたが、新しく必須になったので書きましょう。
日曜日休みであれば、施工しない日として『日曜日』と記載します。
工事請負契約書(無料テンプレート)に関する記事はこちら
工事請負基本契約書の作成方法
工事請負基本契約書を作る際には、これまで通りワードやエクセルを使う方法と、システムで電子化して作成する方法があります。
ワードやエクセル
ワードやエクセルを使ったテンプレートも多く、自社の条件に合わせて使えます。
ただ、そのまま使用してしまうと、自社にとって不利な内容になってしまう場合がありますので注意が必要です。
請け負う工事内容に合わせアレンジをして、不利にならないようにチェックをしながら作成しましょう。
システムを用いて電子化
建設業でも電子契約が可能になり、工事下請基本契約書もシステムを利用して電子化ができます。
これまで当たり前のようにかかっていた印紙税などもかからないため、コストの削減にもつながるでしょう。
最近は電子契約ができるようになり、利用する企業が増えています。
ただ、電子契約書をせっかく準備しても、プリントアウトして紙面に押印して交付を行うと収入印紙を購入しなければならないので注意しましょう。
無料のテンプレートサイト
工事下請基本契約書は無料のテンプレートがあります。
国が提供しているフォーマットもありますので、ぜひご活用ください。
工事請負契約書の電子化に関する記事はこちら
工事請負基本契約書の締結の際の注意点
ここからは、工事請負基本契約書の締結の際何に注意したら良いのか紹介していきます。
印字代
工事請負契約書は課税文書に該当してしまうため、書面にしてしまうと必ず印紙の貼り付けをしなければなりません。
契約書の内容で貼り付けしなければらない印紙代も変わってきますし、経費もかさみます。
システムを使い電子契約を行うほうが、印紙代もいらないのでお得です。
工事請負契約書における印紙に関する記事はこちら
作成しない場合の罰則
お互いトラブルが起きてしまっても確認できるようにと、建設業法でも工事請負基本契約書を作成するように決められています。
そのため、万が一作成しない場合は罰則があります。
国土交通大臣もしくは都道府県知事から、指導や監督処分を受ける可能性があるため、注意が必要です。
工事請負契約書に関する記事はこちら
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まとめ
元請人と下請人でトラブルが起きてしまったとしても解決できるように、工事下請基本契約書は重要な役割を果たしています。
万が一契約内容に追加したい内容がある場合も、その度に双方の同意が必要です。
お互いが気持ち良く仕事できるように、しっかりと工事下請基本契約書を交わしましょう。
印紙代もかからないため、システムの電子化を利用して作成するのがおすすめです。
工事請負契約書に関連する記事はこちら
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