安全管理者とは?建築業界を安全に支える役割りを紹介

建設業では50人以上の労働者が所属している会社は、安全管理者を置く義務があります。
では、安全管理者とはどのような役割りを果たしているのでしょうか?

1976年~1994年の「建設業における死亡者数の推移」では、1,451人~942人と死亡者数が減っています。にも関わらず、1994年度の業種別の死亡災害発生状況では、4割以上死亡災害が建設業で発生していました。
そのため、厚生労働省では「元方事業者による建設現場安全管理指針のポイント」作成して、安全管理の指導を行っています。

安全管理者とは

この図のように建設業界は特殊な構造があり、それ故に、危険が伴うことも多く事故も起きやすくなります。

建設業の安全管理者は、事業場(主に建築現場など)で作業員や現場環境の安全を管理しています。巡視や作業員への安全教育、作業環境の整備など仕事は多岐に渡ります。
実際の安全に気を配るだけでなく、何層もの下請け構造の中で発生する危険を避け、契約時の取り決めで危険を回避するなど、労働者と現場の安全を第一に奔走しています。

安全管理者を置くべき業種と規模

法定の業種(※1)で常時50人以上の労働者が働く事業場では、安全管理者を置くことが義務づけられています。安全管理者は、安全管理者の資格を有する者(※2)から選任します。2人以上の安全管理者を選任する際に、一人が労働安全コンサルタントであった場合は、その一人が専属でなくても問題ありません。

安全管理者と置くべき業種と事業場規模(※1)

また、業種の区分に応じた安全管理者の数のうち、少なくとも一人は専任の安全管理者とする必要があります。

専任の安全管理者と置くべき業種と事業場規模

ご自身の事業場がどの業種に該当するかご不明な場合は、所轄の労働基準監督署へお問い合わせください。

安全管理者の資格(※2)

安全管理者になるための選択肢は二つあります。一つが厚生労働省が推奨する「安全管理者選任時研修」を受けて資格を得る方法と、もう一つがその研修に加えて、以下に挙げる条件のいずれかに該当する人が選任されます。

  • 学校教育法による大学、高等専門学校の理科系の正規課程を卒業後、2年以上産業安全の実務に従事した経験がある者
  • 学校教育法による高等学校、中等教育学校の理科系の正規学科を卒業後、4年以上産業安全の実務に従事した経験がある者
  • 学校教育法による大学、高等専門学校の理科系の課程以外で正規課程を卒業後、4年以上産業安全の実務に従事した経験がある者
  • 学校教育法による高等学校、中等教育学校の理科系の学科以外の正規学科を卒業後、6年以上産業安全の実務に従事した経験がある者
  • 7年以上産業安全の実務に従事した経験がある者
  • その他(職業訓練課程修了者関係)
  • 労働安全コンサルタント

上記のように、学歴による実務経験の必要年数に違いがあるため、学歴と実務経験をよく確認しましょう。
なお、安全管理者選任時研修を実施している研修機関については、最寄りの都道府県労働局にお問い合わせください。

現場の管理体制

このような管理体制で現場の安全を管理しています。

元方事業者による建設現場安全管理指針のポイント

減少傾向にあるとはいえ、建設現場での死亡災害発生件数は全業種の中では高いことが知られています。
1994年以降厚生労働省では、より安全に建設現場で作業ができるよう「元方事業者 による建設現場安全管理指針のポイント」を打ち出しました。
元方事業者だけでなく関係請負人も一体となって、安全管理を押し進めることを推奨しています。

この安全管理指針には、14の指針が記載されていますので、紹介していきます。

安全衛生管理計画の作成

元方事業者は、建設現場の安全管理の基本方針・安全衛生の目標・労働災害防止対策の重点事項な度を含む安全衛生管理計画を作成が定められています。

過度の重層請負の改善

元方事業者は、問題が生じやすい重層請負を改善するため、以下を遵守が定められています。

  1. 事業者責任を負えない単純労働の事業者などにその仕事の一部を請け負わせないこと。
  2. 仕事を一括して請け負わせないこと。

請負契約時に労働災害防止対策の実施者、並びにその経費の負担者の明確化等

その他、必要な経費のうち請負人が負担する経費は、契約時に添付する請負代金内訳書などに経費を明記します。請負代金内訳書などに明記する内容は以下が挙げられます。

元方事業者関係請負人、並びにその労働者の把握等

元方事業者は、関係請負人に安全衛生指導を適用するため、以下の事項などを関係請負人に通知し、把握する必要があります。

  • 関係請負人の名称・請負内容・安全衛生責任者の氏名・安全衛生推進者の選任の有無・その氏名の把握
  • 関係請負人が雇用する労働者の安全衛生に関わる免許・資格・特別教育・職長教育の受講の有無を把握
  • 関係請負人の安全衛生責任者・これに準ずる者の駐在状況の把握
  • 関係請負人が建設現場で使用する機械設備の把握

作業手順書の作成

元方事業者は、関係請負人に、労働災害防止を目的とした作業手順順書の作成の指導をしています。

協議組織の設置と運営

元方事業者が設置・運営する労働災害防止協議会などの組織は、以下を行い活性化を図っています。

1. 毎月1回以上の会議の開催
2. 協議組織の構成

  • 統括安全衛生責任者・元方安全衛生責任者・またはこれらに準ずる者
  • 元方事業者の店社安全衛生責任者・または工事施工・安全管理の責任者
  • 関係請負人の安全衛生責任者
  • 関係請負人の店社の工事施工・安全管理の責任者

以上を構成員と定めています。

3. 協議事項
建設現場の安全衛生管理の基本方針・目標・その他の基本的な労働災害防止対策を定めた計画などを、議題として取り上げます。

  • 週間・月間の工程計画
  • 労働者の危険・健康障害の防止のための基本対策
  • 安全衛生に関する規定
  • 安全衛生教育の実施計画
  • 労働災害の原因・再発防止対策

4. 協議組織の規約を定める
5. 協議組織の会議の議事記録・配布
6. 協議結果の周知

重要な事柄を朝礼等を通じて現場労働者に周知

作業間の連絡と調整

元方事業者は労働災害防止のため、関係請負人の安全衛生責任者またはこれに準ずる者と、十分に連絡および調整を図ること定めています。

作業場所の巡視

元方事業者は、統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者・これらに準ずる者に、毎作業日に作業場所の巡視の実施を定めています。

新規入場者の教育

元方事業者は、関係請負人によるのうち、新たに作業を行う者にスムーズに作業ができるようサポートを行いますが、具体的には場所や資料の提供などです。そして、実施状況の把握に努めます。

新たな関係請負人に対する教育

元方事業者は、新たに作業を行う関係請負人に、協議組織の会議内容・作業間の連絡の結果を周知させます。

作業開始前の安全衛生の打ち合わせ

元方事業者は、関係請負人に毎作業開始前の安全衛生打ち合わせの実施を指導します。具体的には以下となります。

  • 当日の作業内容・作業手順・労働災害防止上の留意事項等の指示します。
  • 作業間の連絡の結果の周知
  • 関係労働者の労働災害防止に対する意見の把握
  • 危険予知活動等の安全活動

安全施工サイクル活動の実施

元方事業者は、安全管理がなされた施工-安全施工サイクル活動を展開しています。

職長会(リーダー会)の設置

元方事業者は、関係請負人に、職長と労働者の安全衛生意識の高揚や職長間の連絡の緊密化目指し、職長会(リーダー会)を設置するよう指導しています。

関係請負人が実施する事項を定める

  • 安全衛生管理計画の作成
  • 安全衛生推進者の選任
  • 安全衛生責任者の選任
  • 安全衛生パトロールの実施
  • 労働災害の原因の調査および再発防止対策の樹立

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まとめ

一度災害が起きるとその影響は計り知れないものがあります。物品の損失でさえ影響が大きいのに、人が傷つき人命が失われれた場合には、会社の存続にも関わります。建設現場で整理整頓が重要なのは、そんな災害につながる可能性を排除する意味合いを持つからです。現場の安全は最優先すべき事項ですが、その営みが煩雑で時間も費用もかかることから、以前は蔑ろにされてきました。そんな過去から学ぶことはたくさんあります。

建設現場で働く方々は今できる簡単なことが、未来の損失を防いでいることを心に刻み込んでください。安全管理者が厚生労働省の指針に従って、現場の安全を管理しているからこそ、今日の作業を無事に終えることができます。

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