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【建築業】与信管理とは?意味や重要性、プロセスを徹底解説

【建築業】与信管理とは?重要性やプロセスを徹底解説

建築業では工事を請け負い、工事が完成した段階で代金を受け取る後払いのケースが多くみられます。


加えて近年は、建築資材やエネルギー価格の高騰、人手不足やいわゆる「2024年問題」による人件費・輸送コストの上昇など、建設会社を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。

こうした状況を背景に、資金繰りの悪化や倒産リスクも高まっており、代金未払を回避するための与信管理がこれまで以上に重要となっています。

また、仕入先や外注先が倒産すると、代金を支払ったにもかかわらず建材が納品されない、工事が滞るといったリスクも発生します。


スムーズに工事を進め、代金を確実に回収し、自社経営への影響を防ぐためにも、重要となる与信管理について見ていきましょう。

目次

与信管理とは

建築業で与信管理が重要となるのはなぜでしょうか。


建築業は工事を依頼する施主との関係だけでなく、施主から依頼された企業から下請工事が発注されたり、その下請会社が仕入先に発注をかけたり、孫請会社に工事を発注したりと、多くの取引関係から成り立っています。

いずれも工事代金や建材代金などの発注額が大きいため、代金の支払いは工事完了後など後払いになるのが一般的です。


そのため、工事の注文を受ける際や仕入先や外注先に発注する際の与信管理が大切になります。

与信と与信管理について、詳しく確認しておきましょう。

与信とは

与信とは、取引相手に「信用」を供与し、代金回収までの間、一時的に売掛金などの債権を抱えることをいいます。


たとえば、工事完了後に代金を受け取る請負契約や、建材を後払いで仕入れる取引などは、いずれも相手を信用して取引を行っている状態です。

一般的には、金融機関が企業の財務状況や経営状態を審査したうえで融資を行うことも「与信」に含まれますが、企業間取引においても、後払いによって売掛債権が発生する場合は与信取引と考えられます。

建設業では、工事の依頼主である施主から代金を回収できるかという視点だけでなく、仕入先や外注先に対する与信も重要です。


たとえば、仕入代金や外注代金を支払った後に、取引先の経営悪化や倒産によって建材が納品されない工事が継続できないといったリスクがあるためです。

そのため建設業における与信は、「代金を回収できるか」という視点に加え、「取引先が契約どおりに納品・施工を継続できるか」を見極めることまで含めた、幅広い概念として捉えられています。

与信管理の重要性

建設業では、工事の完成に対して代金を支払う請負契約が一般的です。


着手金や中間金として一部を先に受け取るケースもありますが、多くの代金は工事完成後に支払われます。

そのため、仕入先から建材を購入し、外注費や人件費を支払い、自社の職人も投入して工事を完成させたにもかかわらず、代金が未払いとなれば、自社の資金繰りや経営に大きな影響が生じます。


こうしたリスクを回避するためにも、「工事を請け負って問題のない相手か」を事前に確認する与信管理が欠かせません。

また、仕入先や外注先に対する与信管理も非常に重要です。


たとえば、仕入代金を支払った後に仕入先が倒産すれば、建材が納品されず、別の仕入先を確保して再度費用を支払わなければならない可能性があります。

外注先が倒産した場合も同様です。
工事の進捗が止まるだけでなく、代替となる協力会社の確保が必要となり、再度外注費が発生する「二重払い」のリスクが生じます。

近年は、建材価格やエネルギー価格の高騰に加え、人手不足や2024年問題による職人・運送業者不足も深刻化しています。


そのため、代替業者や建材の確保が以前より難しくなっており、工期遅延や追加コストが経営に与える影響は一段と大きくなっています。

特に中小の建設会社や工務店では、こうした二重払いと工期遅延が重なることで、資金繰りが急激に悪化し、連鎖倒産につながるリスクも否定できません。


取引先や仕入先、外注先の財務状態や経営状況を事前に確認し、継続的に管理していく与信管理は、安定した事業運営のために非常に重要です。

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与信管理の方法

では、どのように与信管理を行い、代金未回収のリスクや連鎖倒産などのリスクを避けていけば良いのでしょうか。


与信管理では、情報収集にはじまり、決算書や定性情報の確認、商流の分析、信用力の評価、与信限度額の設定などを総合的に行うことが重要です。

詳しく見ていきましょう。

情報収集

工事の依頼を受けている場合や、安く資材を提供してくれる会社、人手不足の際に職人を派遣してくれる会社は魅力的な存在です。


しかし、条件の良さだけで安易に取引を始めるのは危険です。

金額が大きくなりやすい建設工事だからこそ、取引開始前の情報収集が欠かせません。

過去に取引実績がある相手であっても、前回の工事から経営状況や資金繰りが変化している可能性があります。

経営状態や財務状況をはじめ、取引トラブルの有無、支払い遅延の履歴、業界内での評判など、幅広く情報収集を行いましょう。

決算書

上場企業などの大手企業であれば、決算書が公開されているため比較的入手しやすいです。

一方、中小企業や零細企業の場合は、取引前に決算書の提出を求めたり、企業調査会社を通じて情報を入手したりする必要があります。

直近の決算書だけでなく、過去数年分の推移も確認し、極端な売上減少や利益悪化がないか、多額の借入金を抱えていないかなどをチェックしましょう。

定性情報

決算書に記載される売上高や利益、負債額、従業員数など、数値で把握できる情報を「定量情報」といいます。

これに対し、「定性情報」とは、数値だけでは判断できない企業の実態や信用力に関する情報のことです。

たとえば、以下のような情報が定性情報にあたります。

  • 経営者や代表者の評判・人柄
  • 従業員の定着率や労働環境
  • 施工現場の整理整頓状況や安全管理体制
  • 工事品質に対する取引先や施主からの評価
  • 業界内での口コミや噂
  • クレーム対応の姿勢
  • 協力会社との関係性や支払い対応

数字上は大きな問題がなくても、現場管理がずさんであったり、従業員の離職率が高かったりする場合は、将来的に経営悪化や施工トラブルにつながる可能性があります。

特に中小の建設会社や工務店では、決算書などの定量情報だけでは実態を把握しきれないケースも多いため、定性情報の収集と分析が非常に重要です。

商流の分析

商流とは、取引や代金の流れを指します。
建設業では、先に施工や納品を行い、後から代金を受け取るケースが多く、複数の企業が関与する複雑な取引構造になりがちです。

たとえば、

  • 元請会社から下請会社への支払い条件は適切か
  • 支払いサイトが極端に長くないか
  • 間に不自然なブローカー(仲介業者)が入っていないか
  • 資金繰りのために過度な手形取引を行っていないか
  • 前受金を集めて運転資金に回していないか

などの確認も大切です。

代金回収が滞りやすい商流や、借入れ前提で資材仕入れを行っているような状況であれば、資金繰り悪化のリスクが高い可能性があります。

特に近年は、建材価格や人件費の高騰によって資金負担が増しているため、商流の健全性を確認する重要性が高まっています。

信用力の評価

以下のような点を総合的に確認し、取引先の信用力を評価します。

  • 過去に支払い遅延や代金未払いを起こしていないか
  • 建設業許可の更新状況に問題はないか
  • 行政処分や指名停止歴がないか
  • 補助金や融資申請で大きな問題を抱えていないか
  • 経営事項審査(経審)の評点が著しく低くないか
  • 公共工事の受注実績があるか

信用力に不安がある場合は、取引条件を見直したり、場合によっては取引自体を見送る判断も必要です。

与信限度決済

決算書や定性情報、商流分析、信用力評価の結果によっては、取引を行わないことでリスクを回避するのも一つの方法です。

一方で、取引可能と判断した場合でも、無制限に高額取引を行って良いわけではありません。

分析結果を踏まえ、「その企業といくらまでなら安全に取引できるか」という与信限度額を設定することが重要です。

企業ごとに与信限度額を定め、売掛金や未回収金額がその範囲を超えないよう管理することで、万が一取引先が倒産した場合でも、自社への損失を一定範囲に抑えやすくなります。

与信限度額の決定

では、与信限度額はどのように決定すれば良いのでしょうか。

代表的な算出方法の例をご紹介するとともに、決定した与信限度額を定期的に見直す必要性についても理解しておきましょう。

算出方法

与信限度額の算出方法には、大きく分けて「取引先基準」と「自社基準」があります。

また、実務上は単純に「10%」を掛けるだけではなく、取引先の財務内容や支払い実績、経営状況などから格付(信用度)を行い、その格付に応じて掛け率を調整する方法が一般的です。

たとえば、信用力が高い企業であれば掛け率を高めに設定し、逆に信用力に不安がある企業については掛け率を低く設定することで、リスクを調整します。

CASE1:取引先基準

取引先の経営規模や財務体力を基準に、与信限度額を算出する方法です。代表的なものとして、以下があります。

  • 仕入債務基準法:取引先の仕入債務合計を基準に算出する方法
  • 月商一割法:取引先の平均月商を基準に算出する方法
  • 内部留保基準法:取引先の自己資本や内部留保を基準に算出する方法

一般的には、これらの数値に一定の掛け率を乗じて与信限度額を設定します。


掛け率は一律ではなく、取引先の格付や業界動向、支払い実績などを踏まえて調整するのが通常です。

これらの基準を超える取引を行うと、

  • 債務回収が困難になる
  • 取引停止時の影響が大きくなる
  • 取引先の財務体力を超えた取引となる

といったリスクが高まるため注意が必要です。

CASE2:自社基準

一方で、自社の財務体力を基準として与信限度額を設定する方法もあります。

代表的な方法としては、以下のようなものがあります。

  • 財務上限基準法:自社の自己資本を基準に算出する方法
  • 売上債権基準法:自社の売掛債権総額を基準に算出する方法
  • 決裁限度法:社内規程における決裁権限の上限額を基準に算出する方法

これらの基準を超える取引を行うと、

  • 取引先倒産時に自社が債務超過となる
  • 売上減少による資金繰り悪化が発生する
  • 社内統制が機能しなくなる

などのリスクが生じる可能性があります。

そのため、取引先の信用力だけでなく、「自社がどこまで損失に耐えられるか」という視点で与信限度額を設定することが重要です。

総合的な判断が重要

それぞれの算出方法には異なる特徴やリスクがあるため、1つの基準だけで判断するのではなく、複数の指標を総合的に評価することが望ましいです。

実務では、各基準によって算出した金額に対し、取引先の格付(信用度)に応じた掛け率を適用し、その中で最も低い金額を与信限度額として採用するケースも少なくありません。

特に建設業では、工期の長期化や資材価格の変動、人手不足など外部環境の影響を受けやすいため、慎重な与信設定が求められます。

見直しの必要性

初めて取引する際に与信調査を行い、与信限度額を決定したとしても、その後ずっと同じ基準で問題ないとは限りません。

初回取引では問題なく代金が支払われていても、その後に経営状況や資金繰りが悪化する可能性は十分にあります。

特に建設業では、資材価格やエネルギー価格の高騰、人件費上昇、受注減少などによって、短期間で経営状況が変化するケースも少なくありません。

そのため、以下のようなタイミングでは定期的な見直しを行うことが重要です。

  • 決算期を迎え、新しい決算書が出た時(年1回の定期見直し)
  • しばらく取引が途絶えていた時
  • 経済情勢や建設市況が大きく変動した時
  • 支払い遅延や資金繰り悪化の兆候が見られた時
  • 業界内で悪い評判や倒産情報が出た時
  • 主要取引先の倒産や大型案件の失注が発生した時

継続的に与信状況を確認し、必要に応じて与信限度額を見直すことで、代金未回収や連鎖倒産のリスクを抑えることにつながります。

与信管理に関するよくある質問

与信管理とは何ですか?

与信管理とは、取引先の信用状況や経営状態を確認し、代金未回収や貸し倒れなどのリスクを防ぐために行う管理のことです。

なぜ与信管理が必要なのですか?

後払い取引では、取引先の倒産や支払い遅延によって代金を回収できなくなるリスクがあります。
与信管理を行うことで、自社の資金繰り悪化や連鎖倒産のリスクを抑えることにつながります。

与信管理では何を確認しますか?

主に以下のような項目を確認します。

  • 決算書や財務状況
  • 支払い遅延の有無
  • 商流や支払い条件
  • 経営者の評判
  • 施工実績や取引実績
  • 経営事項審査(経審)の状況
定性情報とは何ですか?

定性情報とは、数値では把握できない企業情報のことです。
たとえば、経営者の評判、従業員の定着率、施工現場の管理状況、業界内での口コミなどが含まれます。

与信管理は定期的に見直す必要がありますか?

はい。取引先の経営状況や経済環境は常に変化するため、定期的な見直しが必要です。
特に決算更新時や業界環境が大きく変化した際は、再確認を行うことが重要です。

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まとめ

与信管理とは、取引先の信用状況や経営状態を確認し、代金未回収や取引停止などのリスクを防ぐための管理です。
特に建設業では、工事代金の後払いが一般的であり、建材費や外注費を先行して負担するケースも多いため、自社経営を守るための重要な「防衛策」といえます。

近年は、建材価格やエネルギー価格の高騰、人手不足や2024年問題などにより、建設業界の経営環境は厳しさを増しています。
そのため、決算書だけでなく、経営者の評判や施工体制などの定性情報、商流、信用力まで含めて総合的に確認することが重要です。

また、一度与信限度額を設定して終わりではなく、決算更新時や経済情勢の変化に応じて定期的に見直すことで、代金未回収や連鎖倒産などのリスク低減につながります。

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