近年、多くの工務店が「売上はあるのに利益が残らない」「忙しいのに赤字が続く」といった課題を抱えています。
その背景には、ウッドショックやコロナ禍といった一過性の問題ではなく、原価高騰・人手不足が常態化した経営環境への変化があります。
そこで今回は、工務店が赤字経営に陥りやすい背景や要因、黒字化するための対策について最新情報を踏まえて解説します。
工務店が赤字経営に陥る背景
工務店が赤字経営に陥る背景には、ウッドショックや原油価格の高騰のほか、新型コロナウイルスの影響など、近年の社会情勢によるものが大きく関わっています。
ウッドショックから「資材高騰の常態化」へ
2021年以降、建設業界を直撃した要因としてウッドショックがありました。
ウッドショックによって木材価格が急騰したことは、多くの工務店の利益を圧迫しました。
現在はピーク時より落ち着いているものの、円安や輸送費の上昇、海外需要の影響により、コロナ前の水準まで戻っているとは言えません。
つまり、木材価格の高騰は「一時的なショック」ではなく、資材価格が高止まりする構造へと変化しているのです。
さらに、2024年問題による物流コスト増加が追い打ちをかけています。トラックドライバーの労働時間規制により輸送費が上昇し、建材価格全体が下がりにくい環境になっています。
建設業における資材高騰は今後も継続する可能性が高く、見積もり時の原価設定が甘いままでは、完工時に利益が残らないリスクが高まります。
工務店が赤字を回避するためには、「資材価格はいずれ下がる」という期待ではなく、高原価を前提とした価格設計と原価管理の徹底が必要です。
原油高から「エネルギー・輸送コスト増」へ
原油価格の高騰は、単にガソリン代の上昇だけを意味するものではありません。
工務店の経営においては、次のような間接コストの増加が大きな負担となっています。
- 電気代の上昇(事務所・倉庫・現場)
- ガソリン代や軽油代の上昇
- 建材の輸送費増加
- 重機や機材のレンタル費上昇
これらは工事原価だけでなく、固定費として経営を圧迫する要因になります。特に中小規模の工務店では、大量発注によるコスト吸収が難しく、価格上昇の影響を直接受けやすい傾向があります。
問題なのは、これらのコスト増が見積もりに十分反映されていないケースが多いことです。
価格競争を意識するあまり適正価格を提示できず、結果として「売上はあるのに利益が残らない」という状態に陥る工務店も少なくありません。
エネルギー・輸送コストの増加は今後も変動が予想されるため、見積もり時に一定のリスクを織り込む姿勢が求められます。
コロナ禍から「人手不足・高齢化」へ
新型コロナウイルスの影響は以前に比べて落ち着いてきましたが、建設業界では新たな課題が顕在化しています。
それが、人手不足と技能者の高齢化です。
現在、多くの工務店が次のような問題を抱えています。
- 職人の平均年齢の上昇
- 若手採用の難航
- 技能継承の停滞
- 外注費(手間請け単価)の上昇
技能者不足により、工期の延長や外注費の増加が発生しやすくなっています。また、2024年問題による労働時間規制の影響もあり、人件費は今後も上昇する可能性が高いと考えられます。
つまり、工務店の赤字経営の要因は「仕事がないこと」ではなく、人件費や外注費の増加によって利益率が圧迫されていることにあります。
これからの工務店経営では、人件費が上昇し続ける前提で価格設計や業務効率化を進めなければ、安定した黒字経営を維持することは難しいでしょう。
現代の工務店が陥りやすい赤字要因

工務店が赤字経営に陥る原因は、単純な「売上不足」だけではありません。
2026年現在は、建設業界全体の構造変化により、利益が削られやすい経営環境になっています。
ここでは、現代の工務店が特に注意すべき赤字要因を解説します。
2024年問題への対応遅れ
建設業における2024年問題(時間外労働の上限規制)は、工務店経営に大きな影響を与えています。
具体的には、
- 残業時間の制限による工期の長期化
- 職人の手間受け単価の上昇
- 繁忙期の人員確保が困難
- 外注費の高騰
といった問題が発生しています。
特に中小の工務店では、限られた人員で現場を回しているケースが多く、労働時間規制の影響を直接受けやすい状況です。
その結果、見積もり段階では確保できていたはずの利益が、完工時には削られているというケースが増えています。
2024年問題への対策を講じないまま従来の体制を維持していると、工期遅延や外注費増加により、知らないうちに利益率が低下している可能性があります。
2024年問題に関する記事はこちら
インフレ下での「見積もりの甘さ」
近年の建設業界では、資材価格やエネルギーコストの上昇が続いています。
しかし、契約から着工までに時間が空く場合、その間に資材価格がさらに上昇することがあります。
その結果、
- 契約時の原価想定が崩れる
- 追加仕入れ時に単価が上がる
- 完工時には利益ゼロ、あるいは赤字
という事態が起きています。これは特に工務店の赤字の原因として多く見られるパターンです。
価格改定をためらい、競合との比較を恐れて適正価格を提示できないことが、慢性的な利益圧迫につながっています。
しかし、インフレ環境下では原価上昇を前提とした見積もり設計が不可欠です。
見積もり段階でリスクを織り込まなければ、受注しても利益が残らない経営体質になってしまいます。
利益率アップに役立つ見積ソフト・原価管理ソフトに関する記事はこちら
売上重視で利益構造を見ていない
多くの工務店経営者が陥りやすいのが、「売上至上主義」です。
売上が伸びれば経営は安定すると考えがちですが、実際には次のような状況が発生しています。
- 原価率の上昇
- 広告宣伝費の増大
- 外注費や人件費の膨張
- 値引き受注による粗利低下
このような状態では、売上が増えても利益は増えません。
特に問題なのは、「粗利率」や「実行予算差異」を継続的に確認していないことです。
工事が終わるまで利益が分からない体制では、赤字案件が発生しても気付くのが遅れてしまいます。
これからの工務店経営では、
- 売上ではなく粗利率を重視する
- 実行予算と実績を常に比較する
- 原価管理をリアルタイムで把握する
といった仕組みづくりが不可欠です。
赤字から黒字経営にするには
工務店が赤字経営に陥る原因は、単純な「売上不足」だけではありません。
2026年現在は、資材高騰や人手不足、2024年問題などの影響により、利益が削られやすい経営環境になっています。
そのため、黒字経営を実現するには「仕事を増やす」だけでなく、利益が確実に残る体制づくりが必要です。ここでは、工務店が赤字を脱却するための具体策を解説します。
原価と経費の見直し
工事で発生する原価や経費を見直すことは、赤字経営から黒字経営へ転換する第一歩です。
原価率を把握し、無駄なコストを削減することで利益向上が期待できます。
ただし、品質を下げることはおすすめできません。
原価を下げることだけにこだわると、一時的に利益が改善したように見えても、施工品質の低下やクレーム増加につながる可能性があります。万が一欠陥工事が発生すれば、お客様からの信用を失い、口コミや評判にも悪影響を及ぼします。
地域密着型の工務店にとって、信用の低下は将来的な受注減少につながり、経営リスクをさらに高めてしまいます。
そのため、工務店が赤字を脱却するには、品質を維持しながら原価構造を見直すことが重要です。例えば、仕入れ先の見直しや発注タイミングの最適化、実行予算の明確化など、仕組み面での改善が効果的です。
また、コピー用紙や電気代、水道代といった社内経費の見直しも積み重ねれば大きな改善につながります。
経費削減を目指すには、経営者だけでなく従業員の協力も不可欠です。社内全体でコスト意識を高めることで、効率的に無駄を減らすことができるでしょう。
原価管理システムに関する記事はこちら
社内意識の統一化
黒字経営を実現するためには、経営者だけが危機感を持っていても十分ではありません。
従業員も同じ方向を向き、赤字脱却に取り組む体制を整えることが重要です。
まずは、現在の経営状況を社内で共有することから始めましょう。
売上だけでなく、粗利率や原価率などの数字を共有することで、従業員のコスト意識は高まります。
経営者が状況を明確に伝えなければ、従業員が危機感を持つことは難しいでしょう。また、問題点を共有しなければ、改善に向けた具体的な行動も生まれません。
どのような要因が赤字につながっているのか、どこに無駄があるのかを社内全体で把握することが、黒字体質への転換につながります。
数字を「見える化」し、共通認識を持つことが、組織力の強化にもつながります。
業務効率化によるコスト削減
むやみに人員を増やして固定費を上げるのではなく、業務効率を高めることでコストを抑えることも重要です。
人手不足が続く建設業界では、生産性の向上が黒字経営のカギとなります。
その方法の一つが、業務効率化につながるシステムの導入です。
近年では、工務店向けのクラウド型ツールが増えており、顧客管理や施工管理、入出金管理などを一元化できるようになっています。
クラウドツールを活用すれば、
- 現場と事務所の情報共有の迅速化
- 二重入力の削減
- 原価や進捗の可視化
が可能となり、従業員の負担を大幅に軽減できます。
また、クラウド型であればインストール型と違い、パソコンやスマートフォンから簡単にアクセスできるため、現場での活用もスムーズです。
特に施工管理システム(工事管理システム)であれば、横断的な業務でもスムーズに管理が可能です。
業務効率化を目指す場合はクラウド型の施工管理システム(工事管理システム)の導入を検討もおすすめです。
クラウドシステムに関する記事はこちら
工務店の赤字対策に関するよくある質問
- 売上があるのに利益が残らないのはなぜですか?
-
売上が伸びているにもかかわらず利益が残らない場合、原価率や外注費、人件費の上昇が主な原因として考えられます。
特に近年は、資材高騰や2024年問題の影響により、見積もり時よりも実行原価が上振れするケースが増えています。
「売上」ではなく「粗利率」「実行予算差異」を確認する体制を整えなければ、黒字化は難しくなります。 - 値上げをすると失注しそうで不安です。どうすればよいですか?
-
単なる値上げではなく、付加価値を明確にすることが重要です。
例えば、
- 省エネ性能(ZEH・高断熱住宅)
- 耐震性能の数値化
- アフターサポートの充実
など、「高くても選ばれる理由」を提示することで価格転嫁がしやすくなります。
価格競争から脱却し、価値で選ばれるポジションを目指すことが赤字対策につながります。 - 原価管理がうまくできていません。何から始めるべきですか?
-
まずは、実行予算を明確にすることが第一歩です。
見積もり段階の想定利益と、発注後の実績原価を比較し、差異を把握する仕組みを整えましょう。
施工管理システムや原価管理ソフトを活用することで、リアルタイムで利益状況を確認できるようになります。「工事が終わるまで利益が分からない」状態を改善することが重要です。
- 2024年問題は赤字にどのような影響がありますか?
-
建設業の2024年問題(時間外労働の上限規制)は、工期の長期化や外注費の上昇につながっています。
その結果、
- 人件費の増加
- 手間受け単価の上昇
- 繁忙期の人員確保困難
といった影響が出ています。
従来と同じ見積もり基準のままでは利益が削られる可能性が高いため、工期と原価を見直した価格設計が必要です。
- 経費削減だけで赤字は改善できますか?
-
経費削減だけでは根本的な改善は難しいでしょう。
コピー用紙や光熱費の削減も大切ですが、それ以上に重要なのは、利益が残る仕組みをつくることです。
- 適正価格への転嫁
- 原価管理の徹底
- 業務効率化による生産性向上
を同時に進めることで、黒字体質への転換が可能になります。
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まとめ
工務店の赤字問題は、まず赤字の要因を把握するだけでなく赤字脱却に向けて正しく対策することが大切です。
工務店の赤字の要因は、ウッドショックや原油の高騰のほかにも新型コロナウイルスの影響などさまざまです。
原価や経費を削減することや業務の効率化を目指すことも工務店の赤字脱却につながるので、積極的に対策していくと良いでしょう。
また、業務効率化には施工管理システム(工事管理システム)の導入もおすすめです。
特にクラウド型であれば、現場と事務所を行き来する必要が無い為、更に効率化が見込めます。
Excelや自社ツールで十分というかたも一度検討してみると良いでしょう。
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