一部の業種、たとえば建設業や不動産業、自動車業などでは、見積書の明細に諸経費が含まれていることがあります。この諸経費は、顧客の視点から見ると透明性に欠け、気になる要素の一つです。
諸経費に関する質問があった場合、丁寧に説明し、顧客が理解し納得できるようにすることは非常に重要です。この説明がきちんと行われれば、顧客の信頼を築く一助となります。また、積極的に諸経費について説明することで、他社との差別化をアピールすることもできます。
諸経費について理解がある方もいれば、内容を再確認したい方もいるでしょう。諸経費には具体的な項目やその内訳、およびそれらが工事にどのように反映されているかなど、わかりやすい説明が求められます。
諸経費について知っている方も、もう一度内容を確認してみましょう。
諸経費とは
諸経費とは、人件費や移動費、通信費など会社を運営していくための費用です。
会社の規模が大きくなるにつれて、諸経費の割合は高くなる傾向があります。
一般的に諸経費の相場は、5%~10%ほどだといわれますが、20~30%取っている企業もあります。
また、新築工事とリフォーム工事では、諸経費の割合が変わってきます。
要するに、企業側が自由に決めることが出来るといえます。
例えば、100万の工事で、諸経費が10%だった場合、10万円が追加されるという事になります。
顧客が諸経費を気にするのは当然です。
諸費用との違いは?
これまで、諸経費の概要について説明してきました。
諸経費と似た言葉に、「諸費用」があります。
諸経費と諸費用の違いとは何でしょうか?
既に確認したように、諸経費は会社を運営していくために必要な費用であり、工事の際に必ず発生する費用です。
一方で、諸費用とは、住宅を購入する際、土地や住宅の購入代金以外にかかる費用です。
たとえば、
- 住宅ローンの借入費用
- 登記費用
- 火災保険・地震保険など各種保険料
- 不動産会社への仲介手数料
などです。
言葉は似ていますが、諸経費と諸費用の内実は異なります。
顧客に説明する際は、違いを理解したうえで、分かりやすく伝えるようにしましょう。
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諸経費に含まれる項目
では、諸経費にはどういった内容が含まれるのでしょうか?
諸経費に含まれる基本的な項目は、下記の通りです。
- 作業車両のガソリン代
- 作業車両の償却費
- 写真代
- 帳票代
- 近隣対策
- 労務管理費
- 保険料
- 福利厚生費
- 事務用品費
- 広告宣伝費
- 事務所家賃
- 交際費
- 雑費
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諸経費の内訳
諸経費は大きく2つに分けることができます。
現場経費と一般管理費です。
以下では、それぞれの概要と例を見ていきましょう。
現場経費
現場経費とは、完工にいたるまでに必要な費用のことを指します。
「現場管理費」とよばれることもあります。
現場経費に該当する項目の例は以下の通りです。
- 労務管理費:安全・衛生に関する費用、賃金に含まれない交通費など
- 保険料:労災保険、瑕疵保険等の保険
- 交通費:車両のガソリン代など
- 機材損料:消耗・破損した道具の交換費用
- 事務用品費:事務所で資料する文房具などの費用
一般管理費
一般管理費とは、会社を運営していくために必要な費用のことを指します。
現場経費と異なり、工事に直接かかわる費用ではありません。
一般管理費に該当する項目の例は以下の通りです。
- 広告宣伝費:チラシやWEBの広告費用
- 地代家賃:事務所や社宅などの家賃
- 動力用水光熱費:電力、水道、ガスなどの光熱費
- 事務用品費:備品、参考図書、新聞などの購入費用
- 租税公課:印紙代や登録免許税など
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工事見積書への諸経費の書き方は?

これまで、諸経費の概要や諸費用との違いについて説明してきました。
以下では、見積書への記載方法を紹介します。
諸経費の見積書への書き方に明確な決まりはなく、企業ごとに異なります。
一般的には、詳細は記載せず「諸経費」とのみ記載します。
このため顧客は、見積書を見ただけでは、諸経費の内訳が分かりません。
諸経費の詳細を知らなければ、顧客から質問されても答えられず、信頼を失ってしまう恐れもあります。
見積書への記載は簡易なものであっても、諸経費の内容をしっかりと把握しておく必要があります。
最近は、建築見積ソフトを用いることで、諸経費を計算し、見積の明細を登録することも可能です。
計算ミスが多い、計算が難しい為若手には任せられない等の懸念がある場合は、建築見積ソフトの導入を検討すると良いでしょう。
見積書の書き方に関する記事はこちら
諸経費の代表的な2つの計算方法
諸経費の算出には主に2通りのアプローチがあります。
一つは、直接工事費に対して一定の比率をかけて求める方法、もう一つは各費目ごとの詳細を積み上げて計算する方法です。ここでは、それぞれの特徴について詳しく見ていきます。
定率で算出する方法
建設業界などでは、直接工事費に一定の比率(パーセンテージ)をかけて諸経費を算出する方法が一般的に採用されています。この比率は、工事の内容や事業規模、地域の事情などを踏まえて5%〜20%の範囲で設定されることが多いです。
たとえば、直接工事費が10万円で諸経費を10%に設定した場合、諸経費は1万円(=10万円×10%)となります。この算出方法では、見積書に諸経費の詳細な内訳を記載しないのが通常ですが、顧客から内容の確認を求められた際に備えて、内訳の説明ができるよう準備しておくことが大切です。
明細ごとに費目を積み上げて計算する方法
もう一つの方法は、諸経費を項目ごとに分けて一つずつ積み上げていくやり方です。
この方法では、労務費、交通費、事務用品費など、実際に発生する費用を個別に見積もって合計し、諸経費として算出します。
各費用は、過去のデータや社内基準をもとにして金額を設定するため、より実情に即した精度の高い見積もりが可能です。
特にコストの内訳を重視する顧客に対しては、透明性のある資料を提示でき、説明責任を果たしやすいというメリットがあります。
諸経費が安い会社は良い会社?
諸経費が高い会社はよくない会社と言われる傾向があります。
かといって、諸経費を材料費や工事費に振り分けると、他社と価格を比較されて失注になる可能性もあります。
一方で、諸経費が高くても契約をとることができる企業もあります。
重要なのは、諸経費の必要性を適切に顧客に伝えることです。
諸経費を説明する際のポイント
顧客から諸経費の内容について質問された場合は、納得してもらえるように説明しましょう。
たとえば、「施工するうえでの安全性を十分に確保できない」など、諸経費が低すぎる際の注意点を伝えると良いでしょう。
ほかにも、
- 現場管理費
- 外注業者との事前打ち合わせにかかる経費
- 役所へ出す書類等の作成費
- 近隣の方への挨拶時などで使用する粗品の経費
など、できるだけ詳細に諸経費の内容を説明するようにしましょう。
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諸経費に関するよくある質問
- 諸経費の割合はどれくらいが一般的ですか?
-
工種や工事規模によりますが、一般的には工事費の5〜30%程度が目安です。公共工事の場合は積算基準に基づいて細かく計算されます。
- 諸経費を削減できますか?
-
諸経費は必要な管理や安全のための費用であり、過度な削減は品質や安全性に影響を及ぼす可能性があります。ただし、項目の見直しや最適化によってコスト削減が可能な場合もあります。
- 諸経費はどのように算出していますか?
-
常は会社ごとの見積基準や実績データに基づき、工事内容や期間、規模などを考慮して算出されます。公共工事では国や自治体の「標準積算基準」に従います。
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さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。
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まとめ
諸経費は企業によって自由に設定できるため、高すぎると失注になり、安すぎると企業の損失につながる場合があります。
しかし、諸経費の価格そのものよりも、諸経費の内容を理解し、顧客に説明できるようにすることが重要です。
弊社の提供する『アイピア』は、原価率をもとに見積書の作成ができるため、適切な諸経費の価格を手間なく、設定することができます。
さらに、見積作成機能においては専門型の建築見積ソフトに負けない豊富な機能が揃っています。
「諸経費を見直したい」という方は、ぜひこちらも併せてご検討ください。
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