正確な原価を知るための手法として、ABC(活動基準原価計算)というものがあります。
アメリカで提唱された手法であり、現代の多品種少量生産が主流になる中で問題視されるようになった「間接費のゆがみ」を解決するために効果的な方法です。
しかし、日本ではまだ導入している企業は多くないため、具体的な方法や目的を知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ABCについて、計算方法や導入するメリット、日本で導入が進まない理由などを解説していきます。
目次
ABC(活動基準原価計算)とは?
ABC(活動基準原価計算)とは活動ごとに原価を管理する手法のことです。
「Activity Based Costing」の頭文字をとった言葉で1980年代後半にアメリカでCooper=Kaplanによって提唱されました。
従来は費目ごとに集計していましたが、ABCは活動ごとに集計していきます。
さらにABCは、間接費によって生まれるズレを解決するために使われる手法です。
従来の原価計算で間接費は一つ一つの製品ごとに正確に求めることができないため、操業度による基準を設けて集計し、配賦(振り分け)を行っていました。
しかしABCでは操業度による基準ではなく、製品を生産するコストや生産するまでにかかったコスト、この活動に注目していきます。
操業度とは
生産設備の稼働率のことであり、生産量や活動時間、機械の稼働時間などがあります。
引用元:ITトレンド「原価管理の「ABC(活動基準原価計算)」とは?計算例で解説」
間接費・直接費とは?
原価計算を行ううえで、間接費と直接費という言葉をよく聞きますよね。
この2つの費用はどう違うのでしょうか。
直接費とは製品やサービスに直接かかわる費用のことです。
材料のように正確にいくら使ったのか求めることができます。
間接費とは製品やサービスと直接にはかかわらない費用のことです。
例えば、施設費や電気代などが入ります。
これらの間接費は複数の製品を生み出すために使われるため一つ一つの製品にいくらかかったのか正確には求めだすことができませんが、ABCを理解するうえで重要になってくるのがこの間接費の扱いです。
ABC の歴史
従来は少ない種類の製品を大量に生産する方法が主流でした。
現在は多くの種類の製品を少量で生産する方法が一般的になっており、また生産をロボットにより自動で行うFA化も進んできています。
先ほど「操業度」の説明をしましたが、この従来の操業度に基づいた基準で配賦(振り分け)を行うと、生産量が多い製品は間接費も多くなり、生産量が少ない製品であれば間接費も少なります。
ここが今回のキーポイントです。
例えば1種類の製品を100個生産する場合①と、50種類の製品を2つずつ合計100個生産する場合②を考えてみましょう。
操業度が高いのは①の場合であり、従来の考え方では①の間接費が高くなります。
しかし、たくさんの種類の製品を少量生産する②の場合は手順も多くなるため、実際に間接費が高くなるのは②の場合であると考えられます。
操業度と間接費の関係は必ずしも比例しないことが分かります。
この例の①は従来の一般的な生産方法であり、②は現代の一般的な生産方法です。
生産方法が変わったことによって間接費も大きくなってきました。
今まではそこまで気にならなかった間接費のズレが時代の流れによって大きくなり問題視されるようになってきたということです。
ABC(活動基準原価計算)の計算方法
製品Aと製品Bを例に計算方法を説明していきます。
製品Aの直接活動時間は300時間、製品Bは100時間とします。
間接費の合計は60万円です。
従来の計算方法で原価を求めると製品Aは45万円、製品Bは15万円となります。
製品A:60万円×300h/400h=45万円
製品B:60万円×100h/400h=15万円
ABCでは活動ごとに計算を行います。
製品A、製品Bでそれぞれ活動①と活動②に分けていきます。
間接費は活動①で15万円、活動②は45万円。
直接活動時間は製品Aが活動①で100時間、活動②で200時間。製品Bが活動①で50時間、活動②で50時間とします。
製品A
活動①:15万円×100h/150h=10万円
活動②:45万円×200h/250h=36万円
製品B
活動①:15万円×50h/150h=5万円
活動②:45万円×50h/250h=9万円
ABCで原価を求めると製品Aは46万円、製品Bは14万円となり、従来の計算方法とは差が生まれることが分かります。
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ABCと「ABM」の関係性
ABC:活動基準原価計算「Activity Based Costing」
ABM:活動基準原価管理「Activity Based Management」
ABCは正確な原価を求める計算手法でしたが、ABMはABCによって導き出されたデータを使って業務を改善させるリエンジニアリングの手法です。
今回はABCについて詳しく説明していますが、実はABCだけを行ってもあまり意味がありません。
ABMまで行って初めてABCの力が発揮されます。
ABCによって出されたデータを使って活動の分析を行い、既存のプロセスを見直します。
そこから排除できる活動を排除して業務をより効率化していくことを目指します。
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ABC(活動基準原価計算)のメリット・デメリット
続いて、ABC(活動基準原価計算)のメリットとデメリットをご紹介します。
メリット
ABC(活動基準原価計算)のメリットは以下の通りです。
Merit 01
正確な原価を知ることができる
費目ごとの部門に分けて集計するのではなく、活動に集計することで実際の原価に近い数値を出すことができます。
生産量が多いからと言って間接費が必ずしも大きくなるとは限りません。
従来の方法では放置されていた生産量と間接費のゆがみをなくすことができます。
Merit 02
価値を生んでいない活動が分かる
ABCではどの活動でどれだけコストが発生しているのかを知ることができます。
そのため、収益と活動にかかるコストを見比べることで排除できる活動を絞り出すことができます。
デメリット
反対にABC(活動基準原価計算)のデメリットは以下の通りです。
Demerit 01
時間がかかる
ABCで原価を求めるためには、従来よりも細かいデータが必要となります。
一つ一つの活動にかかった時間や活動回数を記録していかなければいけません。
また、一時的ではなく長期的にデータを取り続けていくことも必要であり、社員の負担になる可能性がありデータ収集にコストがかかります。
Demerit 02
ABCによるデータを使えるとは限らない
ABCによって正確な原価を求めることはできます。
しかし間接費は日々変化するものです。
そのため、データだけを見て意思決定を行ってしまうと正しい判断ができません。
また全体で見た時に収益があることが大事ですが、ABCは細かく区切られた詳細な情報を知ることができるものです。
あくまでも正確な原価を知るための方法であることを忘れてはいけません。
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日本で導入が進まない理由
ABC/ABMでは必要がないと判断した活動や人件費を減らして、業務の改善を試みます。
しかし、日本では終身雇用制度や年功序列制度がまだまだ一般的であり、人件費を減らすことは簡単ではありません。
保守的な考えが多い日本では活動を根本的に変えることに抵抗が多いようです。
またABCを知っている人が少ないのが実情です。
ABCに必要なデータを収集するためには社員の協力が必須であり、社員の理解が足りなければうまく導入体制を作ることができません。
このように日本の伝統的な考えや仕組みがABC導入を阻む原因になっていると考えられます。
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まとめ
ABC(活動基準原価計算)について説明してきました。
原価を正確に求めることができれば今まで見えていなかった現状を可視化させることができます。
ABCを導入するにあたってメリットとデメリット両方存在しますが、自社が何を目的にするかでABCに対する考えが変わってくるでしょう。
まずはABCがどんなものなのか理解を深めるところから始めてみてはいかがでしょうか。
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