【建築業】与信管理とは?重要性やプロセスを徹底解説

【建築業】与信管理とは?重要性やプロセスを徹底解説

建築業では工事を請け負い、工事が完成した段階で代金を受け取る後払いのケースが多くみられます。
そのため、代金未払を回避するための与信管理が大切です。

仕入先や外注先が倒産すると、代金を払ったのに建材が納品されない、工事が滞るといったリスクもあります。
スムーズに工事を行い、代金もしっかり受け取り、自社が困ることがないよう、重要となる与信管理について見ていきましょう。

与信管理とは

建築業で与信管理が重要となるのはなぜでしょうか。
建築業は工事を依頼する施主との関係だけでなく、施主から依頼された企業から下請工事が発注されたり、その下請会社が仕入先に発注をかけたり、孫請会社に工事を発注したりと、多くの取引関係から成り立っています。

いずれも工事代金や建材代金などの発注額が大きいため、代金の支払いは工事完了後など後払いになるのが一般的です。
そのため、工事の注文を受ける際や仕入先や外注先に発注する際の与信管理が大切になります。

与信と与信管理について、詳しく確認しておきましょう。

与信とは

与信とは、信用を与えると書きますが、一般的には金融機関が企業の財務状況や経営状態を審査して融資をすることを指します。
これと同じ原理で、企業間や企業と個人の取引において、代金後払いで契約する時、つまり、売掛債権が発生する場合も与信と考えられます。

建築業においては、工事の依頼主である施主から代金が受け取れるかという心配のほか、仕入先や外注先との与信も考えなくてはなりません。
仕入れ代金や外注代金を払ったのに、経営状態が悪化した場合や、倒産するなどして納品されない、工事が提供されないリスクがあるためです。

与信は通常、返済能力の調査を行い、融資や売掛債権の回収見込みを測る概念です。
ですが、建築業においては、さらに幅広い概念として捉えられています。
こうした代金の支払先である、仕入先や外注先の与信調査や管理をすることも与信の範囲とされます。

与信管理の重要性

建築業では、工事の完成に対して支払いをする請負契約を締結するのが一般的です。
内金や前払い金という形で、代金の一部を工事着手時に受け取ることや、中間金として施工中に受け取ることもありますが、代金の多くは工事完成後に支払われます。

仕入先から建材を購入したり、外注先に人件費などを払い、自社の職人も投下して多額のコストをかけて工事を完成させたにもかかわらず、代金が未払いで回収できなくなれば、自社の経営にも大きな影響が発生します。
そのため、工事を請け負って良い相手かどうかを調査する与信管理が重要です。

また、仕入代金を払ったにもかかわらず仕入先が倒産し、納品がされなければ、工事完成に向けて別の仕入先にさらに代金を払わなくてはなりません。
外注先が倒産した場合は、工事の進捗に支障を来すうえ、カバーする外注先を見つけて再び支払いが必要となります。

二重払いが発生しコストが増えれば、小さな建築会社や工務店の場合、連鎖倒産のリスクさえ生じます。
財務状態や経営状態が悪化している取引先や仕入先や外注先でないか、事前に確認する与信管理はとても重要です。

与信管理の方法

では、どのように与信管理を行い、代金未回収のリスクや連鎖倒産などのリスクを避けていけば良いのでしょうか。
与信管理の方法は、情報収集に始まり、決算書や定性情報の確認、商流の分析、信用力の評価、与信限度決済などが必要となります。
詳しく見ていきましょう。

情報収集

工事の依頼を受けている場合、安く資材を売ってくれる会社や人手不足の際に職人を派遣してくれる会社は嬉しい存在ですが、すぐに飛びついてはいけません。
金額が大きくなる建築工事だからこそ、取引に入る前に情報収集をすることが大切です。

取引をしたことがある相手であっても、前回の工事から状況が変わっているかもしれません。
経営状態や財務状況をはじめ、取引トラブルはないかなど情報収集を行いましょう。

決算書

上場企業など大手企業であれば、決算書も公開されているので入手しやすいです。
中小零細企業の場合は、取引前に決算書の提出を求めるか、企業データの調査会社などを通じて入手します。

直近の決算書だけでなく、過去の決算履歴も調査し、極端に売上や利益が落ち込んでいないか、多額の債務を抱えていないかなどチェックしましょう。

定性情報

決算書に出てくる売上や債務額をはじめ、取引件数や従業員の数、離職率、過去の施工実績などデータで見て測れる情報のことを定量情報と言います。

これに対して、定性情報は客観的な数値では測れない情報のことです。
たとえば、以下のような情報が定性情報にあたります。

  • 営業力
  • 工事の技術力や仕上がりの品質
  • 職人や職場の雰囲気
  • 社風

数字上は大きな問題がなくても、営業力がない、工事の品質が低く評判が悪いとなれば、後々経営状況が悪化するかもしれません。

中小企業や工務店など、決算書などの定量情報が入手しにくいケースにおいては、定性情報の収集と分析が重要性を帯びます。

商流の分析

商流とは取引の流れを指します。
建築業に関わる企業間では、先に納品して代金は後から受け取る、先に職人を派遣して代金は後から受け取るといったケースや、代金を受け取ってから納品するなどさまざまな取引形態があります。

  • 自社が代金を払ったにもかかわらず納品されないまま倒産しないか
  • 仕入先や外注先、発注元などが他企業とどのような取引を行っているか

などの確認も大切です。

代金の受取が滞るリスクや借金をしての仕入れなどの商流があれば、経営状態の悪化が懸念されるためです。

信用力の評価

信用力の評価では、

  • 過去に支払いの遅延や代金の未払いをしていないか
  • 各種事業の許可申請を拒否されたり、補助金などの申請が却下されていないか
  • 公共事業の請負ができる経営状況にあるか

などをチェックします。

信用力が低ければ、取引は見送るべきです。

与信限度決済

決算書や定性情報や商流の分析、信用力の評価を行った結果、取引を行わないことでリスクを回避するのも一つの手段です。
一方、取引をしても問題ないと判断した場合でも、どんな高額な取引をしても問題ないというわけではありません。

決算書や定性情報や商流の分析、信用力の評価を行った結果、その企業とならいくらまで取引をしても問題ないか決めることも大切です。
企業ごとに与信限度額を決めたうえで、代金未回収のまま取引を重ねたとしても、その範囲に収まるよう契約を行うことが求められます。

与信限度額の決定

では、与信限度額はどのように決定すれば良いのでしょうか。
代表的な算出方法の例をご紹介するとともに、決定した与信限度額を定期的に見直す必要性についても、理解しておきましょう。

算出方法

算出方法には大きく分けて、取引先基準と自社基準があります。

CASE1

取引先基準

取引先基準としては、以下の3つの方法があります。

  • 仕入債務基準法:取引先の仕入債務合計×10%を見積もる方法
  • 月商一割法:取引先の平均月商×10%を見積もる方法
  • 内部留保基準法:取引先の自己資本×10%を見積もる方法

これらの基準で算出された金額を超えると、それぞれ、債務回収が困難となるリスク、取引撤退が困難となるリスク、財務体力に見合わない取引リスクが発生するので注意が必要です。

CASE2

自社基準

自社基準の場合も、以下の3つの方法があります。

  • 財務上限基準法:自社の自己資本×10%を見積もる方法
  • 売上債権基準法:自社の売上債権合計×10%を見積もる方法
  • 決裁限度法:自社の決裁上限金額を見積もる方法

これらの基準で算出された金額を超えると、取引先の倒産による過小資本や債務超過のリスク、取引先の倒産に伴う売上急減のリスク、内部統制の不備のリスクが発生するので注意しなくてはなりません。

それぞれの基準はリスクの種類も異なるので、総合的な評価がおすすめです。
6つの基準で算出したうえで、企業の総合評価と企業の倒産リスクをもとに算出した格付の掛け率を掛け、そのうち最小となった金額が与信限度額として推奨されます。

見直しの必要性

初めて取引する際に与信調査を行い、与信限度額を決定したら、その後の取引でもそれを適用すれば安心なわけではありません。
初回の取引は問題なく代金が支払われた、この数年間何度も仕入れた場合や外注を依頼しているが問題はなかったといっても、この先はわかりません。

しばらく取引していなかった時をはじめ、経済情勢が大きく変動した時、その企業やその企業と取引している企業について悪い評判を聞いた時をはじめ、定期的な見直しが必要です。

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まとめ

与信管理とは、取引先の信用状況を調査し、代金の支払いが不良債権化しないように管理するプロセスです。
建設業においては代金が後払いになることが多いことから、連鎖倒産などを招かないためにも、与信管理の重要性が高まります。

与信管理の方法は、情報収集に始まり、決算書や定性情報の確認、商流の分析、信用力の評価、与信限度決済などが挙げられます。
与信限度額の決定を行って管理するのはもちろん、取引ごとの見直しも大切です。

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この記事の編集者

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