企業が継続的に成長するためには、売上や利益だけでなく、日々の業務で蓄積されるデータを適切に管理し、経営や業務改善に活用することが重要です。
顧客情報や営業活動、案件、見積、売上、原価、工程など、企業にはさまざまなデータが蓄積されています。しかし、データが社内の複数の場所に分散していたり、担当者ごとに管理方法が異なったりすると、必要な情報をすぐに確認できず、意思決定や業務改善の妨げになります。
そこで重要になるのが「データ管理」です。
この記事では、データ管理の意味や目的、メリット、具体的な方法について解説します。建築業におけるデータ管理のポイントについても紹介しますので、社内の情報を整理・活用したい方は参考にしてください。
データ管理とは?

データ管理とは、企業活動で発生するデータを、必要なときに正確かつ安全に利用できるよう、収集・保存・整理・更新・活用・廃棄などを適切に管理することです。
対象となるデータには、顧客情報、営業活動、案件情報、売上、原価、会計、人事、問い合わせ履歴など、企業活動に関わるさまざまな情報があります。
単にデータを保存しておくだけでは、適切なデータ管理とはいえません。「誰が」「どのデータを」「どこで」「どのように管理し、いつまで利用するのか」といったルールを整え、必要な情報を必要な人が適切に利用できる状態を維持することが重要です。
また、個人情報を扱う場合は、漏えい・滅失・毀損などを防ぐための安全管理措置も必要です。個人情報保護委員会のガイドラインでは、組織的・人的・物理的・技術的な安全管理措置などが示されています。
どのようなデータを管理するべき?
管理するデータは、自社の業務内容やデータを利用する目的によって異なります。
重要なのは、「将来使うかもしれないから、とにかくすべて保存する」という考え方ではなく、業務や経営に必要なデータを明確にし、正確性や保存期間、利用目的を考慮して管理することです。
例えば、顧客データであれば、以下のような情報が考えられます。
- 顧客名・会社名
- 住所・電話番号・メールアドレス
- 担当者情報
- 問い合わせ履歴
- 商談履歴
- 契約履歴
- 購入・受注履歴
- 過去の対応履歴
建築業であれば、これらに加えて、案件情報、見積書、実行予算、発注情報、工事原価、工程、入金・請求情報なども重要な管理対象になります。
適切なデータ管理とはどのような状態?
適切なデータ管理ができている状態とは、単にデータが保存されている状態ではありません。
必要なデータを、必要な人が、必要なタイミングで正確に確認・利用できる状態を整えることが重要です。
例えば、同じ顧客情報が複数のExcelファイルに保存されていて、どれが最新なのか分からない状態では、データを適切に管理できているとはいえません。
また、営業部門には顧客情報があるものの、工事部門には案件の進捗情報しかなく、経理部門には請求情報しかないというように、部門ごとにデータが分断されているケースもあります。
そのため、データの保存場所や入力ルールを統一し、重複や入力ミスを抑えながら、必要な情報を関連付けて管理することが重要です。
データを活用するとは?
データ活用とは、蓄積したデータを分析し、業務改善や意思決定に役立てることです。
例えば、売上が減少している場合、「営業担当者の活動量が不足している」「問い合わせから契約までの成約率が下がっている」「特定の商品・サービスの受注が減っている」など、データを分析することで原因を具体的に把握できます。
反対に、データを確認せずに「営業担当者の努力が足りない」「景気が悪い」といった感覚だけで判断すると、本当の原因を見落とす可能性があります。
そのため、データを蓄積することだけを目的にせず、データから現状を把握し、改善策を実行し、その結果を再びデータで確認するというサイクルを作ることが大切です。
情報共有、PDCAに関する記事はこちら
データ管理を行う6つのメリット
データ管理を適切に行うことで、企業には以下のようなメリットがあります。
- データの正確性・信頼性を高められる
- 業務効率を向上できる
- 情報共有をスムーズにできる
- セキュリティや情報管理を強化できる
- データに基づく意思決定ができる
- 業務改善や競争力の強化につなげられる
データの正確性・信頼性を高められる
データ管理のルールを整えることで、重複登録や入力ミス、古い情報の利用などを抑えられます。
正確なデータを共通の情報として利用できれば、担当者の記憶や経験だけに頼らず、客観的な情報に基づいて判断できます。
特に建築業では、案件情報、見積金額、原価、工程、請求・入金など複数のデータを扱うため、情報の正確性が重要です。
業務効率を向上できる
データが整理されていれば、必要な情報を探す時間を削減できます。
例えば、顧客情報をExcel、過去の問い合わせ履歴をメール、案件情報を別のファイルで管理している場合、必要な情報を確認するだけでも複数の場所を調べなければなりません。
情報を一元化し、関連するデータを紐付けることで、検索や確認、入力などの手作業を減らし、業務効率を高められます。
情報共有をスムーズにできる
データを共通のルールで管理すれば、担当者が持っている情報を組織全体で共有しやすくなります。
例えば営業担当者が休暇や退職などで不在になった場合でも、過去の商談履歴や顧客対応の記録が残っていれば、他の担当者が状況を把握しやすくなります。
これは、業務の属人化を防ぎ、担当者に依存しない業務体制を作るうえでも重要です。
セキュリティや情報管理を強化できる
データ管理では、情報を「使いやすくする」だけでなく、「安全に管理する」ことも重要です。
特に顧客情報などの個人データを扱う場合は、アクセスできる担当者やデータの範囲を適切に設定し、不正アクセスや情報漏えいなどのリスクを抑える必要があります。
個人情報保護委員会のガイドラインでは、アクセス制御やアクセス者の識別・認証、外部からの不正アクセス対策などの技術的安全管理措置に加え、組織体制の整備や従業者への教育なども示されています。
データに基づく意思決定ができる
データを適切に管理すると、経営判断や業務上の意思決定を客観的な情報に基づいて行いやすくなります。
例えば、売上だけを見るのではなく、案件数、受注率、平均受注額、粗利率、工事原価などを組み合わせて分析することで、業績の変化や問題の原因をより具体的に把握できます。
業務改善や競争力の強化につなげられる
蓄積したデータを分析すれば、業務の問題点や成功パターンを発見できます。
例えば、過去に利益率の高かった案件の特徴や、失注しやすい商談の傾向などを分析すれば、今後の営業活動や業務改善に活かせます。
「データを保存する」から「データを経営や業務改善に活かす」段階へ進むことで、データ管理の価値はさらに高まります。
データ管理を適切に行う方法と事例
データ管理で正確な現状把握が出来る、と言われても少しピンと来ないかもしれません。
そこで、実際のデータ管理事例をご覧いただきながら効果をご紹介します。
専用管理システムとは、営業活動や顧客サポートなど様々な職種で扱うデータを管理できる専用システムです。各システムを紹介しながら、実際の事例を見てみましょう。
データ管理の方法①:SFA(営業支援システム)を活用したデータ管理
SFA(Sales Force Automation)は営業活動を効率化するためのITシステムです。
商談先ごとに進捗状況を整理したり、やり取りの記録を記録します。かつて個人単位での情報把握が基本だった営業活動を、チームでの管理運営にシフトできるのが特徴です。
SFAが保存されるデータ項目の一例
SFAは営業活動に関する情報を管理分析するためのツールなので、営業マンの活動にまつわるあらゆる情報を管理することができます。
- 顧客企業の基本情報(社名・住所・連絡先・業種・沿革など)
- 顧客担当者の基本情報(担当者名・連絡先・役職や権限など)
- 顧客担当者以外の関係者情報(人物名・役職や権限・担当者との関わりなど)
- キーマン情報(キーマン名・担当者との関係性・コンタクト手段など)
- 顧客企業の決裁フロー
- 顧客企業との過去の取引状況(契約回数や購入頻度、金額など)
- 商談の進捗状況(アポイント取得情報、訪問状況、検討状況など)
- KPI状況(アポイント取得件数、訪問件数、契約件数など)
- 営業担当者ごとのノルマ達成率(売上や粗利状況など)
上記項目例の他にも企業によって様々な情報を保存・共有しています。
ただしSFAのデータ項目を入力するのは営業担当者なので、入力作業によって本業(営業活動)の時間が圧迫されないよう注意する必要があります。
次は、SFAを活用した営業活動のデータ管理事例で実際の活かし方を見てみましょう。
【事例】SFAを活用したデータ管理
20名以上の営業マンを抱えるA商社では、営業マンの成果は売上額で判断され売上目標も経営陣から下りてくる年間契約を分解して設定しています。
ところが売上数値のみで判断しているために、目標を達成できない営業マンは原因分析が出来ずにずっとできないままどころか、目標達成が容易な営業マンのノウハウも不透明なので優秀者が退職してしまうと会社にとって大きな痛手になるというリスクを抱えていました。
そこで、営業活動のデータ管理を実施しました。
営業活動で管理すべきデータ項目と言われる上記例を参考に情報収集を指示したところ、営業マンはそもそもデータにあるような行動を意識しておらず、担当者によって商談手順も異なる暗中模索状態だったのです。現場の営業マンたちはこの状況を理解していましたが、現場に出ない管理者サイドにとって驚愕の事実でした。
改善策として営業マンの活動を標準化するための基準を設けることとし、BANTCのような顧客認識状態の把握や進捗毎にクリアすべきステップなどを可視化することで、「何故失注したのか」「何故契約できたのか」を全社的に把握し営業成績の平均値を大きく上げることに成功します。
この事例のポイントは、「現場が肌感覚で理解していることを管理者サイドが初めて気付く」ことです。この経験ができたのは、まさにデータという客観的情報のおかげです。
データ管理の方法②:CRM(顧客管理システム)を活用したデータ管理
CRM(Customer Relationship Management)は顧客関係管理と訳され、顧客満足度の向上や売上拡大のための戦略手法です。このCRMの考え方を反映させたITツールは顧客管理システムと呼ばれます。
CRMが取り扱う「顧客」は、主に一度自社サービスを利用してくれた既存ユーザーです。
自社のサービスを通じてお客様に十分な満足を得てもらうためには、企業としてお客様個人を知らなければなりません。お客様1人1人を知ることでその人に合ったフォローを行い、関係をより深めていく事をCRMは目指しています。
顧客管理システムに関する記事はこちら
CRMが保存されるデータ項目の一例
SFAにも顧客に関するデータは含まれましたが、CRMはユーザー理解のためにより深い情報まで管理します。項目例は以下の通りです。
- 顧客企業の基本情報(社名・住所・連絡先・業種・沿革など)
- 顧客担当者の基本情報(担当者名・連絡先・役職や権限など)
- 顧客担当者以外の関係者情報(人物名・役職や権限・担当者との関わりなど)
- 購買データ(顧客が購入した商品種類や個数・金額など)
- アンケートへの回答状況、回答内容
- 配信メールの開封状況
- 自社イベントへの参加状況
CRMはお客様1人1人の理解と満足度向上を目的とするため、取引先を組織単位ではなく個人単位で管理することがあります。同じ会社に勤めている方でも1人1人考え方や趣向は異なるので、その人にあったアプローチで関係構築を図ります。
【事例】CRMを活用したデータ管理
B商社では新規契約数に心配は無かったものの、一度取引してから再度問合せをいただく「リピート」が少ないことに悩んでいました。リピートが少ないと売上確保のための要素は新規獲得だけになってしまい、営業マンは常に新規ルートを探して疲弊し、安定した経営とは言えない状況が続いてしまいます。
そこで、CRMに蓄積されたデータをもとに「お客様がご契約くださる商品規模」に何か条件が無いかを調査してみました。
データ集計してみると、1度目の契約からリピートしていただけた場合の期間や、リピートしていただけるお客様が1度目に注目くださる商品の種類や個数に傾向がある事が分かってきたのです。
結果、1度目の契約時の状況(商品種類や個数)ごとにターゲティングし、一定期間後にサポートチームから連絡することで2度目の商談を生み出すことに成功、見事営業チームへの橋渡しを通じて売上の積み増しに成功します。
この事例のように、データを蓄積していれば「契約」という成功事例を分析して仮説立てることができます。適切に保管されたデータはまさに企業の宝なのです。
データ管理の方法③:業種に特化した一元管理システムでデータ管理をする
SFAやCRMは各部門の情報を管理するのに非常に適したツールですが、「部門ごとに情報が分断される」というリスクを抱えています。そこで、SFAが担う営業部門、CRMが担う顧客サポート部門、その他入金支払など経理チームが担う経理部門などをまとめて1つのシステムで管理できるのが「一元管理システム」です。
一元管理システムは情報を横断的に管理できるうえ、システム運用の効率化を図るために各業種に特化しているケースがあります。自社業種にマッチするシステムを見つけられるなら、まずは一元管理システムの導入検討をしたほうがいいかもしれません。
【事例】建築業向け一元管理システムを活用したデータ管理
建築業界の中でもリフォームを行う事業者がとくに気にするべき数値は売上ではなく「粗利」です。せっかく高額な受注をしても工事が進行するにつれて原価が膨れ上がり、残る利益がごくわずかになるという現象も起こり得ます。
問題は、その現象を経営者が把握していないケースがあることです。
建築業界向け一元管理システム「アイピア」は営業時に提出した見積から実行予算、完工時など様々な段階の粗利データを管理することで、どの案件がどんな原因で粗利低下を引き起こしたのか一目で分かるようになっています。
適切な原価管理を行えば、売上は上がっていないのに粗利益が向上しているというケースも珍しくありません。
データ管理の方法④:自社情報を活用できるBIツールでデータ管理をする
BIツール(ビジネス・インテリジェンスツール)は蓄積されたデータを集計・分析し、レポート作成ができるツールです。
レポート作成のほか、複数のデータを多角的に検証するOLAP分析、データから法則を見出すデータマイニング、予測を行うシミュレーションなど様々な機能が搭載されています。
近年、経営状況の把握や売上シミュレーションに活用するためにBIツールを導入する企業が増加していますが、BIツールを利用する目的が明確でなければ適切な分析ができません。
現時点でどのようなデータを保管するかから検討を始める場合には、いきなりBIツールに手を出さずにまずはSFAやCRM、一元管理システムから考えることをおすすめします。
データ管理に関するよくある質問
- データのセキュリティを強化するにはどうすればよいですか?
-
セキュリティ対策として以下の方法があります。
- ファイアウォールやウイルス対策ソフトの活用
- アクセス権限の適切な設定(管理者・一般ユーザーの制限)
- データの暗号化(機密情報の保護)
- 定期的なバックアップ(障害・サイバー攻撃に備える)
- データ管理システムを導入すると業務はどのように改善されますか?
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データ管理システムを導入すると、以下のような改善が期待できます。
- 過去のデータを分析し、より効果的な業務改善が可能になる
- 業務の属人化を防ぎ、チームでの情報共有がスムーズになる
- 手作業でのデータ入力ミスを減らし、業務の精度が向上する
- 顧客情報・案件情報を一元管理し、対応のスピードを向上させる
- 建築業向けのデータ管理で気をつけるべきポイントは?
-
建築業では以下のポイントに注意することが重要です。
- 関係者間でのセキュアなデータ共有(クラウド活用による円滑な情報共有)
- BIMデータの一元管理(設計・施工のデータ連携を強化)
- プロジェクト情報の可視化(工程・コスト管理の最適化)
- 契約書・図面などの電子管理(ペーパーレス化による効率向上)
- データ管理を最適化するための具体的な手順は?
-
最適化のためには、以下の手順を踏むと効果的です。
- 定期的なメンテナンスと改善(データの品質管理と更新ルールの策定)
- データの現状分析(不要なデータの整理、重複データの削除)
- データの分類・構造化(フォルダ構成・データベース設計の見直し)
- 適切な管理ツールの導入(クラウド・業務管理システムの活用)
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今回はデータ管理の目的やメリット、方法について紹介しました。データを適切に保管・活用することはあらゆる企業に求められることですが、Excelなど独自の方法ではどうしても限界があります。SFAやCRMを業務に取り入れることで自然とデータが集まる環境を作っていけば、分析を行うに十分なデータを収集することができます。
まずはシステムを導入して、自社のデータが活用できる環境を作るところから始めましょう。
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