建設業では、一人親方として働いている方が少なくありません。
現在は会社に雇用されて働いている方でも、いつかは独立を考えている方もいることでしょう。
この記事では、一人親方のメリットやデメリット、一人親方になる際に必要な手続きなどを解説していきます。
一人親方とは?
一人親方とは、従業員を雇わず、一人で経営者かつ職人として建設工事に従事している人を指します。
日本の建設業の礎となってきた大工や左官などの職人は、古くより一人で仕事をしてきました。
それが時代を経て会社形態に移行などして、より大きな建物も建設できるようになってきました。
もっとも、日本では歴史が受け継がれており、職人として一人で活躍している人も多く、建設会社では下請けという方式で下請会社や一人親方に仕事をしてもらうケースも多いです。
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一人親方の特徴
一人親方=個人事業主とは限りません。
経営者兼職人として一人だけで働いている個人事業主が多いですが、補助者として配偶者や子供などが作業をフォローしているケースもあります。
一人で仕事をしているケースでも、売上が多くなることで節税対策のために法人化する場合や信頼を上げるために法人化するケースもあるのです。
個人事業主であれ、法人であれ、一人だけで仕事をしているか、家族や親族などの専業従事者のみで仕事をしており、それ以外の従業員は雇っていないケースを一人親方と呼ぶのが基本です。
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一人親方のメリット
では、一人親方として仕事をするメリットを見ていきましょう。
自由な働き方ができる
仕事を選ぶことができるうえ、働く場所や地域、スケジュールなども自由に選択、調整できます。
一つの案件が終了したら、しばらく休む、家族との夏休みを取るために、夏の一定期間は仕事を受けないなど、自由な働き方をすることも可能です。
社内の対人関係から解放される
会社には所属しないので、上司との上下関係や同僚との競争などのピラミッド的な対人関係からは解放されます。
引き受ける仕事の中には、たった一人でコツコツこなせる仕事もあります。
一方、大きな案件の場合には、ほかの一人親方や他社の従業員、現場監督などとの関係性を築き、連携、協力することが必要です。
仕事を選べる
会社に雇用されている場合、依頼された案件やプロジェクトに従い、配置されたポジションや指示された仕事をこなさなくてはなりません。
一人親方は、仕事の依頼が来ても、引き受けるかどうかは自分の意思で選択できます。
単価の交渉ができる
個人の依頼者の案件なら、自分で決めた価格を提示できます。
他の業者から依頼を受けた際や下請けの発注を受けた際は、単価の交渉もでき、仕事の難しさや負担の大きさなどに応じて、納得のいく単価を設定しやすいです。
会社に雇われるより単価が高い
一人親方は日給制や時給で単価を設定し、技術のある職人として高い単価で働けます。
会社に雇用されると昇給しない限りは、簡単な仕事をしても、難しい仕事をしても毎月の基本給は変わりません。
定年退職がない
定年退職がないので、60歳、65歳に到達しても仕事を続けられます。
体力と気力が続く限りは、長く働き続けることが可能です。
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一人親方のデメリット
では、一人親方のデメリットはどんな点があるでしょうか。
メリットばかりではないので、デメリットもしっかりと理解しておきましょう。
収入が不安定
会社に雇用されていれば、仕事の量などを問わず、毎月の基本給が支払われますし、ボーナスなども支給されます。
一方、一人親方は仕事が取れないと収入も得られません。
また、建設業の仕事は仕事の開始から完成するまでの期間が長いです。
一人親方は個人の依頼者から仕事を引き受ける場合でも請負契約を締結します。
請負契約は仕事が完成して初めて、報酬の支払いが得られます。
そのため、数ヶ月間と長く働いても毎月給与が支払われるわけではなく、完成しないと報酬を受け取れません。
仕事が安定的に入らないリスクと、仕事をしていても支払いが先延ばしになるデメリットがあります。
融資やローンの審査に通りにくい
一人親方として、工具や機材、重機やトラックなどを揃えたい時もあります。
また、長期の案件を受けると支払いが先延ばしになるため、資材などを買うための当座の資金を得たい時もあるでしょう。
融資やローンを利用するには返済能力の有無を審査されますが、一人親方の場合はその人の能力にかかっています。
ケガや病気で仕事ができなくなれば、返済できなくなりますし、事業計画がなされていない、技術が未熟などと評価されれば、仕事を得にくい人と思われて審査が通らないおそれがあります。
審査が通らなければ、仕事に必要な車を買いたくても、資材の仕入れをしたくても自己資金で賄わなくてはなりません。
確定申告を自分で行う必要がある
一人親方の多くは青色申告者として、確定申告を行っています。
日々発生する費用や売上の伝票などを整理して記帳を行い、毎年自分で申告をしなくてはなりません。
税理士に依頼することもできますが、その分報酬の支払いが必要となりコストがかかります。
大手との直接取引が困難
大手の建設会社や大手企業から直接依頼を受けられれば、単価もいっそう高額になり、信頼も得られて融資やローンの審査にも通りやすくなるでしょう。
ですが、大手から一人親方に直接依頼がくることはあまりありません。
宮大工など特別なスキルがあれば別ですが、大手が手掛ける大きなプロジェクトほど多くの人手が必要なので、一人親方一人ひとりにアプローチすることはほぼありません。
一人親方でも大型プロジェクトの現場で仕事をしている人は多いですが、こうした場合、下請企業の下請けの下請けなど、かなりの企業が間に入っているのが一般的です。
孫請けの孫請けとして取引するか、地元の工務店などから発注を受けるか、自分で個人の依頼主からの発注を取っていくことが求められます。
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一人親方になるために必要な手続き
メリット、デメリットを踏まえたうえで、一人親方になるためには、どのような手続きが必要でしょうか。
一人親方になるために必要な手続きを確認していきましょう。
開業届を提出する
開業届は税務署に提出する書類です。
事務所を設ける場所を管轄する税務署に、事業を開始してから1ヶ月以内に提出しなくてはなりません。
青色申告によるメリットを得たい方は、要件を確認したうえで、青色申告承認申請書も提出しましょう。
屋号名義の口座を開設する
一人親方を個人事業主として行う場合、個人名義の口座に代金の振り込みをしてもらうことや仕入れの費用の振り込みやローン返済をすることも可能です。
ですが、個人名義の口座では、日々の個人としての支出や家族のための支出などプライベートな資金と混在してしまいます。
青色申告をするための記帳をするにも、税務調査などを受ける際やローンの審査を受ける際にも、ビジネス専用の屋号名義の口座があったほうが便利です。
年金・健康保険制度に加入する
一人親方を個人事業主として行う場合、社会保険には加入できません。
国民年金、国民健康保険に必ず加入しましょう。
保険料がもったいないと加入せずにいると、仕事中にケガをして障がい者になっても障害基礎年金も受け取れません。
収入が不安定だからこそ、老後の安定が少しでも得られるよう、老齢年金を得ることも大切です。
一人親方は体が資本なので、病院に行った時の費用負担を抑えられるよう、国民健康保険にも加入しておきましょう。
一人親方労災保険に加入する
個人事業主は労災保険に加入することができません。
労災保険とは、業務中や通勤途上で事故に遭った際や病気になった際に特別な補償が得られる保険です。
医療費が全額無償になるなど、手厚い補償が得られます。
一人親方は業務の性質上、労災事故のリスクが高いので、特別に入れる労災保険が用意されています。
治療費をはじめ、休業補償や遺族補償なども受けられるので、一人親方労災保険にも加入するようにしましょう。
一人親方の保険に関する記事はこちら
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まとめ
一人親方とは、従業員を雇わず、一人で経営者かつ職人として建設業に従事している人のことです。
特徴として、個人事業主とは限らず、法人の場合もありますし、家族経営の場合もあります。
一人親方のメリットは自由な働き方ができること、社内の対人関係から解放されること、仕事を選べること、単価の交渉ができること、会社に雇われるより単価が高いこと、定年退職がないことです。
デメリットは収入が不安定なこと、融資やローンの審査に通りにくいこと、確定申告を自分で行う必要があること、大手との直接取引が困難なことです。
一人親方になるための手続きとして、開業届を提出すること、屋号名義の口座を開設すること、年金・健康保険制度に加入すること、一人親方労災保険に加入することが必要になります。
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