建設業の現場では、高齢者がいなければ人員不足で困る企業も多いのではないでしょうか。
現場は危険な場所も多く、事務作業などの仕事に比べて体力も使うため大変です。
若いうちは臨機応変にすぐ対応できても、年を取ると同じように判断できない場合も増えてきます。
こちらの記事では、建設業における高齢化の現状をはじめ法律上で建設業従事者の就業制限がどう決まっているのか、高齢者も安心して働ける現場づくりのポイントについて解説していきます。
目次
建設業における高齢化の現状
建設業では、人員不足から高齢者の労働力も欠かせません。
実際、年齢階級で見た場合、65歳以上の高齢者が建設業で就業している人数も多いです。
しかし、若い時とは体力面などが劣ってしまうケースから、作業中の事故も増えています。
ここからは、建設業の現場では高齢化の現状がどうなっているのか解説していきます。
建設業における高齢労働者の労災発生状況
さまざまな業種がある中でも、建設業で事故が起きる確率は高くなっています。
ほかにも、製造業などもトップではありますが、決して建設業での事故や災害も少なくありません。日々の作業の中で危険が伴うことも原因です。
労働災害が発生する割合も、男女ともに若年層と高年齢労働者の間でほかの年齢層よりも高くなっている報告もあります。
30代の頃は当たり前のようにできたことも、60歳前後になると体力も衰え集中力もなくなってしまいやすくなります。
年齢的な面からも、高齢労働者の労災発生は増加傾向です。
具体的な事故では転落や墜落、転倒なども多いです。
実際、建設現場ではさまざまな高齢者の事故が起きやすくなっていることから、対策を講じましょうという取り組みが指摘されています。
高齢者の労災を起こさないためにも、フルハーネス型墜落制止用器具を適切に使うなどの対策は重要です。
建設業の人手不足に関する記事はこちら
法律上の建設業従事者の就業制限
建設業従事者の就業制限は、法律上ではどうなっているのでしょうか。
何歳までしか建設業従事者として働けないなどの決まりがあるのか、詳しく解説していきます。
労働基準法:上限年齢への言及なし
年齢制限を見ていくと、具体的な高齢者が働くことができる年齢を言及しているような法律はありません。
未成年の場合は、満15歳に達さない場合は働いてはいけない、満18歳未満の場合は、年少者であることを証明できる証明書を現場で確認しなければならないなど、細かいルールが決まっています。
しかし、高齢者の場合は、70歳になったら働いてはいけないと決まっていません。
本人がやる気があれば、何歳までも現役で頑張れるようになっています。
中には、ゼネコンなど大手企業で働いている場合は企業の中でルールが決まっていて、60歳程度での定年となっている場合もあります。
しかし、人員不足や知識や経験があり頼りになる部分もあることから、70代まで働いてもらおうという動きもあるのが現実です。
実際、どの現場を見ても、70歳代で働く作業員も多く見受けられます。
労働安全衛生法:中高年齢者等への配慮義務あり
何歳までしか働いてはいけないなどと決まりはありませんが、安心で安全に働いてもらうため、中高年齢者への配慮を行う義務があると労働安全衛生法で決められています。
他業種に比べて建設業は危険性が伴う職場でもあるため、労働災害の防止を徹底することが求められます。
中高年齢者の心身の状況に応じて、適正な配置も必要です。
建設業では、高所で作業をしなければならない場合も多いですが、若い人と高齢者では運動能力やとっさの判断能力も違います。
高所作業(地上から2メートル以上の作業場所)は労働安全衛生法により18歳以上にならないと認められないという年齢制限がありますが、年齢の上限はない為、高齢者も高所作業を行うことができます。
そのため、高所作業は○歳以上の作業をしてはいけないなどと決まりを作るようにと、労働安全衛生法では求められています。
労働者の健康や安全を守ることが必要です。
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高齢者就労報告書とは
自社で高齢者の作業員に就労させると報告するための書類を高齢者就労報告書と言います。
高齢者が安心で安全に働けるように対策が実施されているのかどうか管理するために、労務安全書類で確認されます。
何の対策も採らずに万が一高齢者が死亡事故などが起きては大変なため、元請業者が下請業者に提出するように促す場合も多いです。
必ずこの事項を入れないと高齢者就労報告書とはみなさない決まりはありませんが、ある程度形式が決まっています。
ほかに、自社でどんなことに気を付けるかを考え、独自に作成している企業も多いです。
高齢者就労報告書の記載項目
高齢者就労報告書に記載されている項目の一般的なものは以下です。
- 何の種類であるかわかるようにタイトル
- 作成した日付
- 作業を行う現場名
- 現場代理人名
- 提出者の所在地、会社名、代表名
- 記の上部にどんなことに気を付けて高齢者の就労を行うのか具体的に書く
労務安全書類に関連する記事はこちら
高齢労働者が働きやすい現場づくりのポイント
高齢労働者が安全に働ける環境を作るのは、企業にとって大切なことです。
働きやすいと感じる現場づくりのポイントを知って、より快適に働ける環境を整えましょう。
人材不足で困っている建設現場も多いため、少しでも良い環境を作る努力は必要です。
ここからは、高齢者労働者が働きやすい現場づくりのポイントについてご紹介していきます。
職務配置を工夫する
職務配置の工夫は重要で、高齢者であることを配慮しなければなりません。
高所な場所や臨機応変に自分でとっさな判断も必要な高度な現場配置をしてしまうと、転落をはじめさまざまな事故につながりやすくなります。
判断や記憶、身体能力などを確認しながら、職務配置することが重要です。
作業も計画した通り単純なものを選び、どんな作業をしたら良いのかアバウトではなくわかりやすく明確に指示しましょう。
導入訓練も若い人に比べて慣れるのに時間がかかるため、長い時間を設けるなどの配慮も必要です。
作業時間短縮・作業時間帯の変更
若く体力がある時のように、高齢者になると動けません。
長時間の勤務をさせてしまうと、倒れてしまう危険性があります。
無理なく働けるように、作業時間の短縮や時間帯の変更もしましょう。
半休や早退だけでなく、夜勤日数を減らすのも効果的です。
夜勤をした後はゆっくりと休めるような環境も作ってあげましょう。
筋力の低下、不良姿勢への配慮
年齢を重ねるとともに筋力は衰えてしまうため、若い頃はなんとか重さのある作業も頑張れてもそうはいかなくなります。
強い筋力を必要とする作業は減らし、フォークリフトなどを使用するなど、体への負担を考慮する必要があります。
無理な姿勢もケガにつながるため、楽な姿勢でできる作業を任せましょう。
転倒・転落事故防止のための環境整備
若い時は問題なく体のバランスが取れていても、高齢になると上手に取れなくなってしまいます。
少しのことでも転んでしまいやすくなり、事故につながってしまいます。
高所などで作業をしていて落下してしまったら、死亡事故につながり危険です。
段差をなくし、手すりなども設置し転びにくい環境を整えましょう。
健康診断の実施
年を取るとともに、体のどこかに疾患もできやすくなります。
もともと健康診断を受け、糖尿病や高血圧症などの診断を受けている場合は注意が必要です。
ほかにも、心臓病や肝機能異常など、持病を抱えている場合は特に配慮しなければなりません。
病気をして一定期間休んで作業員の場合、急に負担の大きい作業を行わせるのは危険です。
まずはリハビリ出勤を行い、その方に合った作業を任せましょう。
少しの変化に気が付けるようにするためにも、健康診断は毎年実施して一人ひとりの状況を把握することも重要です。
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まとめ
人手不足から経験や知識のある高齢者は大切な人材ですが、事故も起こしやすく企業側で配慮が必要です。
建設業従事者の就業制限は下限があるものの、上限がなく高齢者も働けます。
しかし、若い人と同じように働けるわけではないため、企業の中で無理をさせないことが重要です。
高齢者が安心して働けるような環境を作るためにも、職務配置の工夫、作業時間の短縮や時間帯の変更など、具体的に実施して安全な環境づくりをしましょう。
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