建設業退職金共済制度(建退共)は、建設業の現場で働く労働者のための退職金制度です。
建退共への加入は事業主の任意ですが、加入すると対象となる労働者について、働いた日数に応じて掛金を納付し、将来の退職金に備えます。
また、建退共は公共工事の入札に関係する経営事項審査で加点評価されるほか、掛金が法人では損金、個人事業主では必要経費として扱われるなど、事業主にもメリットがあります。
この記事では、建退共について知りたい方や加入を検討している事業主に向けて、建退共の仕組みや掛金、メリット・デメリット、加入者のメリットについて分かりやすく解説します。
建退共とは?制度の概要

建退共(建設業退職金共済制度)は、建設業の現場で働く労働者のための退職金共済制度です。
独立行政法人勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部が制度を運営しています。
建退共では、事業主が労働者の働いた日数に応じて掛金を納付します。納付された掛金をもとに、労働者が建設業界を離れるなど所定の要件を満たした場合に、退職金が労働者本人へ直接支給されます。
- 加入できる事業主
日本国内で建設業を営む事業主であれば、元請・下請、専業・兼業などを問わず加入できます。建設業許可を受けていない事業主も加入対象です。 - 加入できる労働者
建設業の現場で働く労働者の多くが対象です。大工・左官・鳶・土工・電工・配管工・塗装工・運転工など、職種や月給制・日給制などによって一律に制限されるものではありません。現場事務員も対象となる場合があります。 - 掛金の負担
掛金は事業主が全額負担します。労働者の給与から天引きして負担させることはできません。 - 退職金の支給
所定の支給要件を満たした場合、建退共から労働者本人に退職金が直接支給されます。建設業界内で事業主が変わった場合でも、加入事業所間で掛金納付実績が通算されます。
なお、事業主や役員報酬を受けている方、本社等の事務専用社員などは原則として建退共の対象となりません。一方で、現場で働く現場事務員は対象となる場合があります。
建退共の公式ホームページはこちら
建退共の掛金はいくら?納付方法も解説
建退共の掛金日額は現在320円です。
事業主が労働者の就労日数に応じて掛金を納付し、その実績が退職金の計算に反映されます。掛金は労働者が負担するのではなく、事業主が全額負担します。
建退共の掛金納付には、従来の共済証紙を使う方法に加えて、現在は電子ポイント方式も利用できます。
共済手帳・共済証紙で管理する方法
建退共に加入すると、労働者には共済手帳が交付されます。
証紙貼付方式では、事業主が共済証紙を購入し、労働者が働いた日数に応じて共済手帳に証紙を貼付します。証紙を貼付して消印することで掛金を納付したことになります。
なお、新たに建退共へ加入する労働者に最初に交付される共済手帳には、50日分の掛金助成があります。これは国の補助によるもので、初回交付の共済手帳が対象です。
電子ポイント方式で管理する方法
建退共では電子申請による掛金納付も利用できます。電子ポイント方式では、事業主があらかじめペイジーまたは口座振替で退職金ポイントを購入します。
その後、電子申請専用サイトに労働者ごとの就労日数を入力すると、就労実績に応じて退職金ポイントが掛金として充当されます。
電子申請を利用することで、共済証紙の購入や手帳への貼付が不要になるほか、掛金の納付状況を電子データで確認できるなど、事務作業の効率化にもつながります。
また、CCUS(建設キャリアアップシステム)の就業履歴を連携することで、就労実績の入力作業を省略できる場合があります。
企業や事業主にとっての建退共のメリット
建退共を導入すると、労働者の福利厚生だけでなく、企業や事業主にもさまざまなメリットがあります。
主なメリットは次の4つです。
退職金制度の整備による人材確保につながる
建退共を導入することで、建設現場で働く労働者に対する退職金制度を整備できます。
退職後の生活を支える制度を用意することは、福利厚生の充実につながります。人材確保や定着を考えるうえでも、退職金制度を整備していることは企業のアピールポイントの一つになります。
経営事項審査で加点評価される
建退共への加入・適正な履行は、公共工事の入札参加などで利用される経営事項審査(経審)で加点評価の対象となります。
ただし、建退共に加入しているだけで公共工事を受注できるわけではありません。経営事項審査では、ほかの評価項目と合わせて総合的に評価されます。
公共工事、経営事項審査に関する記事はこちら
掛金を損金・必要経費として扱える
建退共の掛金は事業主が全額負担しますが、法人の場合は損金、個人事業主の場合は必要経費として扱うことができます。
そのため、退職金制度を整備しながら、税務上も掛金を費用として処理できる点がメリットです。
初回加入者は掛金の一部が助成される
新たに建退共の対象となる労働者については、最初に交付される共済手帳の50日分の掛金が国の補助によって免除されます。
事業主の負担を軽減しながら、労働者の退職金制度を整備できる点も建退共のメリットです。
企業や事業主にとっての建退共のデメリット
建退共にはメリットがある一方で、事業主が理解しておきたい注意点もあります。
事業主が掛金を全額負担する
建退共の掛金は労働者ではなく、事業主が全額負担します。
掛金日額は320円ですが、対象となる労働者の人数や就労日数が多くなれば、その分だけ事業主の負担も増えます。導入する際は、対象となる労働者数や年間の就労日数を確認し、継続して負担できるかを検討することが大切です。
対象労働者の掛金納付や管理が必要
建退共に加入すると、対象となる労働者について就労実績を把握し、適切に掛金を納付する必要があります。
証紙貼付方式では共済証紙の購入や貼付・管理などの事務作業が発生します。電子ポイント方式を利用すれば、こうした作業を電子化できますが、就労実績の入力や確認などの管理業務は必要です。
会社全体の退職金制度にはならない
建退共は建設業の現場で働く労働者を対象とした制度です。
そのため、事業主や役員報酬を受けている役員、本社等の事務専用社員などは原則として対象になりません。
会社全体で退職金制度を整備したい場合は、建退共だけで対応するのではなく、ほかの退職金制度との併用なども検討する必要があります。
建退共の加入者(労働者)にとってのメリット
ここまでは企業や事業主側のメリット・デメリットについて解説しました。
建退共は、実際に制度へ加入する労働者にとってもメリットがあります。主なメリットは次の2つです。
国の制度で安心して利用できる
建退共は独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する公的な退職金共済制度です。
事業主が納付した掛金をもとに、所定の要件を満たした労働者へ建退共から退職金が直接支給されます。そのため、勤務先が変わった場合でも、建退共の制度を利用する事業所であれば掛金納付実績を通算できます。
転職しても掛金納付実績を通算できる
建設業では、転職や勤務先の変更が比較的多いことから、建退共では加入事業所が変わっても掛金納付実績を通算できる仕組みになっています。
建設業を離れて退職金の請求要件を満たした場合には、それまでの掛金納付実績をもとに退職金を請求できます。
建退共の加入者(労働者)にとってのデメリット
建退共には労働者にとってメリットがある一方、退職金を受け取るためには一定の条件があります。
掛金納付実績が12か月未満では原則として退職金を請求できない
建退共では、掛金納付実績が12か月以上あることが退職金請求の基本的な要件です。なお、1か月は21日として計算されます。
そのため、短期間で建設業を離れた場合など、掛金納付実績が12か月に満たない場合は、原則として退職金を請求できません。
ただし、12か月未満の共済手帳でも、今後再び建設業に従事する場合には、そのまま使用できます。共済手帳には有効期限がありません。
建退共は加入するべき?企業が検討するときのポイント
建退共への加入を検討する場合は、単に掛金の負担だけを見るのではなく、労働者の福利厚生、経営事項審査、事務負担などを総合的に考えることが重要です。
特に公共工事の受注を目指している企業では、経営事項審査の加点項目の一つになるため、加入・適正履行による効果を確認しておくとよいでしょう。
一方で、対象となる労働者が多い企業では掛金負担も大きくなるため、現在の従業員数や就労日数をもとに年間の負担額を試算しておくことをおすすめします。
また、共済証紙方式と電子ポイント方式では事務作業の内容が異なるため、自社の管理方法に合った納付方法を検討することも大切です。
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まとめ
建退共(建設業退職金共済制度)は、建設業の現場で働く労働者のための退職金共済制度です。
事業主が労働者の就労日数に応じて掛金を納付し、所定の要件を満たすと建退共から労働者へ退職金が直接支給されます。加入事業所が変わっても掛金納付実績を通算できるため、建設業で働く労働者にとっても利用しやすい制度です。
企業側にも、退職金制度の整備、経営事項審査での加点、掛金の損金・必要経費への算入などのメリットがあります。
一方で、掛金を事業主が全額負担することや、対象労働者の就労実績・掛金を適切に管理する必要がある点には注意が必要です。
建退共への加入を検討する際は、自社の従業員構成や公共工事への参入状況、事務負担などを確認したうえで、自社に適した制度かどうかを判断しましょう。
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