大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の2016年度の来場者数が1390万人を突破しました。2014年度には1270万人、15年度には1390万人と推移し、3年連続の最高記録更新です。
ハリーポッターやハロウィンホラーナイトなどの独自イベントを次々展開し、今や東京ディズニーランドをも超える来場者数を誇る、超人気テーマパークとなりました。
ところで、そんなUSJがかつて事実上の経営破綻に陥っていたことをご存知でしょうか?
今回は経営破綻から見事復活を果たしたUSJを分析するとともに、考え方・手法を自社にも取り入れられないか考えてみようと思います。
最強マーケター 森岡 毅 氏という存在
USJの経営回復を語るのに切っても切れないのが、当時のUSJのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)の森岡 毅氏です。
森岡氏は2010年のUSJ入社直後から、数学や統計の知識をもとにした戦略理論からさまざまなアイデアを打ち出し、USJの経営をV字回復させたキーマンです。
2017年1月には「再建を成し遂げ、使命を果たした」といってUSJを退社してしまいましたが、森岡氏の打ち出した施策はいまもUSJに大きな売り上げを作り続けています。
徹底的に顧客のことだけを考える
森岡氏は様々な施策を執り行ってきましたが、それらはすべて基本的な考え方に集約されます。
それこそが、「徹底的な顧客志向」です。森岡氏が打ち出した施策の一部を見てみましょう。
顧客ニーズをつかむ顧客管理に関する記事はこちら
森岡氏が仕掛けた施策とは?
では、具体的に森岡氏が手掛けた施策はどのようなものがあるのでしょうか。
この章では、USJで森岡氏が行った施策をご紹介します。
ユニバーサルワンダーランド
USJのコンセプトはもともと、「映画好きの大人が楽しめるテーマパーク」でした。そのコンセプトが、ただでさえ狭い関西市場を「映画好き」かつ「大人」というキーワードで狭めていたのです。
当初のUSJは子供の来場をほとんど想定しておらず、ほとんどのアトラクションは身長制限で遊べませんでした。その結果、「USJは小さな子供連れでは遊べない」という消費者意識が根付いてしまいました。
実際に子供を連れてUSJを訪れた森岡氏はそれに気づき、「あらゆる世代が訪れることのできる、エンターテイメントのセレクトショップ」へと方向転換しました。
その第1弾が、ユニバーサルワンダーランドです。
スヌーピー、セサミストリート、ハローキティなどのコンテンツを一か所に集約し、機能は子供に合わせ、デザインは親に合わせ徹底的に体験価値にこだわったエリアです。ユニバーサルワンダーランドは完成以後集客を伸ばし続けています。
ワンピースプレミアショー
森岡氏がUSJに入社する以前から行われていた、漫画「ワンピース」を題材にしたライブショーです。
USJがもともと持っていたライブショーのノウハウをもとに、実際の炎などを使ったハイレベルなショーだったのですが、世間的な認知度は低いものでした。
そこでワンピースファンの取り込みを狙ってテレビCMを打ち、大々的に宣伝。ショーの内容を変えることなく来場者数の増加に繋がりました。
ハロウィン・ホラー・ナイト
USJの敷地全体でゾンビに扮したスタッフが徘徊する、画期的なイベントです。
「ストレスをため込みやすい」「吐き出す環境が少ない」という日本人のニーズを読み取り、「大声で叫んだり熱狂しても許される空間を提供しよう」というコンセプトで企画されました。
費用のほとんどがスタッフの人件費で設備の増設などを必要としない安価な企画として成立し、莫大な動員数を記録しました。
ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド ~バックドロップ~
もともと人気のあったジェットコースターを「後ろ向き」に走らせただけのアトラクションです。この「だけ」なのに誰も思いつかなかった画期的アイデアが来場者数を増加させました。
バックドロップの人気は凄まじいもので、アトラクション待ち時間の日本記録を大幅に更新する、9時間40分を記録する大ヒットでした。
ハリーポッターエリアの建設のため出来うる限り、費用を抑えたコンテンツを考えたかった森岡氏の会心の一撃です。
ハリーポッターエリアの導入
「The wizarding World of Harry Potter」は総費用450億円をかけて建設された、今やUSJの目玉スポットです。
これまで関西地区に根差したテーマパークだった状態から脱却し全国からの集客を狙ったもので、その狙い通りUSJを全国区のブランドとすることに成功しました。
森岡氏の発想の秘密とは?
では、森岡氏がこうした様々な発想を得ることができる秘訣はどこにあるのでしょうか。
この章では、森岡氏の発想の秘密をご紹介します。
マーケティングフレームワーク
森岡氏は自身の著書で、ここまで紹介してきた施策はとある「マーケティングフレームワーク」をもとに発想していたと言いました。
著書では詳しく説明されているのですが、今日はそのフレームワークを視覚的に分かりすい表にまとめてみました。
マーケティング担当者でなくともフレームの順番に課題解決を行えば、マーケティング思考に挑戦できるようになります。
1.戦場はどこか
- 自社はどんな会社か?
- 消費者に提供している”価値”とはなにか?
- 似た価値を提供する競合他社の動向は?
- 周りを取り巻く地域社会の状況はどうか?
2.どこに辿り着きたいのか
- ギリギリ届く高さの目標になっているか?
- 誰もが理解できるシンプルさか?
- 社員のやる気につながる魅力はあるか?
3.誰に売るのか
- 売りたいお客様を絞っているか?
- お客様の層の中でも、逃したくない最重要なお客様を決めているか?
- お客様の本心を探れているか?
4.何を売るのか
- 製品そのものではなく、製品を利用した事による「感情」を商品として提供できているか?
- 商品とする「感情」を一言で表せるか?
5.どうやって売るのか
- 顧客ニーズに合う商品か?
- 需要やコストに見合う金額設定か?
- PR活動は明確になっているか?
重要なのは、これら5点を順番に解決していくことです。その結果、適切な戦略を作ることができます。
経営分析に関する記事はこちら
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まとめ
今回は、USJのマーケティングを担った森岡氏が発案した様々なコンテンツと、その根底にあるマーケティング思考をご紹介しました。
森岡氏はいまUSJを退職し、マーケティング業務を請け負い、日本にマーケティング思考を根付かせるための会社「刀」を設立しました。森岡氏の今後の活躍も見逃せません。
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