建設業の施工管理にて行う業務の一つに「工程管理」があります。
工程管理は、ただスケジュールを管理するだけでなく、工事物の品質や原価にも関わってくる大変重要な業務です。
工事の実施状況によって工程表の見直しや改善を行うなど、適切な工程管理を行わなければ、納期の遅れや品質の低さによるクレームにつながる可能性もあるので、しっかり管理する必要があります。
今回は、工程管理の目的や手順、効率的な管理方法など具体的に解説いたします。
工程管理とは
施工管理は、「工程管理・原価管理・安全管理・品質管理」の4大管理を行います。
この中で、工事の過程に密着した部分を「工程管理」といいます。
工程管理とは、工事を納期までに完了させるために、実行計画の立案や工程表作成を行い、全体のスケジュール管理を行うことを指します。
また、建設工事の工程は複雑である上に多くの人々が工事に携わる為、より効率的に工事を進める為に人員管理や材料管理を行うことも工程管理業務の一つです。
【参考】
国土交通省が定めた『土木工事施工管理基準及び規格値(案)』では、
管理する項目に工程管理が含まれ、以下のように記されています。
土木工事施工管理基準
5. 管理項目及び方法(1)工程管理
受注者は、工事内容に応じて適切な工程管理(ネットワーク、バーチャート方式など)
を行うものとする。ただし、応急処理又は維持工事等の当初工事計画が困難な工事内容
については、省略できるものとする。
工程管理の領域
より具体的に見ていくと、工程管理の領域は、計画と統制に分割されます。
計画
計画は、設計に基づく作業手順の計画、作業の負荷を調整する工数の計画、納期を配慮した日数計画などが含まれます。
統制
一方で統制は、工事の進行度が計画通りでない場合に、原因をあぶり出し、対策を講じることで、工事を統制していくことを指します。
施工管理に関する記事はこちら
工程管理の目的
続いて、工程管理がどのような目的で行われる業務なのか、具体的に見ていきましょう。
目的は主に5つあります。
- 納期遵守
- 品質確保
- リードタイムの短縮
- 生産性向上
- コストダウン
以下で詳しく見ていきましょう。
納期遵守
工事を行う上で、納期までに工事を完了させることは重要なポイントです。
その為にも、正確なスケジュールの作成・管理を行い、効率的に工事を進めていく必要があります。
工程管理を適切に行うことで、人員や各工程の管理を工事の進行状況に合わせ最適に行うことができるため、天候の悪化など急なトラブルでも計画的に工事を進めやすく、納期を守ることができます。
品質確保
工事完了後、顧客が満足する品質で商品を提供することも工程管理の目的の一つです。
工程管理で工事の作業内容を明確化し、余裕をもって工事を進めていくことでミスを防ぐことができます。結果、一定以上の品質で商品を提供することが可能となります。
リードタイムの短縮
リードタイムとは一般的に、商品の発注から納品までの一連の流れにかかる時間のことを指します。
工程管理を行うことで作業と作業の隙間時間を減らし、リードタイムの短縮につながります。
リードタイムを短縮することで、次に紹介する生産性の向上や工事コストの低減につながります。
生産性向上
上述したように工程管理を行うことで、徹底した人員管理とスケジュール管理を行うことができます。
作業の無駄を省き、余った人員を別の作業に回すことができれば、生産性向上につながります。
生産性が向上すれば、工期の短縮につながる為、リピート率や利益のアップが見込めるでしょう。
コストダウン
上述したように、工程管理は、リードタイムの削減や生産性の向上につながります。
結果、多くの人員を確保する必要がなく、無駄な労務費の削減につながります。
また、工事で使用する機材や材料の無駄や工事が長引くことで発生する経費の削減も可能となります。
工程管理の手順
工程管理を行う際は、PDCAサイクルを回し効率的に行っていくのが良いでしょう。
PDCAサイクルとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(確認)」「Action(改善)」の4つの要素を順に1つのサイクルとして回していくフレームワークです。
では、工程管理の手順をPDCAサイクルに当てはめ、具体的な管理方法を見ていきましょう。
計画(Plan):工事計画を立て、工程を作成する
まずは、設計や施工法、施工の順序を基に、日程・作業手順を踏まえて計画を立て、工程表を作成します。
工程表は、全体スケジュールを把握できる「全体工程表」のみならず、部分工程表や横線式工程表など、用途に合わせて細かい情報を得ることができる工程表も合わせて作成するようにしましょう。
適切な工事計画を立てておくことで、人員管理やスケジュール管理がスムーズに行えます。
一方で、無理な計画を立ててしまえば、計画と工事に大きなずれが生じ、計画の大幅な見直しが必要になるなど、かえって手間が増える可能性もある為注意が必要です。
実施(Do):工事の監督を行う
次に、作成した工程表を基に工事が計画的に進むよう、指揮をとります。
また、重機や資材の手配を行うのも工程管理の業務の一つです。
しかし、工事を進めていく上で初めてわかる問題や天候などのトラブルによって工事が計画通りに進まないことは多々あります。
工事工程の経過をしっかりと観測し、トラブルが合った場合は落ち着いて指示を行いましょう。
また、現在の状況を正確に把握する為にも、問題や課題のメモをとると良いでしょう。
検討(Check):進捗状況と計画との差異を把握する
次に、現在の工事進捗の確認、計画とのずれを把握し、その原因を追求します。
何らかのトラブルがあった場合は、②実施段階でとったメモをもとに、問題・課題・現状を明確化し、対策を練りましょう。
処理(Action):工程表や工事の問題を改善する
最後に、③検討段階で明確化した課題の改善を行います。
工事計画や工程表とのずれが生じている場合は、遅れている作業の改善を行うか、計画自体を見直しましょう。
工事は、天候などによりトラブルがつきものです。故に、改善や対策は柔軟に行っていく必要があります。
また、工程管理の手順は、①計画から④処理(改善)まで、繰り返し行うことです。
この4つの手順を繰り返すことで、生産性の高い工事を行うことが可能となります。
工程表に関する記事はこちら
工程管理を効率化するには?
工程管理を効率化するにはエクセルでの作成や工程管理システムの導入があります。
以下でご紹介いたします。
エクセルを使った工程管理
多くのサイトで無料でバーチャートやガントチャートのテンプレートを配布しています。
様々なタイプのテンプレートがあるため、自社にあったテンプレートを用意しましょう。
利用目的によっていくつかのテンプレートを使い分けたり、既存のテンプレートをカスタムすることで効率化を目指すことができます。
エクセル以外にもグーグルのスプレッドシートもおすすめです。データの共有をスムーズに行うことができ、スマホやタブレットからでも作成や編集が可能になります。
タスクの洗い出しや、進捗状況から問題点を見つける作業がどうしても必要となりますが、無料のツールを利用することでコスト削減が期待できるでしょう。
工程管理システムの導入
忙しい業務を日々こなす中で、上述したような工程管理の手順を繰り返し行っていくことは、かなりの手間になります。
特に①計画の段階の、工程表作成業務はかなりの時間を要します。
こうした、業務を効率化する場合は、工程管理システムを活用しましょう。
システム導入は、コスト面で躊躇する企業も多いですが、クラウド型システムを導入することで、初期費用を抑えることが可能です。
また、工程管理に特化したシステムではなく、様々な業務を一元管理できるシステムを導入するとで、さらに高い費用対効果を得ることができます。
既存の施工管理システムを見直す際に併せて、工程管理の業務を刷新すると良いでしょう。
工程管理システムに関する記事はこちら
工程管理における改善事例
では、工程管理を効率化できるシステムを導入することでどのような改善が見込めるのでしょうか。
ここでは、「施工管理システム アイピア」を導入したことによる業務の改善事例を見ていきましょう。
改善事例①
『施工管理システム アイピア』を導入したことで、工程表の作成の効率化を実現。
工程表作成時、マスタ取込機能を活用することで、何度も登録する手間がなく短時間で工程表を作成できる。
また、見積から階層を取り込める『見積階層取込』機能や、
急な雨天でも工事工程を一括でずらせる機能等を活用し、工程表を効率的かつノンストレスで作成できるようになった。
改善事例②
『施工管理システム アイピア』を導入したことで、各工程の「見える化」を実現。
各工事で作成した工程表が自動で全体工程表に反映される為、会社全体で請け負っている工事の進捗状況の把握や比較がしやすい。
また全体工程表は、担当者や取引先で絞り込みができる為、現場管理者や職人の作業量を一目で確認でき、キャパ管理がしやすくなった。
改善事例③
『施工管理システム アイピア』を導入したことで、生産性向上が可能に。
検索機能が充実しており、過去に行った工事の工程の見直しが簡単。
また、工程や原価、工事内容を細かく確認できるから、改善策を練りやすい。
結果、工事をするごとに、工程や作業計画の最適化が可能となり、生産性が向上した。
まとめ
今回は、工程管理について解説いたしました。
工程管理は、スケジュール管理のみならず人員管理や材料の管理など幅広い管理を行う為、その影響範囲は広いです。
工程表の作成や確認、改善など手間のかかる業務でもあります。
工程管理ができるシステムを導入して、効率的かつ適切な工程管理を行いましょう。
また、これを機に業務を施工管理システムを見直し、まとめて業務改善を行うとより効果的です。
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