ビジネスシーンでよく見かけるランニングコストですが、意味をよく理解していると日常生活など様々な場面で役に立ってきます。
そこで今回は、ランニングコストとは何か、よく一緒に使われるライフサイクルコストやイニシャルコストとの違いをご紹介します。
ランニングコスト(running cost : RC)とイニシャルコスト(initial cost : IC)
この章では、ランニングコスト(running cost : RC)、イニシャルコスト(initial cost : IC)について1つ1つ分かりやすく解説します。
ランニングコスト(running cost : RC)とは
ランニングコストとは経営学で使われる用語のひとつであり、建物や備品、システムを維持管理するために継続して必要となる費用のことで、運営費、維持費、運用コスト、管理費、 継続費用とも言い換えられます。
英語ではrunning costで、頭文字をとってRCと略して使われます。
例えば、コピー機を購入した場合、コピー機本体の購入費ではなく購入後に必要となるインク代や紙代がランニングコストとなります。
ランニングコストの類語に固定費があります。固定費とは売上に関係なく発生する費用であり、家賃や人件費が入ります。ランニングコストには家賃や人件費などの固定費のほかに消耗品費などの変動費が含まれます。
イニシャルコスト(initial cost : IC)とは

イニシャルコストとは建物の建設時や備品、システムの導入時に払う最初の費用のことです。「初期費用」「初期投資」「設立費用」「スタートアップコスト」「開発費」「導入費」などとも呼ばれます。
英語ではinitial costでICと略して使われます。
先ほどのコピー機の例で考えると、コピー機本体の購入費や設置費などがイニシャルコストになります。
ライフサイクルコスト(life cycle cost : LCC)とは
ランニングコストなどとともによく使われる用語にライフサイクルコストがあります。
英語ではLife cycle costでLCCと呼ばれることもあります。
購入してから使用、そして廃棄までのトータルを考えた費用のことで生涯費用とも呼ばれます。イニシャルコストとランニングコストの合計で求められます。
それぞれのコストの違い
イニシャルコストとランニングコストは、それぞれ発生するタイミングと支払う回数が異なります。
イニシャルコストは何かを始める、導入する際、契約の始めに支払います。ランニングコストは何かサービスを始めた後、または利用し始めてから継続するために月々支払います。
- ランニングコスト…維持費用, 建物や備品などを管理維持するために継続して必要となる費用
- イニシャルコスト…初期費用, 建物や備品などを購入、導入するときに初めに必要となる費用
- ライフサイクルコスト…生涯費用, ランニングコスト+イニシャルコスト
ビジネスシーンや日常生活など様々な場面でランニングコストやイニシャルコストという用語は使われます。
たとえば会社を設立する際に必要なオフィスの手配や備品、システムの購入、導入費はイニシャルコストです。
それらを維持していくための管理費や修繕費、人を雇うのならば人件費もランニングコストとして扱われます。
日常生活でも同じように車や物件を購入したら購入費はイニシャルコストですし、購入後にかかってくるガソリン代や水道光熱費などはランニングコストとして考えることができます。
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ランニングコストとイニシャルコストの具体例
ランニングコストとイニシャルコストの違いは、具体的にどのようなものがあるかを知ることでイメージが容易になります。
この章では、ランニングコストとイニシャルコストの具体例をパターン別にご紹介します。
車のランニングコストとイニシャルコスト
- 車のランニングコスト…ガソリン代、車検費用、修理代、保険料、自動車税、駐車場代、消耗品費、高速道路料金など
- 車のイニシャルコスト…車の本体価格、購入時の税金、仲介手数料
例えば中古車を購入した場合、イニシャルコストは低いかもしれませんがガソリン代や修理代などのランニングコストが大きくなってしまう可能性があります。
逆に燃費の良い車を購入した場合にはイニシャルコストが大きくてもガソリン代が安く済むためランニングコストは抑えることができます。
その為、イニシャルコストとランニングコストの両方の面から車種や機能を見比べて車を選ぶ必要があります。
不動産運用に必要なランニングコストとイニシャルコスト
- 不動産のランニングコスト…修繕費、管理費、仲介手数料、広告費、固定資産税、都市計画税、消耗品費など
- 不動産のイニシャルコスト…土地代、設計費、建築費など
建物を購入する際にイニシャルコストに注目しがちですが、じつは建物のイニシャルコストはライフサイクルコストの氷山の一角と言われるほど長い目で見るとトータルの割合が小さな費用です。
そのため建物の購入時にはイニシャルコストだけでなくランニングコストも重要視する必要があります。特にエレベーターなどは導入した後に稼働するためのランニングコストが大きくなる可能性があります。
ライフサイクルコストを抑えるためには設計の時点からランニングコストを減らすことに十分な考慮が必要です。
さらに点検や修繕を定期的に行い、環境の変化に応じて適切に建物のリニューアルを行っていくことが必要となります。
情報システムに必要なランニングコストとイニシャルコスト
- 情報システムのランニングコスト…維持費、管理費、運用費、保守費
- 情報システムのイニシャルコスト…コンピューターなどのハードウェアの購入費、サーバーなどのソフトウェアの購入費、システム開発費など
システムを運用するためにはコンピューターやサーバーは必須となります。
システムを利用するための運用費、システムが正常に稼働できるためのメンテナンスやウイルス対策などの保守コスト、管理を委託するならば管理費も必要です。
システムの内容によって保守運用コストは大きく変わってくるため長期的に使用するシステムであればあるほどランニングコストは無視できません。
委託するときには一定期間ごとの費用の見直しがトータルコスト削減に大きくつながります。
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イニシャルコストとランニングコストの利益の算出方法
イニシャルコストとランニングコストの算出方法について、具体例を使って解説します。
具体例:新しい工場を建設する場合
新しい工場を建設する場合での、イニシヤルコスト、ランニングコストを算出してみましょう。
イニシャルコスト
イニシャルコストは、事業やプロジェクトを開始するために最初にかかる費用ですので、新しい工場を建設する場合の、イニシヤルコストは、以下のようなものが挙げられます。
- 土地の購入費用 ¥50,000,000
- 建物の建設費用 ¥100,000,000
- 設備の購入費用 ¥30,000,000
この場合のイニシャルコストは、以下のように計算できます。
イニシャルコスト=土地の購入費用+建物の建設費用+設備の購入費用+設計費用
イニシャルコスト=50,000,000+100,000,000+30,000,000+5,000,000=185,000,000
この工場を建設するためのイニシャルコストは ¥185,000,000 となります。
ランニングコスト
工場の運営にかかるランニングコストについて考えてみましょう。
- スタッフの給与 月額 ¥5,000,000(年間 ¥60,000,000)
- 光熱費(電気・水道など) 年間 ¥3,000,000
- メンテナンス費用 年間 ¥2,000,000
- 原材料費 年間 ¥30,000,000
この場合のランニングコストは、以下のように計算できます。
ランニングコスト=スタッフの給与+光熱費+メンテナンス費用+原材料費
ランニングコスト=60,000,000+3,000,000+2,000,000+30,000,000=95,000,000
したがって、工場の年間ランニングコストは ¥95,000,000 となります。
利益
利益を計算するには、売上とコスト(イニシャルコスト、ランニングコスト)を考慮する必要があります。利益は、売上からコストを引いたものになります。
先ほどの具体例で利益についても計算してみましょう。
利益を算出するための基本的な式は以下の通りです
利益=売上−(イニシャルコスト+ランニングコスト)
利益には、粗利益と営業利益などいくつかの種類がありますが、ここでは営業利益を例にとって解説します。
営業利益は、主に事業運営に関連するコストを引いた後の利益を指します。
工場は製品を生産し、販売して利益を得る事業です。年間の売上を仮定します。
- 年間売上 ¥200,000,000
前述で計算しました、イニシャルコストとランニングコストを用います。
- イニシャルコスト ¥185,000,000(これは一度きりの費用)
- ランニングコスト(年間) ¥95,000,000
営業利益の計算
営業利益は、売上からランニングコストを引いた後に、イニシャルコストを考慮します。
年間の営業利益=売上−ランニングコスト
年間の営業利益=200,000,000−95,000,000=105,000,000
営業利益は、¥105,000,00となります。
イニシャルコストの回収
イニシャルコストは一度きりの費用ですので、初年度の営業利益からイニシャルコストを回収します。
イニシャルコストを回収するには、何年かかるかを計算することができます。
初年度の営業利益が ¥105,000,000 なので、イニシャルコストの回収年数は以下のように計算します。
回収年数=イニシャルコスト÷年間営業利益
回収年数=185,000,000÷105,000,000=約1.76年
この工場では、イニシャルコスト(¥185,000,000)を約1.76年で回収できることがわかります。
2年目以降の利益
2年目以降は、イニシャルコストが回収されているため、ランニングコストだけを差し引いた営業利益が利益となります。
2年目以降の営業利益 =売上(¥200,000,000) – ランニングコスト(¥95,000,000)
2年目以降の営業利益 =¥105,000,000
したがって、2年目以降の純粋な利益は年間 ¥105,000,000 となります。
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まとめ
ランニングコスト・イニシャルコストについて解説しましたが、理解が深められましたか?
建物や備品など高額なものを購入する際にどうしてもイニシャルコストが気になってしまいますが、長期的な目で見るとトータルの費用のうち、ランニングコストが大きな割合を占めていることも多いです。
ランニングコストとイニシャルコストの意味をしっかり理解して、トータルの費用であるライフサイクルコストを抑えられるようにしましょう。
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