近年、日本では猛暑日が増加しており、35℃を超える日も珍しくなくなっています。
さらに、世界各地では気候変動による自然災害の激甚化や資源問題などが深刻化しており、持続可能な社会の実現が重要なテーマとなっています。
こうした背景から、企業経営においてもESG(環境・社会・ガバナンス)の考え方が重視されるようになりました。
特に建設業界では、脱炭素対応や働き方改革、安全管理などの観点からESGへの取り組みが求められています。
本記事では、ESGとは何か、注目される背景、建設業がESG経営に取り組むメリットについて、2026年時点の情報をもとにわかりやすく解説します。
ESGとは

環境と社会、ガバナンスを英語にした時の頭文字を取ったものがESGです。
日本人が初めてこの言葉を見ても、しっかりとした意味まではよくわからない方も多いかもしれません。
今後の地球環境なども踏まえて国や企業が成長するためには、環境と社会、ガバナンスが大切だと言われています。
自国や自社だけの利益を追求するのではなく、ESGの観点で貢献することも重要だと認識されています。
ESGの必要性
世界の中で環境としては公害問題や地球温暖化現象、社会では人権問題や労働問題、ガバナンスでは企業統治の問題などが課題です。
投資先として、これらの取り組みに力を入れている企業を重視することも必要だとも言われています。
今後の世界のためにESGへ積極的に取り組むことで、消費者や投資家からの支持が増え、投資面や販売などで有利になってくるでしょう。
現時点の企業としての売上や財務状況だけでは見えてこない企業価値が、ESGを通してわかってきます。
近年では、企業の財務情報だけでなく、脱炭素への取り組みや人的資本経営、コンプライアンス体制などの非財務情報も重視されるようになっています。
日本でもTCFD提言への対応やサステナビリティ情報開示の強化が進んでおり、ESGへの対応は企業価値に直結する重要な要素となっています。
ESGの3要素
ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素から成り立っています。
ここからは、この3つについて詳しく解説していきます。
環境(Environment)
二酸化炭素(CO2)の排出量削減や省エネルギー化、廃棄物削減など、環境負荷を低減する取り組みが環境(Environment)の要素に含まれます。
近年では、再生可能エネルギーの活用やカーボンニュートラルへの対応、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)など、建設業界でも脱炭素に向けた取り組みが重要視されています。
社会(Social)
社会(Social)には、労働環境の改善やダイバーシティ推進、人権尊重、安全管理などが含まれます。
建設業では、長時間労働の是正や担い手不足対策、多様な人材が働きやすい環境づくりが重要視されています。
ほかにも、児童労働問題なども社会の要素に入ります。
ガバナンス(Governance)
ガバナンス(Governance)は、企業統治や法令遵守、情報セキュリティ、リスク管理などを指します。
近年では、コンプライアンス強化に加えて、サイバーセキュリティ対策や内部統制の強化も重要なテーマとなっています。
SDGsとの違い
似た言葉にSDGsがあり、ESGと何かが違うのかピンとこない方も多いのではないでしょうか。
SDGsは、企業など関係なく国や地方団体なども皆が取り組む持続可能な目標になります。
対してESGは、企業として貢献して取り組む目標です。
企業が顧客や株主、地域などへ配慮しましょうと考えられているもので、行動することで長期的な成長にもつながるとされています。
ただ、両者には違いがあるものの、ESGを達成していけば同時にSDGsの達成につながっていくため、まったく関係のないもの同士ではありません。
SRIとの違い
ESGに似た言葉にSRIがありますが、意味は異なります。
社会や環境、ガバナンスの意味を持っているESGに対して、SRIは倫理の意味を持ちます。
SRIは、経済状況とは関係のない面で、社会的倫理的な価値観を見て投資先を選んで投資するため、金銭面の利益はありません。
社会企業への応援や期待を込めて投資させたものを指します。
ESG投資の場合は、社会と環境への取り組みを行うことで、結果的に企業としての利益を生むため、まったく何もないわけではありません。
金銭面的な利益の部分で、意味合いが違ってきます。
環境問題、企業のリスク管理に関する記事はこちら
ESGが注目される背景
ESGが注目されている背景には、気候変動問題の深刻化や、持続可能な社会への転換が世界的に求められていることがあります。
さらに、投資家や金融機関も企業のESGへの取り組みを重視するようになり、非財務情報を含めて企業価値を判断する流れが強まっています。
日本でも、カーボンニュートラルの推進や人的資本開示の義務化など、ESGに関連する制度整備が進んでいます。
そのため、ESGへの対応は大企業だけでなく、中小企業や建設業界においても重要性が高まっています。
自社の利益ばかりを考えた活動をしてしまうと、今は企業としてやっていけても社会への悪影響があれば長く成長することは困難です。
投資する側も、企業として環境や社会に貢献しているのかどうかを見て決めています。
今後も投資を獲得するためには、ESGの取り組みが大切です。
実際2006年に国連で責任投資原則を発表していますが、世界の機関投資家も関わっているためESGは重視されています。
ESG投資とは
ESG投資とは、環境や社会、ガバナンスの観点から企業を評価して投資を行うことです。
近年ではESGの観点で企業を評価して分析を行うESG投資手法が取り入れられていて、しっかりと貢献している企業が投資を受けやすくなっています。
ESG投資の種類
環境や社会、ガバナンスの観点で分類すると、その種類は7つに分かれます。
ここからは、ESG投資の種類について詳しくご紹介していきます。
ネガティブ・スクリーニング
たばこやギャンブル、武器、化石燃料関連など、社会や環境に大きな負荷を与えると考えられる業種を投資対象から除外する方法です。
最近では地球の環境を破壊する企業なども排除の対象になっています。
古くからある手法で、今でも投資の一つの方法として使用されています。
ポジティブ・スクリーニング
環境や社会、ガバナンスの観点から見ても評価が高い企業に投資をすることを、ポジティブ・スクリーニングと言います。
始まりは1990年に欧州で行われた手法で、ESG評価が高いのであれば今だけでなく長期的に高い業績も見込めると投資されやすくなるのです。
テーマごとに基準が設置されていて、スコアが高いものがポジティブ・スクリーニングに選ばれます。
国際規範スクリーニング
国際規範を参考にしながら、基準を達していない企業は投資対象から外す方法です。
歴史としてはまだ新しい方法で、さまざまな定めるルールがあります。
投資家が選んだ規範ごとにスコアを出していき、総合的に達していない企業を投資から排除するパターンもあります。
ESGインテグレーション
これまでの財務情報だけでなく、一緒にESGの情報も加えて判断していく方法です。
最近の投資家には、この方法が広く使われています。
長期的に資金を運用する場合にも、財務情報と一緒にESGの情報もチェックする方法が利用されています。
判断基準は明確に決まっていないため、投資家の考えが基準です。
エンゲージメント・議決権行使型
投資家たちとの関わりが重要になる方法です。
株主としての立場から企業のESGへ働きかけます。
投資先企業と意見が合わないこともあり、委任状争奪戦に発展することもあることから、昔はあまり良い方法とはみなされていませんでした。
しかし、最近では株主の責任として行使することも求められるようになり、使われるようになってきました。
エンゲージメントに関する記事はこちら
インパクト投資型
比較的小さめの企業への投資方法で、社会や環境に対する技術などを提供する企業を応援しようと投資先に選ぶ方法でもあります。
財務よりも社会や環境へいかに貢献しているのかに注目される場合と、財務も同じくらい見られるパターンがあります。
サステナビリティ・テーマ投資型
地球の環境に貢献したいと、サステナビリティに力を入れている企業に投資する方法です。
再生可能エネルギーや持続可能な農業などのプロジェクトへ投資します。
サステナビリティに関する記事はこちら
建築業がESG経営に取り組むメリット
建築業がESG経営に取り組むと、どんなメリットがあるのか気になっている企業も多いのではないでしょうか。
ここからは、メリットについていくつかご紹介していきます。
企業イメージの向上
ESG経営に取り組めば、積極的に環境や社会に貢献していると捉えられて企業のイメージが向上します。
何も取り組みをしていない企業と比べた時、しっかりと環境などにも貢献しているからと投資先に選ばれやすくなります。
財務状況も安定しやすくなるでしょう。
人手不足の解消
外国人の雇用をはじめ、女性や高齢者などさまざまな多様な人材を受け入れられるように推進していけば、人手不足も解消できます。
さらに、ESGの取り組みで皆が働きやすくなり、大切な従業員が長く働いてくれるようにもなります。
生産性向上
紙資源を削減する取り組みを行うのもESGの中に入りますが、しっかりと企業として取り組めば生産性の向上にもつながります。
ダイバーシティの取り組みも行えば、働きやすくなりパフォーマンス性も上がります。
受注・取引面で有利になる
近年では、大手ゼネコンや公共工事においても、環境配慮やコンプライアンス体制を重視する動きが強まっています。
そのため、ESGへの取り組みを進めることで、取引先からの信頼向上や受注機会の拡大につながる可能性があります。
労働者の問題に関する記事はこちら
建築業がESG経営を導入するためのステップ
ESG経営を導入するためには、ステップがあります。
ここからは、どのように導入していけば良いのか、手順について解説していきます。
ステップ1 ESG課題と自社の関連性を整理する
自社で目標としていること、理念やビジョンとマッチするESGの課題を整理しましょう。
取り巻く環境を分析し、課題リストなども作成すると整理しやくなります。
ステップ2 経営者・実務担当者の役割を明確にする
おおまかにではなく、経営者と実務担当者は何をすべきか役割を全うすることが重要です。
取締役はESG課題への取り組みを監督し、モニタリングすることも重要です。
ステップ3 目標値を設定し、達成までの取り組みを決める
具体的な目標値の指標を決めて、達成までのロードマップを決めていきます。
バックキャスティングでロードマップを描き、実際に取り組んでいきます。
ステップ4 結果を測定する
PDCAサイクルを回しながら取り組みを行い、課題がある場合はその都度見直し結果も測定していきます。
ステップ5 ESGレポートを作成し、開示する
投資家や取引先に取り組み内容を適切に伝えるために、ESGレポートや統合報告書、サステナビリティレポートなどを作成・開示します。
具体的な数値や取り組み内容を明確に示すことで、企業価値向上や信頼獲得につながります。
ESGに関するよくある質問
- SDGsとESGの違いは何ですか?
-
SDGsは、国連が定めた持続可能な社会を実現するための国際目標です。
一方でESGは、企業が環境・社会・ガバナンスの観点から経営を行う考え方を指します。ESGに取り組むことで、結果的にSDGsの達成にもつながります。
- 建設業でもESG対応は必要ですか?
-
はい、近年では建設業でもESG対応の重要性が高まっています。
特に建設業界では、以下のような課題とESGが深く関係しています。
- 脱炭素・省エネ対応
- 働き方改革
- 安全管理
- 人手不足対策
- コンプライアンス強化
取引先や投資家からESGへの取り組みを求められるケースも増えています。
- 中小企業でもESGに取り組む必要がありますか?
-
はい、大企業だけでなく中小企業にもESGへの対応が求められる時代になっています。
近年では、元請企業や取引先から環境配慮やコンプライアンス体制について確認されるケースも増えています。
そのため、できる範囲から少しずつ取り組むことが重要です。 - 建設業で取り組みやすいESG施策には何がありますか?
-
建設業では、以下のような取り組みが始めやすい施策です。
- ペーパーレス化
- 業務管理システムの導入
- 残業時間の削減
- 安全教育の強化
- 女性・高齢者が働きやすい環境整備
- 省エネ設備の導入
まずは、自社の課題に合った取り組みから進めることが大切です。
建築業向け管理システム「アイピア」
アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。
さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。
アイピアはここが便利!6つのポイント
まとめ
ESGは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの観点から企業価値を高める重要な考え方です。
近年では、投資家だけでなく取引先や求職者からもESGへの取り組みが重視されています。
特に建設業界では、脱炭素対応や働き方改革、安全管理、人材確保など、ESGと関わる課題が数多く存在します。
企業の持続的な成長のためにも、できることからESG経営に取り組んでいきましょう。
経営指標に関連する記事はこちら
- 【建築業】経営指標とは?経営分析に役立つ指標をご紹介!
- 貸借対照表とは?資産、負債、純資産に分けて解説!
- 自己資本比率とは? 図で簡単解説。会社の安全性を把握しよう
- 損益分岐点とは?建築業で具体例をご紹介
- 限界利益、限界利益率、損益分岐点の意味と計算方法
- キャッシュフロー計算書とは?基礎知識から目的まで簡単に解説
- 労働配分率とは?重要な粗利(付加価値)についても解説
- 粗利(粗利益)とは? 計算方法や重要性について解説!
経営者なら知っておくべき用語に関する記事はこちら
“社内のデータを一元管理”工務店・リフォーム会社が選ぶ!









