昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が流行しています。
働き方改革を皮切りとする生産性向上を求められる流れが、新型コロナウィルス感染症に関わる諸状況から更に加速していると言える状況です。
この流れは建設業界でも同様です。
新型コロナウィルスの問題が表層化する以前から、2024年4月以降に建設業にも適用される「時間外労働の上限規制」などの諸状況に対応できる働き方が求められており、業務生産性を高めることは必須であると言えるでしょう。
そんな折、自社でも生産性を高めよう、新しい取組を行おうという想いから「DX」への関心が高まっています。
ただし注意し、「DXを実施しよう」と考える組織のDXは悉く失敗します。
大切なのは、何を変えたいのかを明確にして、それに合わせた方法で問題を解決することです。
それでは、DXとは何なのか、建設業界でのDX成功ポイントを見ていきましょう。
目次
そもそも「DX」とは何なのか
DX(デジタルトランフォーメーション)は、スウェーデンの大学教授エリック・シトルターマン氏が初めて提唱したものとされています。
DXの概要は、経済産業省が発表した「DX推進ガイドライン」によって以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
参照元:DX 推進ガイドライン(経済産業省)
つまり、DXというのは、ITの活用を通じてビジネスモデルや組織を変革させることという意味です。
流行の発祥は欧米、シリコンバレー企業から
はじめにDXが注目を受けたのは、欧米でシリコンバレー企業が注目された時でした。
シリコンバレーはApple、Google、Facebook、Intelなど多くの先端IT企業が拠点を置き、今なお起業志望者などが集まる地域です。
シリコンバレーのスタートアップ企業のような高い生産性を手に入れるのはどうすればいいか?を欧米の諸企業が注目し始めたのがDX流行の発祥です。
例えば、シリコンバレー企業が「規律」を大切にするのは有名な話です。デザイン思考や在り方の理想を具体的な規律して設定し、それを守ることで誰でも高生産的に働ける環境を作ることに注力しています。
- ブレインストーミングのやり方
- アイデアのまとめ方
- メモの取り方
- プログラミングの手法
- コンテンツを利用するユーザーとの接し方
また、これらはいわゆる「マニュアル」として機能するものではなく、社員ひとりひとりの考え方に米国的なプラグマティズムを強く浸透させる目的があります。
プラグマティズムは実用主義、実際主義とも訳される考え方で、常に問題に向き合い改善を繰り返すプロセスを重要視する考え方です。
スピード感ある改善・行動を行うためにシステム開発に関する知識や開発組織の内製化、低コスト・短期間で製品開発を行い顧客の声に応じて改善する「リーンスタートアップ方式」を採用する等の方法を取ります。
ただしそれらは手段であって、目的はあくまでプラグマティズムに基づく考え方の徹底なのです。
これらの考え方に基づくシリコンバレーのスタートアップ企業のようなやり方で高生産性を手にし、製品の開発や提供ができる環境をつくることが流行当初のDXの意味でした。
経産省の「DXレポート」で誤解が生じる
経済産業省が2018年に発表した研究会資料「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開」で、日本国内にもDXという言葉が持ち込まれました。
このとき、当初謳われていたDXの意味は大きく変わってしまうことになります。
経産省はこのレポートの中で、DXを紹介するとともに「失われた20年」「2025年の崖」など日本国におけるIT投資不足に関する問題提起が強く行います。
【失われた20年とは】
バブル崩壊後の1990年代初頭から2010年代初頭まで、およそ20年間に渡る日本経済の低迷を指す通称。DXレポートでは、この期間に「IT投資が抑制されていた」という文脈で説明される。【2025年の崖とは】
日本国内におけるシステム運用の状況への問題提起。
ずいぶん前に導入し老朽化・複雑化・ブラックボックス化した古いシステムの運用を続けている場合、IT人材の引退やシステムのサポート終了等が発生し、2025年以降には年間最大12兆円の経済喪失が発生する可能性があるというもの。
参照元:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」
DXとIT投資が重ねて提起された結果、「古いシステムを新しくすることがDXである」という誤解が発生することになりました。
生まれた誤解をシステムベンダーが更に複雑化
誤解とはいえ「古いシステムを新しくすることがDXである」と受け取れる提唱がされたことは、ITツールを販売するベンダーにとって追い風となります。
ちょうどその頃は働き方改革などと関連してAIやIoTなどの、これまた”言葉の意味が曖昧な概念”が流行していたこともあり、「自社製品を導入することがDX」というセールスアピールがしやすい状況が生まれました。
その結果、以下のような謳い文句が次々現れることになります。
- 「〇〇管理システムを導入して自社をDX化しよう」
- 「AI導入でDX」
- 「RPAの導入でオフィスワークをDX」
一方、誤解を生じさせた経済産業省も「DXを検討中の方へ」と称してITツールが導入できる補助金(IT導入補助金)を告知する等、システム導入にのみ注目することへのほぼ確信犯的な動きもありDX=システム導入の構図で理解してしまうケースもあとを絶ちません。
なぜ今建設業界でDXが注目されている?
2019年から世界中へ拡大した新型コロナウイルスの影響で、あらゆる業界においてリモートワークやオンライン会議の導入が進み、IT環境を整備せざるを得ない環境になりました。
DX化で唱えられている、ビジネスモデルの変革が今起きているのです。
これに加え、建設業界では、高まる需要の半面、人手不足やIT化の遅れなどが課題となり、業務効率化が難しいのが現状です。
さらに、労働環境が悪いことなどを理由に、若者離れも進んでいます。
建築業の人手不足は年々加速しており、これを解決するには、少ない人数で効率よく事業を維持・成長させていくことが鍵となります。
このようなことから、働き方、ビジネスモデルを変化させるために、建設業界でもDXを取り入れること、つまりIT技術の活用などが注目されているのです。
国内の建設業におけるDXの進行状況
建設業のDXはどの程度進んでいるのでしょうか?
2020年4月にIDCが実施した「国内CIO調査2020」によると、DX進行状況を産業分野別に見た結果、「金融」が一番進んでいることが分かります。
2番手は「建築/土木」という結果が出ました。
建設業界でのDXは、製造業や流通業などと比較すると進んでいる産業だといえます。
これには、国推進した「i-Construction」が影響していると考えられます。
「i-Construction」については、下記の記事で詳しく解説しているのでそちらも見てみてください。
他産業よりもDXが進んでいるとはいえ、建設業の課題はまだまだ残っています。
今後もDXの取り組みを続け、広げていく必要があります。
建設業が取り組めるDXの具体的な方法としては、下記のような事例があります。
- 基幹システムのクラウド化
- 事務所と現場で使えるコミュニケーションツール
- 遠隔から監督業務が可能になるウェアラブルカメラ
i-Constructionについてはこちら
結局「DX」化するにはどうすればいいのか
以上の経緯から、DXという言葉は複数の意味を持つ言葉を持ってしまいました。
もはや「DX」という言葉は、それ単体では何も伝わらない抽象的な単語です。
まずは「DX」という言葉を使うのをやめる
「DX化したい」という言葉は、「具体的には何をしたらいいか分からないけど何か新しいことをしたい」と言っているのと同じになります。
それでは新しいことをするという手段が先行してしまい、肝心の目的が無いため効果を評価することが出来ません。
それこそ、「なんとなく新しそうなITツール」を導入して終わりになってしまいます。
DXという抽象的な言葉を捨て、より具体的な言葉を用いて改善に取り組みましょう。
自分が「なにをしたいのか」を明確化する
- 部署間の情報のやり取りに未だ紙資料での提供を続けていて資料作成や共有作業に時間がかかったりしている。この時間を短縮したい。
- 現場での業務が終わったあと見積作成や日報作成を行うために事務所に戻らなければならない。事務所に戻らなくても対応できるようにして早めに社員を帰したい。
- 事務作業などの一部業務を在宅・テレワークでも実施できるようにしたい。
上記は建設業・建築業界でありがちな悩みですが、これらのように「何に困っていて」「どうしたいのか」を具体的にすることで、更に考えるべき「どんな手段で解決するか」を検討することができます。
業務改善にITツールに関する記事はこちら
建設業における改善事例
先ほど紹介した3つの例は、ITツールを使って解決できる課題です。
部署間や担当者間で情報のやり取りをするのに時間がかかる原因は、情報をまとめる環境が不完全だからです。
資料を各自がエクセルや紙帳票で作成・保管していると、共有に時間がかかるばかりか、担当者が不在だと資料そのものが手に入らないかもしれません。
これらを解決するために、業務をまとめて管理できるシステムを導入します。
施工管理の業務改善はこちら
建設DXの導入を成功させるために必要なデジタル技術とは?
では実際に、建設DX導入の鍵となるデジタル記述はどのようなものがあるのでしょうか。
3点ご紹介します。
クラウドサービス
クラウドサービスは、インターネットさえあればスマホやタブレットからも利用できるサービスです。
クラウドのサービスを使うことにより社内での情報の共有がしやすくなります。
例えば、建築業向けの業務管理システムを使うと、クラウド上で業務を一元管理でき、いままで手作業でやっていたものがすべてシステム上でできるため、時間の効率化とコスト削減が実現します。
AI(人工知能)
AIは、人間のように情報処理ができるデジタル技術です。
これを建設に応用し、現場の画像をAIを分析して工事の進捗状況がわかるシステムなどがあります。
また、重機の自動操作、コントロールができるシステムも開発されています。
ICT(情報通信技術)
ICTは、パソコンやタブレットを活用し、人とインターネットをつなげる技術のことです。
建設業界では、遠隔操作で機会を動かす技術や、ドローンで撮影した画像から3次元測量データ化できる技術があります。
これにより、今まで人の手では作業を行えなかった場所での工事も可能になります。
建築業向け顧客管理システム・見積ソフトはこちら
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建設DX導入の成功ポイントとは
建設DX導入を成功させるにはいくつかのポイントがあります。
現場でのギャップをなくす
建設DXを導入、実行するにあたって、現場できちんと受け入れてもらうことが大切です。
特に、年配の職人さんやITに対して苦手意識を持っている人がいるのに、いきなり体制が変わると、戸惑いやトラブルが起きてしまいます。
建設DXは現場も含め全体で取り組むことなので、導入する際には理由や方法を説明し、納得してもらってから進めましょう。
2024年までに働き方改革実現
2024年4月からは、労働基準法改正の内容である「時間外労働の上限」が建設業にも適用されます。
建設業の特殊な業務内容から期間に猶予が与えられていましたが、建設業も労働時間の上限をきちんと管理しなくてはいけなくなります。
この内容を守らなかった場合は、罰則などもあることから、2024年までに建設DXを取り入れ、ワークスタイルを変えていく必要があります。
建設DXには複数のデジタル技術が必要
建設DXは、ひとつのデジタル技術を導入しただけでは成功といえません。
最先端の技術を複数導入し、全体的に変えていく必要があります。
DXを進めたい業務を優先して、それに適したシステムや技術を取り入れましょう。
働き方改革に関する記事はこちら
まとめ
DXという言葉は、上述した通り主張する人の立場によって様々な意味を含みます。
DXという言葉に惑わされず、自社の課題に向き合い整理することに注力しましょう。
そして、その課題を解決するために合ったものを導入することが大切です。
IT技術の導入などに戸惑いがある方は、サポオート体制が充実したものを選ぶとよいかもしれません。
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