建設業では黒字倒産するケースが他業種に比べても多いと言われています。
黒字倒産とは黒字でありながら倒産するという相反する事態が同時に起こることです。
黒字倒産はなぜ起こるのか、その要因や建設業で起こりやすい理由を解説していきます。
そのうえで、黒字倒産を未然に防ぐ方法も確認していきましょう。
黒字倒産とは
一般的な倒産は、赤字、つまり債務超過となって倒産するケースです。
これに対して、黒字倒産は読んで字のごとく、黒字でありながら倒産してしまうことです。
儲かっているのに倒産するとは、一体どういうことなのでしょうか。
黒字倒産の意味と要因を見ていきましょう。
黒字倒産の意味
黒字倒産とは売上が伸び、帳簿上は利益が出ているのに、現金が不足し、支払いが困難になって倒産することを意味します。
支払うべきお金より、売上高のほうが大きく、計算上は利益が出ています。
ですが、キャッシュフローが追い付いていない状態です。
主な要因
「うちは現金でしか取引しない」という業者も存在しています。この経営手法はとても堅実で、守りが堅い方法です。
商品やサービスを必ず対価と交換することで、黒字倒産を回避することができるためです。
確かに現金取引は会社を維持するうえで確実な方法ですが、それでは取引の幅が限られてしまうデメリットもあります。
その為、多くの業者は十分な資金がなく、まずは掛けで仕入れて、それを売ることで資金を回収し、支払いをしようと思っているためです。
業者間取引では売掛金取引が多く、売上が上がっても、代金の支払いを受けられるのは、数ヶ月後というケースも少なくありません。
ですが、その間にも事務所の維持費や人件費、仕入代金の支払いや融資の返済などがやってきます。
売上代金回収のタイミングと、自社の支払いのタイミングに差が生じることから、資金ショートを起こし、倒産してしまうことがあるのです。
建設業で黒字倒産が多発するのはなぜ?
建設業では、他業種に比べても黒字倒産が多発する傾向が見られます。
それはなぜでしょうか。
工事完了前にかかる経費の多さ
黒字倒産を回避するために、現金取引をすればいいと思われますが、建設業ではそうはいきません。
なぜなら、建設業では現金問屋のように売買契約ではなく、請負契約を締結して工事を提供するためです。
請負契約では仕事の完成が報酬の発生とリンクするため、建物を希望通りに完成させない限りは報酬を受け取ることができません。
建設請負契約は高額な代金となることが多いので、契約を担保するために内金などを受領する場合もあります。
ですが、これはあくまでも約束を守る意思を表すためのもので、支払いの一部ではありません。
建築途中に自然災害などで、工事途中の建物が滅失した場合、契約条項によっては建設会社がそれまでかかった費用を全額負担した上で、再建築する必要があります。
こうした事態が起こらなくても、建物完成までには多くの資材や燃料費や光熱費、人件費などがかかります。
支払いを受けるまでに高額な経費がかかるため、自社の支払いを行う現金が不足すると、売上代金を受け取る前に倒産するおそれがあるのです。
予算と実績の差異が大きい
工事を行うにあたっては、あらかじめ見積もりを出し、その内容で契約を行います。
原材料費や燃料費、光熱費や人件費など、工事にあたってかかる予算を見積もるわけですが、実際の工事にかかる費用と差が生じることが良くあります。
特に建設工事は長期に及びます。
予算を立てた段階と工事の着工までの間にも、長い期間が必要な場合や施工期間が半年から数年にわたることも多いです。
期間が長くなるほど、政治情勢や経済変動が起こり、仕入価格が上昇することや燃料費などが高騰してしまうリスクが高まります。
いかに慎重に予算を算出し、ある程度リスクを見越して余裕を持たせたとしても、予期せぬコスト上昇は反映しきれません。
また、ゆとりを持たせたくても、価格が高すぎると受注がもらえないため、他社との競争からも、ギリギリの予算で見積もることも多いのも問題です。
予算と実績の差異が大きくなり、利益の幅が減少してしまうおそれがあります。
黒字倒産を回避する方法
黒字倒産を回避する方法は、まずは自社の入出金状況を把握することです。
そのうえで、キャッシュフローがプラスになるような方法をとることが求められます。
黒字倒産を回避する方法として、ファクタリング、銀行からの融資、先を見越した資金繰り計画、的確な実行予算と現場管理の4つの方法をご紹介します。
ファクタリング
黒字倒産が多いのは、売掛金が多いことが一つの要因でした。
ファクタリングとは、この売掛金を支払期日が来る前に、ファクタリング会社に買い取ってもらい、資金を先に回収できる方法です。
もっとも、売掛金全額を丸々回収できるわけではありません。
買い取りしてもらう手数料を払う必要があり、その金額分少なくなります。
とはいえ、手元に現金がなくて黒字倒産するリスクがあるなら、手数料を払っても早期に現金化するメリットがあります。
銀行からの融資
2つ目の方法は、銀行からの融資を受けて資金を準備する方法です。
ただし、銀行融資を受けるには審査に通らなくてはなりません。
帳簿上は黒字で、売上も伸びていれば、融資を受けられる可能性もあります。
一方、すでにほかの銀行の返済や法人カードの代金支払いなどを滞納するような事態に陥っていると、審査が通らず融資を受けられないおそれもあります。
銀行融資を受けたいなら、売上が上がり、成長軌道に乗っている段階で相談するほうが得策です。
今後の事業計画も綿密に立てたうえでプレゼンしましょう。
先を見越した資金繰り計画
黒字倒産を回避するには、まずは自社のキャッシュフローの状況を把握し、キャッシュフローがプラスになるように対策を講じなくてはなりません。
そのためには、先を見越した資金繰り計画を立てることが必要です。
売掛金や買掛金を踏まえた営業収支の作成、金融機関への返済を正しく把握する財務収支の作成、1年先までを見越した業績予測と、それに連動した資金繰り表を作成しましょう。
先を見越した資金繰り計画をもとに対策を整えます。
的確な実行予算と現場管理
建設業で黒字倒産が多いのは、予算と実績の差異が大きいことが一つの要因でした。
そうならないように、的確な実行予算と現場管理を行うことが大切です。
原材料費や人件費、燃料代などを客観的なデータなどをもとに算出し、赤字工事になるような価格の値下げはしないようにすることが必要です。
そのうえで、予算通りに工事が進捗していくよう、現場管理も徹底しましょう。
仕入価格を予算内に抑えることも大切ですが、現場で無駄に原材料を浪費することや業務が滞って人件費が上乗せされるようなことがないよう、適切に現場管理を行います。
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まとめ
黒字倒産とは帳簿上は利益が出ているのに、支払いに必要な資金が底をつくことで倒産してしまうことを言います。
主な要因は売掛金取引が多く、売上が出た時期と実際の資金回収の時期の差が大きいことです。
中でも、建設業で黒字倒産が多発するのは、工事完了前にかかる経費の多さや予算と実績の差異が大きいことが主な要因です。
黒字倒産を回避する方法として、ファクタリング、銀行からの融資、先を見越した資金繰り計画、的確な実行予算と現場管理が大切になります。
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