【建築業】工事原価の労務費とは?人件費との違いや算出方法を解説!

【建築業】工事原価の労務費とは?人件費との違いや算出方法を解説!

工事をするにあたっては多額のお金がかかります。
それらをうまく配分しながら工事を進めるのが、会社の仕事と言えるでしょう。

配分すべきコストにはいろいろとありますが、その中の一つに「労務費」というものがあります。
今回は、この労務費がなんなのかを説明していきます。

工事原価の労務費とは?

工事現場において「人件費」という言葉はあまり使いません。
代わりに労務費という言葉がよく使われます。

まずは工事原価とはなんなのかを説明したうえで、労務費について確認していきましょう。

工事原価とは

工事原価とは、平たく言えば工事にかかったすべてのお金を指します。

工事をするにあたっては、材料を調達するコストや人員を配備するコストなどさまざまなお金がかかります。
工事原価とはそれらの総称です。

労務費とは

労務費とは、建設に携わった人々に払うお金のことです。
工事現場ではさまざまな人が働いています。
足場を組み立てる人や重機を動かす人、建材を加工する人などが縦横無尽に入り乱れるものです。

当然ながら、こうした人々にはしっかりとした報酬を用意しなければいけません。
これらの人に払ったお金はすべて労務費として扱われます。

人件費との違い

建設業界以外においては、こうした人材に使われたお金は一括して人件費と呼ばれることが多いです。
では、労務費と人件費にはどのような違いがあるのでしょうか。

まず押さえておきたいのは、労務費は人件費の一部だということです。
建設会社で働くのは職人ばかりではありません。
人材をリクルートしてくる人事担当や、工事にかかったお金を管理する経理担当、職人たちのスケジュールを管理する事務などがいます。

このように、建設会社で働いている人に支払われたお金は人件費と呼ばれます。
一方で、工事現場で働いている人に支払われたお金は労務費です。

CHECK!

労務費と人件費を分ける理由

ちなみに、なぜわざわざこのように労務費と人件費を分けているのでしょうか。
それは、工事が基本的にほかの会社の発注によって行われるものだからです。
発注先としては、あくまでも工事にかかったお金だけを知りたいのであって、それ以外の費用は必要ありません。

つまり、工事現場以外でかかったお金は重要でなく、工事現場にかかった労務費だけが問題になってきます。
建設会社としては、しっかりと工事にかかったお金だけを伝えやすくするために労務費というものを設けています。

労務費の算出方法

労務費がなんなのかをイメージしやすくなったでしょうか。
ここからは、どのように労務費を算出したら良いのかを見ていきましょう。

労務費の内訳

人件費といっても、給料だけを算出すれば良いというものではありません。
従業員に支払うべきお金はそれ以外にもさまざまあります。

これと同じように、労務費も細かな項目を設けなければいけません。

賃金

労務費の中で最も重要なのが賃金です。
給料をどれだけ職人たちに払っているのかをしっかりと管理するようにしましょう。

もっとも、賃金は基本給だけに限りません。
残業手当や休日手当などもしっかりと算定するようにしましょう。

賞与

会社は、社員に定期的にボーナスを支払わなければいけません。
こういったボーナスは賞与のうちに含まれます。

そのほか、通勤手当や優れた功績をあげた社員に支払うものなども賞与として算定しましょう。

雑給

工事の規模が大きくなればなるほど、正社員だけでは賄いきれません。
アルバイトやパートなどの力を借りる必要が出てくるでしょう。

こういった社員以外に支払われる給与などは雑給としてカウントされます。

法定福利費

日本においては、企業は必ず社員の社会保険料や健康保険料の一部を負担しなければいけません。
この際にかかった負担料を法定福利費と呼びます。

法定福利費は、このほかにも労働保険料や厚生年金などさまざまな項目がありますので、一つひとつしっかりと算定するようにしましょう。

【記入例付き】法定福利費の見積書の書き方とは?計算法や注意点を解説

退職給付金

法定福利費とは違って、企業は必ずしも退職していった社員に給付金を支払う義務はありません。
もっとも、人材を集めるにあたって退職金はなくてはならないものでしょう。

企業を辞めてからも安心して暮らせるとわかれば、より良い人材が集まってきます。
こうした退職金は事前に積み立てておかなければいけませんが、こうした積立金も労務費に含まれます。

労務費の計算方法

ここまで、おおまかに労務費の内容を見てきました。
こうした労務費はさらに、直接労務費と間接労務費に分けられます。

分別の基準は細かく設定されているので、それぞれ詳しく見ていきましょう。

直接労務費

工事に直接関わるような仕事を行っている職人に対して支払う費用は、すべて直接労務費として扱われます。
例として、解体工事を見ていきましょう。

実際にビルなどを重機を使って解体していく人々に支払われるお金は直接労務費です。
重機をここに動かせと指令を出したり、解体の際に出た残骸をトラックに搬入したりする人に支払われるお金も直接労務費として扱われます。

間接労務費

間接労務費とは、実際に工事に携わっている職人以外に支払われるお金のことです。
たとえば、重機を搬入する際や出てきた残骸を別の場所に運ぶトラックを運転する人に支払われるお金は、間接労務費として扱われます。

そのほか、工事現場で働く人々に食事を出したり、現場を見て回って順調に工事がうまくいっているかを監督したりする人に対して支払われるお金は、間接労務費です。

工事原価における労務費の管理方法

先ほども見てきたように、労務費は人件費の中の一部です。
そのため、細かな管理が必要になってくる部門と言えるでしょう。

パソコンのツールなどを使ってしっかりと管理しなければ、ともすると計算ミスなどが起こりかねません。
ここからは、労務費をどのように管理すれば良いのかを見ていきます。

エクセルを使って労務費を管理することもできますが、効率的に管理するためには、工事台帳を活用する方法もおすすめです。
工事台帳は、工事ごとの進捗状況や支出項目を一元管理することができるため、労務費の把握にも役立ちます。
これにより、工事の進行状況に応じてリアルタイムで労務費の計算ができ、予算管理がよりスムーズに行えます。

しかし工事台帳の手書き作成は時間がかかり、情報の更新や集計も手間がかかるため、手動では限界があります。
そこで、効率的に作業を進めることができる工事台帳ソフトの導入検討をおすすめします。

エクセル

エクセルは、大半の業務用パソコンにインストールされている代表的な表計算ソフトです。
労務費に限らず、経理を行う際はエクセルを使って行っているという会社も多くいるでしょう。

エクセルの利点の一つに互換性の高さがあります。
一度作ったエクセルのファイルは、ほかのパソコンでも閲覧することができます。
会社で作った労務費のファイルを現場のパソコンで閲覧するといったことも可能です。

もっとも、エクセルは真っさらな状態で始めなければいけないので、テンプレートは一から作らなければいけません。
たとえば、労務費ならば直接労務費と間接労務費の項目を作り、その後賃金や賞与の項目を作って、といった具合に業務内容に合わせたテンプレートを逐一作る必要があります。

工事台帳とは?【無料DLあり】エクセルテンプレートとおすすめ3選を紹介

原価管理システム

かつてはエクセルなどを使って、各々の業界が自分の業態に合わせたテンプレートを作るのが一般的でした。
とはいえ、こうしたテンプレートをいちいち作らなければいけないのは手間です。
そうした手間を省くために、最近では業態に合わせた原価管理システムが普及しています。

原価管理システムのメリットは、なんといっても使い勝手の良さにあるでしょう。
あらかじめテンプレートが作られているので、どこにどんな数字を打ち込めば良いかがすぐわかります。
誰にでも簡単に使えるシステムですから、わざわざ専門の担当を充てる必要がなく、その分の労力をほかに回せるようになるでしょう。

最近ではパソコンだけでなくスマートフォンにも対応しているシステムが増えてきました。
会社のみならず、出先でも気軽に原価が管理できるため、業務効率化を実現できます。

また、建築業では、工事毎の細かい原価計算が必要となり見積管理、原価管理、積算等、個々の業務でかなりの時間を要します。
このような場合は、原価管理機能が備わった「建築見積ソフト」や「業務管理システム」を使用すると良いでしょう。
建築見積ソフト」や「業務管理システム」を使用することで、見積管理、原価管理、積算等の業務を流れで行うことができ、大幅な業務効率化につながります。

まとめ

工事現場にとって、人材はなくてはなりません。
こうした人材を引き留めるためには、うまく労務費を運用する必要があります。

どのくらいの労務費がかかるのか、どこに労務費をかけるべきなのか、といったことをしっかりと見極めながら運営していくようにしましょう。
原価管理システムや建築見積ソフトの活用もおすすめです。

また工事現場における労務費の適切な運用には、工事台帳での管理が非常に有効です。
工事台帳を使用することで、労務費を含む工事原価を簡便に管理でき、現場ごとのコストを一元化できます。
さらに、原価管理システムや建築見積ソフトと併用することで、見積から実際の工事管理まで、よりスムーズに業務を進めることができます。
効率的に作業を進めるためにも工事台帳ソフトの導入検討をおすすめします。

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