建設業では「売上はあるのに利益が残らない」と悩む経営者が少なくありません。
その原因を正しく把握するために欠かせない指標が「営業利益」です。
営業利益は、会社の本業でどれだけ稼げているかを示す重要な数値であり、売上総利益(粗利)との違いを理解することで、経営の課題や改善点が見えてきます。
本記事では、建設業における営業利益の基本的な意味から、売上総利益との違い、さらに利益率の目安や改善のポイントまでをわかりやすく解説します。
「利益構造を見直して健全な経営を実現したい」という方は、ぜひ参考にしてください。
営業利益とは?
営業利益とは、会社の本業(営業活動)によって得られた利益を示す指標です。
建設業でいえば、工事やリフォームなどの受注業務を通じて得た「本業の稼ぐ力」を表しています。
計算式
営業利益 = 売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費
つまり、売上総利益(粗利)から販売費および一般管理費を差し引いた金額が営業利益です。
販売費及び一般管理費の項目
- 人件費(給与や賞与など)
- オフィスや店舗の賃料
- 通信費
- 水道光熱費
- 接待交際費
- 広告宣伝費
- 保険料
- 交通費
- 消耗品費
建設業では、現場での原価だけでなく、管理部門の人件費や営業経費なども多く発生するため、営業利益を把握することで「経営全体で利益が出ているか」を判断できます。
営業としては、高粗利契約をしても、会社のマーケティング施策が間違っていたり、バックオフィス(事務所業務など)が非効率な働き方をしていると、せっかくの粗利が利益として残らない可能性があります。
つまり、「リフォームは高粗利だけ意識していれば良い」というわけではないので注意が必要です。
営業利益が重要な理由
営業利益は、単に黒字・赤字を示すだけでなく、本業の収益性や経営の健全性を測る重要な指標です。
たとえば一時的な補助金収入や資産売却益があっても、それは営業外の利益であり、継続的な成長にはつながりません。
営業利益が安定して黒字であれば、企業は本業でしっかり利益を生み出しているといえます。
建設業における営業利益の見方
建設業では、案件ごとに原価や工期が異なり、季節や景気によっても利益率が変動します。
そのため、月次・案件単位で営業利益率を把握することが重要です。
「売上が上がっているのに手元にお金が残らない」という場合、多くは営業利益が十分に確保できていないケースが見られます。
売上総利益(粗利)と営業利益の違いは?
建設業の経営数値を見るうえで混同されやすいのが、「売上総利益(粗利)」と「営業利益」です。
どちらも利益を示す指標ですが、算出の範囲と意味が大きく異なります。
売上総利益とは?
計算式
売上総利益(粗利) = 売上高 − 売上原価
売上総利益は、いわゆる「粗利」と呼ばれる利益です。
売上から原価を差し引いた価格から計算します。
例えばリフォームの現場で言えば、顧客から入金された金額が「売上」で、工事にかかる部材費や工事費が「売上原価」になります。
営業はこの売上総利益(粗利)を常に意識して粗利率の高い契約を確保することが、会社に利益を残す1番の貢献ポイントです。
逆に、いかに高い売り上げを上げていても売上原価が高くなってしまえば、粗利は確保できず、時間と労力だけを必要以上にかけることになってしまいます。
粗利率に関する記事はこちら
営業利益と売上総利益の違い
営業利益は、先ほど説明したように売上総利益から販売費や一般管理費(販管費)を差し引いたものです。
この販管費には、営業・事務・経理などの人件費、事務所家賃、広告費、通信費などが含まれます。
したがって営業利益は、売上総利益に対して会社全体として本業でどれだけ利益を残しているかを示す指標です。
つまり、売上総利益は「現場単位の稼ぎ」であり営業利益は「会社全体の稼ぐ力」であると言えます。
営業利益と売上総利益の違いまとめ
| 項目 | 売上総利益(粗利) | 営業利益 | 
|---|---|---|
| 意味 | 現場や案件ごとの直接的な利益 | 会社全体の本業による利益 | 
| 計算式 | 売上高 − 売上原価 | 売上総利益 − 販管費 | 
| 主な費用項目 | 材料費・外注費など現場コスト | 人件費・家賃・広告費など間接コスト | 
| 確認目的 | 工事・見積ごとの採算性確認 | 経営全体の収益性・体質の判断 | 
建設業での実務的な活用
- 売上総利益(粗利)は「現場の利益管理」に使う指標。
 → 現場別の採算を見て、見積精度や外注コストの妥当性を確認する。
- 営業利益は「経営の健康状態」を見る指標。
 → 販管費を含めて、会社全体で黒字経営ができているかを判断する。
現場ごとの粗利がしっかり確保されていても、販管費が膨らめば営業利益は赤字になります。
逆に、販管費を抑えすぎると営業体制が弱まり、売上の成長を妨げることもあります。
「粗利で稼ぎ、販管費で守る」バランスこそが建設業経営の要です。
粗利に関する記事はこちら
建築業における営業利益率の目安は?
建設業では、業種や規模によって利益率の水準が大きく異なります。
その中でも「営業利益率」は、本業でどれだけ効率的に利益を出しているかを示す指標です。
売上総利益率(粗利率)と合わせて見ることで、経営の健全性をより正確に把握できます。
計算式
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100(%)
たとえば、売上高が1億円で営業利益が500万円なら、営業利益率は5%となります。
この数値が高いほど「売上に対してどれだけ効率よく利益を出せているか」を示します。
建築業の平均的な営業利益率
建設業全体で見ると、営業利益率はおおむね3〜6%前後が平均とされています。
ただし、業態によって大きく異なるのが実情です。
| 業種区分 | 営業利益率の目安 | 特徴 | 
|---|---|---|
| 総合建設業(ゼネコン・工務店) | 約3〜5% | 材料費・下請費の比率が高く、利益率は低め。案件数で安定化を図る傾向。 | 
| 専門工事業(設備・電気・塗装など) | 約5〜8% | 自社施工が多く、原価をコントロールしやすい。技術力が利益に直結。 | 
| リフォーム・リノベーション業 | 約6〜10% | 小規模案件中心。原価の調整がしやすく、営業・提案力で差が出やすい。 | 
中小工務店では5%を超えれば堅実経営とされるケースが多く、
10%を超えると「高収益企業」と評価されることもあります。
建築会社が利益を高くするための考え方とは?
営業が原価を考えて粗利を高めるだけでなく、バックオフィス担当なども含めて営業利益を考えることが利益の最大化に重要です。
「原価を下げる」「販売費および一般管理費を下げる」のも大切ですがただ漠然とバックオフィスの経費削減に取り組んでしまうのは危険かもしれません。
電気代や事務所の家賃費用など、コストを下げる「経費削減」は、大変取り組みやすく、効果も見えやすいので着手するハードルが低いものではあります。
しかし、目先の経費削減が将来的な利益を下げる結果に繋がることも少なくありません。
会社経営に関わっているのは「お金」だけではありません。
「人材」「物」「設備」など様々なものが入り混じっているので経営計画の達成プロセスを最適化させることを目的に、業務改善の視点が必要です。
| ヒト | スタッフの能力・考え方や価値観・モチベーションなど | 
|---|---|
| モノ | 業務で扱う資材やパソコン・ソフトなどの業務ツール | 
| 設備 | 社内設備や取扱業者など、サービス提供を補助する仕組み、 サービス提供にあたる業務体制・ルールやプロジェクト・企画も含まれる | 
| 作業方法 | 作業工程のワークフローや承認手順など | 
これらの表を参考に、どのように改善するかを「QED(Quality(品質)/Cost(費用)/Delivery(納期)」の視点でどのような対応が最善かを考えていくのが業務改善です。
業務改善に関する参考記事
まとめ
今回は売上総利益(粗利)と営業利益の違いと、それらを改善するための考え方を少し紹介しました。
利益などの数字について理解が出来ていると、経営者だけでなくそこで働く従業員も効率的な働き方を考えるヒントになりより一層生産性の高い働き方に繋がります。
他の利益についても学びたい方は、ぜひ以下の記事をご参照ください。
利益に関する記事はこちら
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