3D測量とは？建設で活用するメリットを紹介

記事更新日:2024/9/5
現場
現場管理, 建築用語

近年、建設業界では技術革新が急速に進んでおり、その中でも特に注目されているのが3D測量技術です。

この技術は、現場の地形や構造物を高精度に三次元で計測・モデル化する方法で、設計、施工、管理などのあらゆるプロセスにおいて重要な役割を果たしています。

3D測量の導入により、建設工事の精度と効率が飛躍的に向上し、コスト削減や安全性の強化が実現されています。

本記事では、3D測量の基本的な概要とともに、建設業界における具体的なメリットについて詳しくご紹介します。

1 建設における3D測量とは？
2 建設における3D測量を活用するメリットとは？
3 まとめ

建設における3D測量とは？

3D測量とは
建設における3D測量は、従来の測量技術に比べて高精度かつ効率的なデータ収集を可能にする革新的な技術です。
この技術は、地形や構造物の詳細な三次元モデルを生成するために利用され、設計、施工、維持管理といった建設工事の全段階で活用されています。

以下では、3D測量の主要な手法、それぞれの利点、そして具体的な活用事例について詳しく解説します。

主要な3D測量手法

主要な3D測量手法として以下の4つの方法があります。

レーザースキャニング（LiDAR）
フォトグラメトリー（写真測量）
GNSS（Global Navigation Satellite System）測量
全地球測位システム（Total Station）

レーザースキャニング（LiDAR）

レーザースキャニングは、レーザー光を対象物に照射し、その反射光を計測することで高精度な3D点群データを取得する手法です。

特に、地上レーザースキャナーや航空機搭載型のLiDARシステムが一般的に使用されます。この手法の利点は以下の通りです。

高精度：ミリメートル単位の精度でデータを取得可能。
高速：短時間で広範囲のデータ収集が可能。
詳細なデータ：複雑な地形や構造物の細部まで測定可能。

フォトグラメトリー（写真測量）

フォトグラメトリーは、複数の写真を解析して3Dモデルを生成する手法です。ドローンを使用して空中から撮影した写真を利用することで、大規模なエリアの詳細なモデルを短時間で作成できます。

この手法の利点は以下の通りです。

コスト効率：特殊な機器が不要で、ドローンとカメラがあれば実施可能。
高解像度：高解像度の写真を使用することで詳細なモデルが作成可能。
視覚的理解：写真ベースのモデルは直感的に理解しやすい。

GNSS（Global Navigation Satellite System）測量

GNSS測量は、衛星からの信号を利用して位置情報を取得する手法です。

特に、リアルタイムキネマティック（RTK）やポストプロセスキネマティック（PPK）などの技術を使用することで、センチメートル単位の高精度な測位が可能です。

この手法の利点は以下の通りです。

高精度位置情報：リアルタイムで高精度な位置情報が取得可能。
広範囲対応：広範囲の地形データ収集が可能。
移動体にも対応：車両や船舶など、移動しながらの測量も可能。

全地球測位システム（Total Station）

全地球測位システムは、光学機器を用いて距離、角度、高さを測定する伝統的な手法です。

電子式トータルステーションは、精密な測量を可能にし、特に建築現場での基準点の設定や構造物の寸法測定に広く使用されます。

この手法の利点は以下の通りです。

高精度：高精度な位置測定が可能。
多機能：距離、角度、高さの同時測定が可能。
現場適応性：現場の状況に応じた柔軟な対応が可能。

3D測量の利点

3D測量技術には多くの利点があります。これらの技術は、従来の2D図面や手動測量に比べて以下のような優れた点を持っています。

精度の向上

高精度なデータにより、設計や施工の精度が向上します。ミリメートル単位の精度で測定されたデータは、誤差を最小限に抑えた施工を可能にします。

効率化

手動測量に比べて大幅に時間が短縮され、コストも削減されます。特に広範囲の測量では、その効率性が顕著に表れます。

データの一貫性

3Dモデルは設計から施工、メンテナンスまで一貫して使用でき、データの整合性が保たれます。デジタルデータの統合により、異なる段階での情報の齟齬を防ぎます。

視覚化

3Dデータを用いることで、工事関係者にとって視覚的にわかりやすい情報提供が可能になります。これにより、関係者間のコミュニケーションが円滑になり、意思決定が迅速かつ正確に行えます。

活用分野と事例

3D測量は多くの建設分野で活用されています。具体的な事例をいくつか挙げます。

インフラ整備

道路、橋梁、トンネルなどの設計・施工管理において、3D測量データは非常に重要です。例えば、新規道路建設の際には、地形データをもとに最適なルート設計が行われます。また、既存インフラの点検やメンテナンスにも活用されます。

建築

建物の設計、施工管理、維持管理において、3Dモデルは重要な役割を果たします。BIM（Building Information Modeling）と組み合わせることで、建設プロセス全体をデジタルで管理できます。例えば、高層ビルの建設では、施工中の進捗管理や衝突検出に3Dモデルが使用されます。

土木

河川工事、ダム建設、地盤調査などの土木工事においても3D測量が活用されます。例えば、ダム建設においては、地形データをもとに詳細な設計が行われ、施工中の地形変化の監視にも使用されます。

都市計画

都市全体の3Dモデルを作成し、都市計画やシミュレーションに利用されます。例えば、新しい市街地開発工事では、3Dモデルを用いて建物配置や景観のシミュレーションが行われます。

3D測量技術は、建設業界におけるデジタル化の重要な要素であり、工事の効率化、精度向上、コスト削減に大きく寄与しています。

レーザースキャニング、フォトグラメトリー、GNSS測量、全地球測位システムなどの多様な手法が、それぞれの利点を活かして現場で活用されています。

国土交通省：3次元測量手法の選定について

建設における3D測量を活用するメリットとは？

建設における3D測量のメリットは、工事の全段階にわたって多岐にわたる利点を提供します。

以下に、具体的なメリットを詳しく説明します。

精度の向上

3D測量は非常に高い精度を提供し、ミリメートル単位の詳細なデータを取得できます。
これにより、設計図と実際の地形や構造物の間の誤差を最小限に抑え、より正確な施工を実現します。

特に、複雑な地形や大規模な構造物において、その正確さは大きな利点となります。

効率の向上

従来の手動測量に比べて3D測量は大幅に時間を短縮できます。
レーザースキャナーやドローンを使用することで、広範囲のデータを短時間で収集でき、工事のスケジュールを大幅に短縮します。

また、データ処理や分析も自動化されているため、迅速な意思決定が可能です。

コスト削減

高精度かつ効率的なデータ収集により、設計変更や施工ミスを減少させ、修正作業にかかるコストを削減します。
さらに、3D測量データを用いることで、材料の使用量を最適化し、無駄を減らすことができます。

データの一貫性と共有

3D測量データはデジタル形式で保存されるため、設計から施工、メンテナンスまで一貫したデータを使用できます。
これにより、工事全体でデータの整合性が保たれ、関係者間の情報共有が容易になります。

クラウドベースのプラットフォームを使用すれば、リアルタイムでデータを共有し、各関係者が最新の情報にアクセスできます。

視覚化とコミュニケーション

3Dモデルは視覚的に直感的で理解しやすいため、工事関係者間のコミュニケーションがスムーズになります。
これにより、設計意図の共有や問題点の早期発見が容易になり、意思決定が迅速かつ正確に行われます。

さらに、クライアントやステークホルダーに対しても、工事の進捗や成果を効果的に伝えることができます。

リスク管理と安全性の向上

3D測量データを用いることで、現場の状況を正確に把握し、リスク管理が容易になります。
危険箇所や問題点を事前に特定し、適切な対策を講じることができます。

また、施工計画をシミュレーションすることで、安全な作業手順を設計し、作業員の安全を確保します。

継続的なメンテナンスと管理

3D測量データは、建設後のメンテナンスや管理にも役立ちます。
定期的なスキャンを行うことで、構造物の変化や劣化を早期に検知し、適切なメンテナンス計画を立てることができます。

これにより、長期的なコスト削減と構造物の耐久性向上が実現します。

環境への配慮

高精度なデータにより、環境影響評価がより正確に行えます。例えば、地形の変化や植生の状態を正確に把握することで、環境への影響を最小限に抑えた設計が可能になります。また、資材の最適化や廃棄物の削減にも寄与し、環境負荷を軽減します。

具体的な活用事例

都市再開発工事：3D測量を用いることで、既存のインフラや建物の詳細なモデルを作成し、再開発計画の最適化を図ります。これにより、計画の精度が向上し、住民への影響を最小限に抑えることができます。
橋梁建設：橋梁の設計・施工において、3D測量データを用いることで、地形や水流の詳細なデータを取得し、最適な設計を行います。また、施工中の進捗管理や品質チェックにも活用されます。
ダム建設：ダムの設計・施工管理において、3D測量データは地形の詳細な把握に役立ちます。これにより、施工計画の最適化や安全管理が実現されます。

これらのメリットにより、3D測量は現代の建設工事において不可欠な技術となっており、その利用範囲はますます広がっています。

将来的には、より高度な技術やシステムと連携することで、さらなる効率化と品質向上が期待されます。