建設業においては一般管理費の考え方、算定の仕方がほかの業界とは異なります。
建設業界で働き、今後、工事費の積算業務や公共建設工事の入札業務などに携わりたいと思っている方は、しっかりと理解しておくことが求められます。
また、これから建設業界に就職や転職を考えている方も、一般管理費の位置づけについて理解しておきましょう。
特に、これまで他業界で経理や財務の経験がある方は、一般管理費の考え方や扱い方が違うので注意しなくてはなりません。
建設業における一般管理費について詳しく見ていきましょう。
建設業の一般管理費とは
一般管理費は建設業者が請け負う現場の工事関連の経費とは直接関係ない経費を指し、本社や営業所の運営費や事務スタッフの給与や福利厚生費などが該当します。
建設工事で発生する予想利益など、会社経営に欠かせない費用を合算した費用です。
建設業では公共建設工事の受注というほかの業界ではあまりない公共関連の仕事も多いです。
公共建設工事を請け負う際の一般管理費は、国土交通省が定める公共建築工事共通費積算基準で定めた率にもとづいて計算するなど、ほかの業界とは異なる特徴があります。
工事原価との違い
工事原価とは請け負った特定の建築工事における、建築業者にかかる仕入れ費用や現場でかかる費用の総額です。
工事原価=直接工事費+現場管理費+共通仮設費で計算されます。
直接工事費とは、工事に必要な建材や資材などの費用など、建設工事に直接必要な費用のことです。
現場管理費は現場で働く作業員の賃金やガードマンへの報酬、工事保険の保険料など、共通仮設費は現場事務所や仮囲いなどのことです。
この工事原価に建設業者の利益などを含む一般管理費と消費税を加えると、建築価格が算出されます。
現場管理費との違い
現場管理費は工事現場を管理するために必要な費用です。
これに対して、一般管理費は会社を維持するために必要となる費用のことです。
現場管理費は以下のような費用が該当します。
- 現場で働くスタッフの給与
- 現場スタッフの福利厚生費
- 工事保険などの保険料
- 近隣住民に対する補償費用
国土交通省の調査によれば、現場管理費で多くを占めるのが、従業員への給与で現場管理費の63%ほど、法定福利費が約14%となっています。
この2項目だけで7割以上となっており、現場管理費の多くが現場で働く人の人件費です。
これに対して、本社や営業所のスタッフの給与や福利厚生費は、一般管理費となるのが違いです。
共通仮設費との違い
共通仮設費は建物を建てるためには直接使われないものの、工事を行ううえで必要となる費用です。
建設工事が完了する時には、取り払われる仮設的なものの費用の総額です。
たとえば、以下のような費用が共通仮設費に該当します。
- 現場事務所や休憩所、トイレなどの設置費用
- 工事用フェンスの施工費用
- 工事に必要な電気や水道などの設備費用
- 金具や工具など備品費用
国土交通省の調査によれば、共通仮設費の中で多くを占めるのは動力用水光熱費19%、揚重機械器具費18%、仮設建物費17%で、この3つの費用で50%を超える割合を占めています。
原価に関連する記事はこちら
一般管理費の内訳
一般管理費には以下のようなものが該当します。
- 本社や支店、営業所などで働く従業員の給与
- 本社や支店、営業所などで働く従業員の福利厚生費
- 本社や支店、営業所などの家賃や水道光熱費
- 本社や支店で所有している建設機械などの減価償却費やメンテナンス費用
- 本社や支店の利益
一般管理費の勘定科目
一般管理費の勘定科目には以下のようなものがあります。
- 給与手当 :従業員への給与、賞与、その他各種手当など
- 福利厚生費:社会保険料、退職金、健康保険組合費など
- 地代家賃 :本社や支店、営業所などの賃料
- 水道光熱費:本社や支店、営業所などの電気代やガス代
- 通信費 :電話代、インターネット代
- 消耗品費 :事務用品や備品の購入費用
- 減価償却費:機械などの使用に伴う価値減少分
- 保険料 :火災保険料、労災保険料など
- 広告宣伝費:自社サービスの宣伝に使用する費用
- 旅費交通費:交通費、旅費
- 会議費 :研修費などの会議に伴う費用
- 交際費 :取引先との接待費など
一般管理費率とは
一般管理費率とは、工事原価に対する比率のことです。
公共建設工事における一般管理費は、工事原価に一般管理費率を掛けて算出されます。
国土交通省で率を定めていますが、2022年4月に4年ぶりの改定を行い、一般管理費率が引き上げられました。
これは国土交通省による諸経費動向調査により、建設業者の本社経費が増加傾向にあるため、この状況を反映させたものです。
一般管理費率は工事原価が500万円~30億円の間では、原価が低いほど上がる仕組みになっています。
上限と下限が決められており、改正前は工事原価が500万円以下の場合は22.72%、30億円を超える場合は7.47%でした。
改定により、上限が23.57%へ、下限が9.74%に引き上げられます。
公共建設工事における共通費(間接工事費)とは
公共建設工事における共通費(間接工事費)とは、公共建設工事における現場管理費、共通仮設費、一般管理費等の合計額です。
工事費には、公共の建造物を建設するために直接必要とする直接工事費だけでなく、工事現場の管理運営に必要な現場管理費、共通的な仮設に要する共通仮設費、公共建設工事を受注した会社の継続運営に必要な費用や付加利益といった一般管理費等も含まれています。
工事費のうち、直接工事費以外の費用の合計が共通費(間接工事費)にあたります。
公共建設工事における共通費(間接工事費)の内訳は、以下の通りです。
現場管理費
現場管理費は工事現場を管理運営するために必要な費用で、共通仮設費以外の費用のことです。
積み上げにより算定するか、過去の実績にもとづく純工事費(直接工事費+共通仮設費)×現場管理費率(公共建築工事共通費積算基準で定めた率)+積み上げで算定します。
共通仮設費
共通仮設費は各工事種目に共通する、仮設に要する費用です。
積み上げにより算定するか、過去の実績などにもとづく直接工事費×共通仮設費率(公共建築工事共通費積算基準で定めた率)+積み上げで算定します。
一般管理費等
一般管理費等は、公共建設工事の受注者の継続運営に必要な一般管理費と付加利益のことです。
一般管理費等=工事原価(直接工事費+共通仮設費+現場管理費)×一般管理費等率で計算されます。
直接工事費に関する記事はこちら
まとめ
建設業の一般管理費とは建設業者が請け負う現場の工事に直接関連する経費とは関係のない、本社や営業所の運営費や事務スタッフの給与や福利厚生費など指します。
現場管理費は工事現場の管理に必要となる費用で、共通仮設費は建物の建設には直接必要ないものの、工事をするには必要な費用です。
工事原価は工事に直接必要な直接工事費と現場管理費、共通仮設費の総額です。
これに一般管理費等を加え、消費税を加算すると、建設にかかる費用の総額が算出できます。
また、これらの費用を正確に管理し、透明性を保つためには工事台帳の活用が欠かせません。工事台帳は、工事原価や現場管理費、共通仮設費を細かく記録・管理するための重要なツールです。
工事台帳を適切に活用することで、各項目の費用をリアルタイムで把握し、予算オーバーや不明瞭なコストの発生を防ぐことができます。
さらに、工事台帳ソフトを導入することで、手作業による集計ミスを減らし、効率的なコスト管理が可能となります。
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