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労働分配率とは?重要な粗利(付加価値)や計算式も解説

労働分配率とは?重要な粗利(付加価値)や計算式も解説

事業を健全に運営するためには、適切な人件費管理が欠かせません。しかし、人件費が収益に対してどれくらいの割合を占めているのか、正確に把握していますか?この割合を示す指標が「労働分配率」です。

労働分配率は、企業が生み出す利益(付加価値)に対して、どれだけのコストが人件費に割かれているかを示すもので、企業の経営状態を判断するために役立ちます。
この記事では、労働分配率の基本的な計算方法から、建設業など特定の業界における重要性までを詳しく解説します。

目次

労働分配率とは

労働分配率とは、企業が生み出した付加価値(粗利)の中で、どれだけの割合が人件費に使われているかを示す指標です。この指標は、会社の経営状態を判断するために役立ちます。

労働分配率の目安として、経済産業省の「企業活動基本調査」や中小企業庁の「中小企業白書」に掲載されている事業規模別の数値が参考になります。
2023年企業活動基本調査によると、2022年度の業種別の労働分配率は次の通りです。

  • 製造業:46.7%
  • 卸売業:44.1%
  • 小売業:49.3%

一般的に、労働分配率の適正水準は50〜60%とされていますが、業種や企業の成長段階により異なるため、自社に合った適正水準を見極めることが重要です。

労働分配率を理解することで、会社は給与が適切かどうかを判断し、経営を改善するための参考にできます。

労働分配率の計算方法を紹介

労働分配率の計算式は以下の通りです。

計算式

労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100

付加価値とは、会社が新たに生み出した価値を指し、計算方法には「控除法」と「加算法」の2つがあります
控除法は「売上高から外部購入価額を引く」方法で、中小企業向けです。一方、加算法は「人件費、賃貸料、税金、利子、当期純利益を合計する」方法で、大企業向けに使われます。

※付加価値(粗利)や労働配分率の動向についても詳しく調査されています。

製造業は46.7%で前年度比0.7ポイント上昇、卸売業は44.1%で2.5ポイント減少、小売業は49.3%で0.1ポイント上昇しました。

労働分配率、粗利計算を具体的な金額で解説

労働配分率とは

建築会社(役員1名、従業員2名、売上1億円、粗利率35%)を例に、労働分配率と粗利の計算を具体的に解説します。
こうした計算は、会社の経営状態を把握し、効率的な経営を行うために非常に重要です。

  • 売上高:1億
  • 原価:7,500万 (外注費、材料費、現場経費)
  • 人件費:1,800万(法定福利費、福利厚生費も含む)
  • 内訳:役員報酬 800万、従業員2名 1,000万 (500万 × 2)
  • 人件費以外の一般管理費:1,200万(事務用品、通信交通費、広告費、交際費など)

では、計算の流れを確認していきましょう。

■粗利を計算 (売上-原価)
1億 – 7,500万 = 3,500万 (粗利)
■粗利率を計算 (粗利 / 売上)
3,500万 / 1億 = 35%(粗利率)
■労働配分率(人件費 / 粗利)
1,800万 / 3,500万 = 51%(労働配分率)
■営業利益(粗利 – 一般管理費)
3,500万 – 1,200万 – 1,800万 = 500万 (営業利益)

粗利とは、売上から原価を引いた会社の実際の利益です。粗利率は、売上に対する粗利の割合で、この会社では売上の35%が粗利として残ります。

また、労働分配率は、粗利に対して人件費がどのくらい占めているかを示し、この会社では51%が人件費に使われています。
営業利益は、粗利から人件費や経費を差し引いた後の最終的な利益で、この会社では最終的に500万円の利益が残ることになります。

人件費に含まれるものの例を紹介

労働分配率の計算に使用される人件費は、人に関連するすべての費用を指します。
これには、給与や賞与、役員報酬だけでなく、福利厚生費や法定福利費(社会保険料や労働保険料)なども含まれます。

人件費の具体例として、以下のものが挙げられます。

  • 給与
  • 賞与
  • 賞与引当金繰入額
  • 法定福利費(社会保険料・労働保険料)
  • 福利厚生費
  • 退職金
  • 退職年金掛金
  • 雑給(アルバイト・パートの給与)
  • 役員報酬
  • 研修教育費

これらの費用を全て考慮することで、実際の労働分配率を正確に計算することができます。

労働分配率と労働生産性の関係とは

人件費を考慮する際、労働分配率と共に重要なのが労働生産性です。
労働生産性は、1人の労働者がどれだけの利益を生み出しているかを示す指標であり、次の計算式で求められます。

計算式

労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数

労働分配率と労働生産性を組み合わせることで、経営課題が浮かび上がります。例えば、労働分配率が高く労働生産性が低い場合、支払っている給料に対して仕事の成果が不足していることがわかります。

この場合、業務の効率化や無駄な人件費を削減する対策が求められます。具体的には、業務フローの見直しや自動化の導入が考えられます。

一方で、労働分配率が低く生産性が高い場合、従業員の努力に見合った給与が支払われていないか、過剰に働かされている可能性があります。生産性が高いのは良いことですが、もし給与が不十分であれば、優れた社員が辞めてしまうかもしれません。

このような場合は、成果を上げている従業員に対する評価や報酬制度を見直す必要があります。例えば、インセンティブ制度を導入することで、社員のモチベーションを高めることができるでしょう。

まとめ

人件費は原価の大部分を占めるため、労働分配率を活用して適切な水準を設定することが重要です。労働分配率だけでなく、経営の良し悪しはさまざまな指標を用いて分析できます。

これにより、企業がどれだけ人件費に投資しているかを把握し、従業員の待遇改善やモチベーション向上に向けた施策を考える助けとなります。

経営者にとっても従業員にとっても良い経営を実現するために、しっかりと分析を行いましょう。

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