【建築業】VE提案とは?VAとの違いや手順、事例を紹介します

【建築業】VE提案とは?VAとの違いや手順、事例を紹介します

建設費は、これまでも決して安いものではありませんでした。
しかし昨今、資材の高騰などの影響で建設費がさらに膨らんでいます。

品質はそのままに、少しでもコストを下げて建物を建てたいと考えている方は多くいます。
こうした顧客の希望を叶えるためには、受注者側からVE提案ができると良いでしょう。

VE提案は、コストダウンだけでなく、品質や機能の維持も期待できるため、発注者側にも満足してもらえます。
こちらの記事では、VE提案の概要やVAとの違い、VE提案の手順や注意点について解説していきます。

VE提案とは

コストダウンだけでなく、品質や機能の維持・向上を目指し、優れたものを提案することをVE提案と言います。
少しでもコストダウンさせたいと思っても、品質が落ちてしまうのであれば、発注者はその商品やサービスの発注を悩んでしまうでしょう。
しかし、費用が安くなるだけでなく、品質が維持あるいはパワーアップするのであればお願いしたいと思っている発注者は多いです。

VE提案は、総合的な価値を上げて商品やサービスを提案できます。
そのため、発注者はコストが削減でき、受注者は独自の技術が評価され、今後の受注が受けやすくなります。

これまでは、自社の保有する技術を提案したところで、特にメリットはありませんでした。
しかし、VE提案ができたおかげで、独自の技術が評価される場ができました。

VEの意味

VEは、「価値工学」と直訳され、かかる費用を抑えて製品などの価値を高めようという意味があります。
本来、受注者側は言われた通りに注文を受けていれば良いのですが、あえてもっと良い方法があると提案をすることで、今後のお互いの関係が変わってきます。
良いものをわざわざ提案してくれたと発注者側が感じれば、今後も優先的に依頼を受けられるようになるでしょう。

VEは、コストダウンと価値の向上の両方をアップさせることも意味しています。
最初にこの手法が開発されたのはアメリカで、その後日本でも昭和40年代後半から使われるようになりました。

VE提案の内容

建設VEの場合は、不特定多数の関係者がいます。
一部分だけでなく、皆それぞれのニーズを満足させられるようにVE提案することが必要です。

企画や計画、設計などさまざまなタイミングで内容を提案できますが、できる限り早い段階が好ましいでしょう。
ベストなタイミングとしては、設計段階、工事入札段階などです。
それぞれの過程で検討している部分は変わってきますので、ベストな提案ができれば受け入れてもらいやすいでしょう。

VA提案との違い

VEと似たような言葉に、VA提案があるのは知っているでしょうか。
一見文字の配列なども似ていて見間違ってしまいそうですが、意味は違います。

VAは、今ある既存の製品をよりコストダウンさせて良いものにするという意味があります。
一方VEは、新製品を開発するという意味があり、この2つは異なります。
具体的にいえば、VAで行うのは、原料の調達方法を変えコストダウンを図るといったものです。
少しでもより安くと考えるのがVAの特徴です。

VEは、確かにコストダウンも考えられていますが、製品を新しく開発して機能を高めるためにコストを上げてそれ以上の性能になるのかなども追及します。
VAは、すでにできあがった製品に対しての活動を言いますが、VEはまだできあがっていない開発段階の活動の場合もあります。
ただ、内容に似た点もありますので、VA/VE提案という風に両方を合わせて表記されることもある言葉です。

建築業におけるVE提案の必要性

VE提案はさまざまな業界で使われていますが、昨今建設業においても必要だと言われています。
なぜ建設業でVE提案が必要だと言われているのでしょうか。
理由をいくつか紹介していきます。

コスト削減

昨今は材料費の高騰もあり、コスト削減をしたいと考えている発注者も増えています。
さらに、建設業では単純な発注者だけでなく、権利者やディベロッパー、協力会社などさまざまな人が関係しています。
不特定多数の利害関係が絡んでいて、ほかの業界よりも複雑です。

VE提案を上手に行ってコスト削減ができれば、それぞれの利害関係も上手に満たせます。
自社の独自の技術を知ってもらい、優れていると感じてもらえば、今後にもつながります。

品質の向上

ただコストダウンするだけでは、発注者側は納得しません。
VE提案ができれば、コストが抑えられるだけでなく、品質も向上させた提案ができます。
発注者側が品質向上を実感できれば、また利用してくれますし、良い評判も広まるでしょう。

特に建設関係の買い物は決して安いものではないからこそ、発注者側に厳しい目で見られがちです。
品質向上により、良い口コミや評判が広まると、新しい顧客や発注者に選んでもらえる企業になれます。

設計や生産性の効率化

決して安くない建築物だからこそ、しっかりとしたものを建てるために企画段階から設計、建設と長い時間がかかるのが通常です。
しかし、VE提案ができれば、重要な点はしっかりと時間をかけつつも計画や設計、施工などの際により良い方法を提案できます。
何も提案がない状態よりも、効率的な施工が可能です。

東京都財務局「建築工事におけるVEガイドライン(ダイジェスト版)」

VE提案の6つの手順と注意点

VE提案がうまく伝わり、発注者側にもメリットを感じてもらえれば、今後にもつながります。
実際に自社でVE提案をするには、どのようにしたら良いのかと迷っている方もいるかもしれません。
ここからは、VE提案の手順について説明していきます。

VE提案の手順6つ

VE提案を効率的に行うためには手順があります。
大まかな順番は、以下の通りです。

  1. 情報収集
  2. 定義づけや整理
  3. 分析
  4. 提案
  5. フォロー
  6. 評価

VE提案は難しそうに感じますが、書式も決まっていますので、覚えてしまえばそこまで難しくありません。

STEP1

情報収集

はじめに、対象に関する技術やコスト、品質など、何が求められているのかを見ていきます。
競合他社の情報やクライアントの要望も集めましょう。
要望は具体的であるほど、後から作業もしやすくなります。

STEP2

定義づけ・整理

対象になっているものの機能の定義を行い、情報と照らし合わせて整理していきます。
どんな点を解決するのか定義し、機能を細分化してさらに足りない情報などがあれば集めます。

STEP3

分析

理想に向けて実現できそうな戦略かどうか、コストや機能の向上などさまざまな部分を分析していきます。
どこを優先して改善するのか、分析結果をもとに決めていきましょう。

STEP4

提案

分析した結果、コストを下げながら機能を維持もしくは向上できるとわかったら、今度は発注者側に提案をします。
この時、わかりやすいようにVE提案書を使い、順を追って説明していきます。

品質の保証やコストが安くなる根拠などをわかりやすく記載しましょう。
納得が得られれば作業をスタートできます。

STEP5

フォロー

説明しっぱなしではなく、作業を行ってからもVE提案した内容が満たされているのかなどしっかりとフォローを行います。
フォローがあるかないかでも、相手の満足度は大きく変わります。
目標に対してどうだったのか一目でわかるように、数値化を行いましょう。

STEP6

全体への評価

報告書を作り、それを利用しながら作業全体的の評価を行っていきます。
発注者側にも評価をしてもらい、次へとつなげましょう。

VE提案の注意点

ここからは、VE提案をする際の注意点について説明していきます。

提案のタイミング

提案のタイミングは何回かありますが、少しでも早いほうが発注者側も助かると思っています。
なんでも早めであれば丁寧に説明もできますし、変更もしやすいです。
さらに、品質保持のために準備期間も必要なため、提案のタイミングは早めを心がけましょう。

現場の声を積極的に取り入れる

実は、現場に携わっている人が一番優れたアイディアを持っています。
一部の人だけでなく、現場にも積極的に意見を聞きに行きましょう。
自分たちが気が付かないようなアイディアが発注者側にもうけ、より良いVE提案となる可能性があります。

建築業におけるVE提案の事例

建築業でも、実際にVE提案をして成功している企業があります。
特に入札不調になったケースでは、VE提案される事例が多いです。

材料費のコストダウン

機能や強度を保ったままもう少しコストダウンさせたいと発注者が考えている時に、VE提案できれば施工も決まりやすいです。
作業が行いやすい低価格な材料で、品質を落とさずに建物が造れるのであれば、施工業者も発注者側も助かります。
入札不調も回避しやすくなります。

入札不調の時

入札が不調になる時には、それなりに理由があります。
特に利益が見込めないと思えば、手を出す業者も少なくなってしまいます。

機能や品質はそのままでコストをダウンできれば、入札しても問題ないと不調を回避することも可能です。
VE提案をすれば、発注者だけでなく入札企業にとっても利益があり、両者がWin-Winの状態になります。

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まとめ

建設業では、材料費高騰などの影響で、VE提案はさらに重要となるでしょう。
これまで重視してこなかった企業も、今後の自社の成長を見据えて積極的にEV提案をしてみてください。

やり方は手順を覚えれば難しくないですし、書式も決まっています。
発注者だけでなくさまざまな方にメリットを与えますので、今後また仕事をお願いしたいと依頼も増えるでしょう。
VE提案を行うことで、品質やコストなどすべてにおいて優れたものを提案することができます。

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