【建設業向け】税務調査とは? 必要な書類と受けない為の管理方法

【建設業向け】税務調査とは? 必要な書類と受けない為の管理方法

「税務調査」と聞いて、なんとなく不安や恐怖を連想していませんか?

建設業界はただでさえ売上や原価の管理が難しい業界で、しかも「税務調査の対象になりやすい」なんて不安な情報だけ聞いて警戒している方も多いはず。

でもちゃんと知識を得て理解すれば、実はそれほど恐れる必要がないものなのです。

今回は、「税務調査」では何をするのか…という基本的な部分から、自社で出来る対応まで考えてみましょう。

そもそも税務調査とは?

知識がないうちは、税務調査と聞くだけでなんだか不安になりますよね。まずは「税務調査とは何か」を理解することで、警戒心を解いていきましょう。

誰が何のために行うのか

税務調査を実施するのは国税庁、または国税庁が管轄する税務署です。国税庁は日本の行政機関であり、税金を徴収し、公平に正しく納税されているか監理するための機関です。

税金は、企業自身が税務署に申告したうえで納税する「申告納税」という制度で成り立っています。申告した内容や納税額に誤りがないかを確認するために行われるのが税務調査です。

確認のためには、申告された内容と実態を比較するために売上や経理上の帳簿を確認したり、どのような経営が行われているのかを確認する必要があります。そのために調査員が企業まで直接出向きます。

「任意調査」と「強制調査」

税務調査には、任意調査と強制調査の2種類があります。任意調査は前述した「確認」のために行われるもので、事前に調査を行うことが連絡され3日~1週間ほどで実施されます。

納税に関わることであれば質問への回答や必要書類・帳簿の提出を断ることができない「質問検査権」がありますが、正しく管理していればそれほど恐れる必要はありません。

一方、強制調査は「脱税」が疑われる場合に行われます。
裁判所の令状を得たうえで行われるため事前通告はなく、国税局査察部によって納税に関する資料を押収されます。

ただし強制調査は「脱税額が概ね1億円を超える場合」「隠蔽工作が悪質であると判断される場合」にのみなので、ふつうに経営していて怯える必要のあることではありません。

税務調査の対象になる理由

具体的な調査理由は公開されていませんし、税務調査を実施する際にも理由を説明されることはありません。仮に正しく納税していたとしても税務調査を受ける場合もあります。

ただ、税務調査が行われる背景には「何かしらの指摘ができそう」という疑い・仮説があることがほとんどです。

  • 開業初年度から多額の売上が計上されている。開業前の申告が漏れているのでは?
  • かけている保険が満期になり満期保険金が振り込まれているはず。かなり前にかけた保険だから申告が漏れている可能性はないか?
  • 指摘事項のあった別の税務調査の際に取引先として名前が載っていたが、もしかしたらこの企業も指摘できることがあるのではないか?
  • 売上が1000万を超えると消費税がかかるが、この企業は売上900万円弱が続いている。課税を避けるために虚偽申告をしているのではないか?

国税庁ならびに管轄の税務署では、国税総合管理システム(通称KSKシステム)を使って納税者が過去に提出した申告データや関連情報を一元管理しています。

財産相続の情報や保険会社からの支払調書、オークションサイト等のオンラインサービスからも情報提供依頼を通じて情報収集をしています。そのため、上記のようなあらゆる角度からの検討が可能なのです。

建設業界は調査対象として目がつけられやすい

建設業界は調査対象になりやすいと言われています。例年の不正発見割合が高く、不正所得金額も他業種と比べて多いのが理由です。

例えば以下は、平成30年の「法人税等の調査事績」による報告です。1年間の税務調査件数や申告漏れ金額等を集計した、国税庁による報告資料です。

平成30事務年度 法人税等の調査事績

不正発見割合の高い上位10業種のうち、4業種に建設業が該当しています。(6位土木工事、8位職別土木建設工事、9位一般土木工事、10位管工事)

不正発見割合は軒並み28%~26%と他業種と比べて高いとは言い切れませんが、1件あたりの不正所得金額(申請漏れによって得た金額)が全10業種内でも高額です。

「業界的に不正の多い業界なのだから、もしかしたらここも」と持ち回り的に調査が入りやすい業種とも言えるかもしれません。

参考情報:平成30事務年度 法人税等の調査事績の概要(国税庁)

もし税務調査を受けることになったら

もしもあなたの会社が税務調査を受けることになったら、まずは慌てずにやるべきことを整理しましょう。

まずは税理士に相談する

まずは依頼している顧問税理士に立ち合いを依頼しましょう。事前連絡をもらっていた以外の書類を、その場で求められるかもしれません。

提出を求められた請求書や領収書がすぐ見つからずに調査を長引かせてしまう可能性もあります。税理士に相談しておけば、当日の立ち回りをリハーサルして冷静に対処することができます。

もし顧問税理士がいない場合、スポット依頼を受け付けている税務調査を得意とする税理士へ相談しましょう。「税務調査 税理士」などで検索して近場の税理士を探すことが出来ます。

必要書類を準備する

税務調査では「申告内容が実際と合っているか?」を確認するため、その「実際」を指すために必要な書類はすべてすぐ出せる状態にしておくのが理想です。

基本的には調査訪問前に準備すべき資料に関しては通達があるはずですが、資料内容の整合性を確認するためにその他資料の提示を求められる可能性も考慮しておきましょう。
税理士に確認して指示された書類を用意するのが一番ですが、参考までに記載します。

  • 総勘定元帳
  • 出金伝票
  • 振替伝票
  • 現金出納帳
  • 予算通帳
  • 決算書(または確定申告書)
  • 過去の在籍者のものを含む労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 源泉徴収票控え
  • 現場の着工日が分かる資料
  • 現場の完工日・引渡日が分かる工事完了確認書
  • 工事台帳
  • 金銭の移動に関するすべての書類(領収書・納付書・納品書・請求書など)

その他、現金の場所や償却資産が分かる資料も確認しておきます。現金は帳簿と合っているかの確認を受けた際を想定して、償却資産資料は、例えば「購入したはずの工具類が無い」と転売を疑われるケースを想定してのことです。

どのような期間分が求められるかは場合によりますが、最低でも3年分の資料を求められるケースが多いようです。

  • 施工管理システム

税務調査当日はどのような対応が必要か

税務調査に訪れる調査員は、提示書類以外からも様々な情報を引き出そうとします。例えば対応する担当者の「態度」です。念のため、当日の向き合い方も確認しておきましょう。

必要最低限のこと以外は話さない

聞かれたことだけを淡々と回答し、求められた資料を淡々と提示するのがベストです。税務調査は非日常な出来事で緊張する場面ではありますが、だからといって緊張を解くためにこちらから雑談を持ちかけたり、聞かれてもいないようなことまで話す必要はありません。

そういった「余計な一言」で調査員にあらぬ疑いをかけられてしまい、当初予定していた以上の調査を行われてしまうかもしれません。緊張する場面ですが、ぐっと我慢してこらえましょう。

なんでも即答しない

調査員から資料や業務に関する質問を受けることがあります。その際、自信をもって回答できる内容以外は即答してはいけません。

「多分」「おそらく」といった曖昧な回答は、何か隠しているのかも・裏があるのかもという不要な疑いを生んでしまうかもしれません。返答内容に自信のないものは、「調べてから後日回答します」として返答を保留しましょう。

余談ですが、税務調査で直接企業訪問を行う調査官には「調査における最終決定権限」が与えられていません。調査結果を一度持ち帰り、担当上司に報告してから指摘事項を整理します。

つまり、調査当日に「答えられなかった」ということ自体が調査評価そのものに影響を与えることはないのです。

とにかく冷静に!「論破」しようとしない

税務調査は討論大会ではありません。調査員の質問や指摘を論破しても意味がありません。調査員は帳簿等の書類と税申告内容が合っているかを、具体的な資料に基づいて確認しにきています。

あなたの論説がいかに強力であっても、調査には何の影響も与えることはできません。それどころか、論破しようと躍起になる姿が逆に「何か隠そうとしているのか、裏があるのか」という疑いに繋がる可能性すらあります。

税務調査の対応中はとにかく冷静に、ポーカーフェイスで淡々と処理することを心がけましょう。

税務調査の対象にならないためにできること

ここまでは、税務調査の中身や当日の対応を紹介しました。でもできれば、そもそも税務調査なんて受けたくないですよね。

ここからはそもそも税務調査の対象にならないために普段から出来ることを紹介します。

定期的な持ち回りで調査に来られるケースもあるので「調査を来なくする」ということは困難ですが、万が一調査が来ても指摘を受けずに済むために出来ることを探していきましょう。

書類管理を徹底する

  • 工事見積書
  • 工事注文書・注文請書
  • 発注書
  • 請負契約書
  • 引渡確認書
  • 請求書
  • 入金証憑

まずは各書類の控えがしっかり保管されているかを確認し、されていなければ管理体制を整えましょう。これらの書類は帳簿の「日付」を明らかにする根拠となります。書類が紛失していると、「売上を抜いているのでは?」という疑いに繋がります。

取引の一連の流れが確認できる書類や記録は必ず残しておきましょう。

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売上計上に関するルールを徹底する

税務調査で指摘されやすい項目の一つに「売上の繰り延べ(期ズレ)」があります。売上の繰り延べとは、当期に計上すべき売上を翌期以降に計上してしまっている状況のことです。

建設業の売り上げは「工事完成基準」「部分完成基準」「工事進行基準」のいずれかで計上されます。ここで取り上げるのは工事完成基準での話です。

工事完成基準は完工・引渡が完了した時点で計上する売上ですが、当期中に引き渡した工事は翌期に請求・入金があったとしても当期の売り上げに計上しなければなりません。

  • 今期完成工事を来期売上に持ち越している
  • 追加工事が発生したことを理由に、完工済みの本工事を当期売上に計上していない

これらの状況は日付や金額によってすぐ指摘事項として挙がってしまいます。
まずは売上計上が工事完成基準で行われているかを確認したうえで、日付関係を管理していきましょう。

未成工事支出金が管理できる体制をつくる

未成工事支出金とは、決算日時点での未成工事(まだ完工・引渡していない工事)で発生している工事原価です。

工事原価といえば、材料費や協力会社への外注費などが一般的ですね。
完成工事の場合なら、これらの原価は「損金」として法人税の所得金額計算に利用されますが、未成工事は損金ではなく「未成工事支出金」にしておかなければなりません。

未成工事の原価を未成工事支出金ではなく損金にしてしまっていると、税務調査の際に棚卸し計上漏れとして指定されてしまいます。

また、悪質なものだと「来期の赤字計上を防ぐために、黒字の今期に未成工事を計上し相殺する」という手段も税務調査ではよく発覚するそうです。そのような誤解を受けないためにも、未成工事支出金の管理は徹底しなければなりません。

経費申請に関するルールも徹底する

経費も税務調査ではよく指摘事項に上がる項目です。

  • プライベートな飲み会やゴルフの代金が、公的な「接待費」や「交通費」として経費計上されている
  • 実質的に会社に雇用されているような働き方をしている職人の給与を外注費計上にしている
  • 現場単位で按分計算すべき現場経費や人工がどんぶり勘定されていたり、売上計上基準とずれている

現場の外注費や材料費をしっかり現場経費として登録するのは当然として、それ以外の費用がどの経費区分にあたるのかは素人考えで判断し続けてしまうと思わぬトラブルを招く原因になります。税理士に相談のうえ社内ルールを構築しましょう。

プライベートな費用は賞与扱い、源泉徴収漏れかも

社長や役員のプライベートな費用を経費計上していて指摘された場合、それらは役員賞与として扱われます。経費として扱えないため当然損金に出来ず、しかも役員賞与の申告漏れにも繋がり「源泉徴収漏れ」まで受けることになってしまいます。

その職員が「実質的な従業員」かどうか

一人親方など頻繁に工事を依頼する相手について、外注費として扱っていても「本来は給与として扱わなければならないのではないか」と疑われる場合があります。

  • 外注契約の内容が他の人でも出来る(代替可能)ものか
  • 工事を行うにあたって事業者側の現場監督等から指揮を受けているか
  • 工事に必要な材料や工具などは事業者側から提供されているか
  • 未引渡の担当工事が途中解約になってしまった時、そこまでの仕事の報酬を請求できるか

外注費として認めてもらうには上記4点を押さえておく必要があります。

管理システムの導入や工事台帳作成は必須

  • 工事に必要な各書類を用意し、漏れなく保管する
  • 工事に関する日付をすべて記録しておく
  • 工事の売上、原価を記録する
  • 完成工事基準の売上計上額、原価を記録する
  • いくつもある工事のうち未成工事支出金に該当する原価はどれか管理する
  • 工事につく現場経費とそれ以外の経費を漏れなく記録する

他にも様々な要素がありますが、これらの情報を余すことなく記録し、数年に渡り消失することなく保管し続ける作業を人力で行うのは不可能です。

工事の情報が管理できるITシステムを導入しましょう。

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関連情報をひとまとめにする一元管理システムを導入しよう

売上や工事原価、そこに紐づく見積情報や現場諸経費などがまとめて記録・管理できるシステムがおすすめです。
建築業向け(リフォーム・工務店)管理システム アイピア
アイピアは、建設工事に関するあらゆる情報をひとつのシステムで作成・管理できる「建設業向け一元管理システム」です。

  • 施主様の顧客名簿
  • 工事案件の現場住所や担当者、施主様とのやり取り
  • 見積書の作成、履歴管理
  • 受注日や受注金額・原価・粗利の管理
  • 入金予定・請求日・入金実績の管理、請求書の発行
  • 実行予算の管理、発注書の作成
  • 現場経費、その他諸経費の登録
  • 協力業者からの請求日・金額管理

これらの情報がひとつのシステムで完結するうえ、未成工事支出金を自動計算して一覧表示したり、現場ごとの工事台帳がワンクリックで出力できるようになります。

「工事台帳」は税務調査における必須書類ではありませんが、現場の変遷が分かりやすいため可能な限り作成しておきましょう。調査員側も、作成しているか確認してくる場合があるようです。

税理士と顧問契約を結ぼう

ITシステムで情報を管理出来ていても、情報が税務的な意味合いで正しいかどうかを確認できる環境が必要です。

可能な限り税理士と顧問契約を結び、ITシステムを共有しながら状況を把握しあいましょう。企業の状況を深く理解している税理士がいれば、万が一の税務調査の場面でより頼もしい存在になってくれるはずです。

まとめ

税務調査は、企業になんの落ち度がなかったとしても必要書類を用意したり過去履歴を探したりと事務作業に大きな負担がかかるものです。

日頃から適切な情報管理が出来る環境をITシステムによって構築しながら、税理士と協力して安心できる経営状況を整えましょう。

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AIPPEAR NET 編集部

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