一つの家に長く住み続けるには、定期的な改修やメンテナンスが必要です。
そんな時に行うのが住宅リフォームです。コロナ禍での新しい生活スタイルの導入により、リモートワークに対応した部屋へリフォームする人も増えています。
リフォーム業界の市場は拡大しており、それと同時に業界の競争も激化してきています。
この記事では、リフォーム業界の種類・現在の課題・今後生き残るための経営ポイントを紹介していきます。
目次
リフォーム業界とは?
リフォーム業界とは、住宅の改築や改修工事を行う業者のことです。
リフォームとはトイレやキッチン、お風呂など家の設備を新しいものに変えたり、汚れた外壁を取り換えたりと、老朽化したものを新築の状態に近づけることです。
よく似た言葉でリノベーションがありますが、意味は、新築時よりも性能を向上させプラスアルファの価値を生み出す大規模改修のことです。
近年では、中古物件を買い取ってリフォームを行い住むという人も増えています。
リフォーム業界は住宅を「直す」「変更する」ことに特化しています。
不動産業は「売る」「買う」「貸す」「借りる」が基本なので、すでにある家に手を加えるという点で、不動産業界より建築業界に近い位置づけといえるでしょう。
市場規模
2021年(1~12月計)と住宅リフォーム市場規模は6兆9,011億円と推測する。
分野別にみると、2020年(1~12月計)と比較して「設備修繕・維持関連」分野が前年比8.6%増と大きく伸長した。
一方、「家具・インテリア等」分野は昨年の大幅増の反動からか同8.3%減となった。
また、「増改築工事(10㎡超+10㎡以下)」分野は同2.7%減であった。
新型コロナウイルスの拡大による2020年4月の緊急事態宣言下では、多くのリフォーム業者は営業自粛の対策を取り、市場は落ち込みました。
しかしその後、在宅の時間が増えたことやリモートワークの長期化により、住宅の改修に興味を持った人が増えてリフォームの需要は回復しました。
2021年の市場規模は6.9兆円(前年比5.7%増)と発表されましたが、2022年は6.5兆円(前年比5.7%減)と予想されています。
コロナ禍が落ち着き、飲食や旅行などリフォーム以外の支出が増えたことが要因と考えられています。
しかし、団塊ジュニア世代のリフォーム需要の高まりから、さらなる市場の拡大も期待されます。
今後も、コロナ禍で芽生えた住空間への関心をリフォームの需要として顕在化できれば、リフォーム業界の市場は安定していくでしょう。
このように、ニーズが増加しているリフォーム業界では今後Webを活用したマーケティングが激化することが予想されます。
自社HPだけではなく、ポータルサイトやインターネット広告、ソーシャルメディアによる情報発信が大切になってきます。
建築・リフォーム向けの工事管理のコツについてはこちら
リフォーム業界の種類とそれぞれの特徴
リフォーム業界とひとくちにいっても、業務範囲は多岐にわたり、サッシを取り換える程度の小さなリフォームから、大規模な改修工事を行うリフォームまで、内容は様々です。
業種も様々で、工事の種類や規模によって、得意としている会社はそれぞれ異なります。
ここではそれらの業種の特徴と得意とする分野を解説します。
大手ハウスメーカー系列
CMで見るような、住宅を販売している大手ハウスメーカーは、物件のリフォームも請負っているところがほとんどです。
住宅を全体的に手掛けているため、この大手ハウスメーカーの得意分野は、大規模なリフォームや増改築など総合的な工事を行うことです。
大手ならではの豊富な経験と安心感があります。
一方弱みは、知名度が高く、広告宣伝費や営業人件費などの経費がかかっているため、価格が割高な場合が多いことです。
リフォーム専門会社
最近増えてきた業種で、もともと工務店や設備店であった会社が自社の製品や得意分野を生かして専門のリフォーム会社を立ち上げたものです。
総合的な工事もできますが、それぞれ各社の設備に関わるリフォームを得意分野としています。
設備にアフターサービスをつけたり、規模も全国レベルで対応可能で、各社の強みを生かした営業をしています。
弱みは、ハウスメーカーほどの知名度がないことと、会社によっては設備以外のリフォームは不得意としているところがあることです。
地場工務店
地場工務店の特徴は、大手に比べて安くて細かい注文がきく点です。
その地域の事情や環境に詳しいため、地域特性に合わせたリフォームができたり、工務店それぞれの専門性を生かす工事をするのが得意分野です。
地域で評判の工務店は、知識や経験が豊富な腕の良い職人を抱えています。
しかし、デザイン性の面に弱い場合があることが弱みです。
ホームセンター、デパート、家電量販店、家具店
ホームセンター、デパート、家電量販店、インテリアショップなど、建築業界とは違う業界から参入した企業がリフォームを手掛けているものです。
多くは物販販売を中心としたリフォームや比較的小さい工事を得意分野としています。
商品と合わせたリフォームができるので完成イメージがしやすくなります。
一方、リフォーム業としての経験が浅い点が弱みです。
リフォーム業界への大手参入で増す競争率
リフォーム業界には大小さまざまな規模の企業が進出しています。
注目するべきは、異業種の大手企業からの参入の多さです。
代表的な企業として、家電量販店ではヤマダ電機・ビックカメラなど、ホームセンターではカインズホーム・ジョイフルなど、家具店ではニトリ・IKEAなどです。
これらの業界は、住環境に必要な商品を取り扱っている企業ばかりなので、リフォーム業界と相性がいいです。
上記の中で、特に力を入れているのが家電量販店で、業界の中でもトップを争う大手企業が積極的にリフォーム業に参入しています。
その意図は、消費者が引っ越しなど生活が一新する時に利用してもらうタイミングで合わせてリフォーム設備などを販売し、売り上げを伸ばすことです。
このように、他業種からリフォーム業に参入する大きな理由は、「今後もリフォームの需要が安定して増えていく見込みがあること」と、「建設業の許認可面などで新規参入がしやすいこと」の二つです。
競争率が増しているリフォーム業界で生き残るには、確固たる経営戦略が必要となります。
リフォーム業界の課題と今後
様々な企業の参入により活性化しているリフォーム業界ですが、問題点もいくつかあります。
職人不足
リフォーム業界の一番大きな課題は、職人不足です。
ニーズは高まる一方、職人が足りないことで工事が納期通りに終わらないという点も見られます。
今の現状、「職人が十分足りている」といえるリフォーム業者はないといわれています。
技術を持った職人が引退してしまう前に、若い世代の職人の獲得と育成に力を入れるべきでしょう。
許可や資格がいらない?
許可や資格が必要かどうかは施工範囲や住宅の種類によります。
実はほとんどのリフォームは許可がいらず、無資格で行うことができるのです。
建築士法第3条で、下記の場合においては資格を保有する建築士が必要だと定められています。
裏を返せば、これにあてはまらない条件であれば、資格を持っていなくても工事することができると言うことができます。
リフォーム工事は、資格だけではなく許可もほとんど必要とされていません。
建築物の工事には、国土交通大臣の建設業許可を取得することが決められています。
しかし、ほとんどのリフォームは建設業法で定められた「軽微な建設工事」に該当し建築士などは不要です。
その基準は次のような範囲になります。
一般的なリフォーム工事は500万円以内がほとんどです。
資格や許可がいらないとなれば、比較的誰でも簡単に開業することができます。
工事の質が悪かったり値段をぼったくる悪徳業者がでてきてしまうこともあります。
リフォーム業界自体の信頼を落さないように、優良な会社として評価されるようにしましょう。
トラブルが多い
リフォーム業界はトラブルが発生しやすい業界だといわれています。
例えば、工事内容が専門的過ぎて消費者が良し悪しを判断できないことです。
リフォームの見積書内容についての説明を受けても、内容が専門的過ぎて正しいのかどうかが分かりにくいといわれています。
また、相見積もりを取得しても、表記方法が一律ではないので、各項目金額が妥当かわかりにくいといわれています。
工事内容を消費者に説明する時は、なるべくわかりやすく説明して、リフォーム工事への理解を深めてもらうことが大切です。
建築業・リフォーム業界向け資格一覧(施工管理編)はこちら
建材の高騰と資材不足
新型コロナウイルスの拡大の影響により、世界的にリフォーム需要が高まったため、建材不足が深刻な問題となっています。
さらにウッドショックにより、建材の価格も高騰しているのが現状です。
資材不足は工事の納期に大きな遅れを生じさせるため、お客様とのトラブルの発展につながりかねません。
また、建材価格の高騰と比例して工事費も高騰するため、リフォーム工事の需要の低迷が懸念されています。
ウッドショック収束の見通しが立つには、まだ時間がかかることが予想されています。
今後も生き残るための経営のポイント
現在ではインターネットが復旧したことで消費者がリフォームについての情報を得やすくなりました。
リフォーム会社がネットで比較される時代でもあり、多様化した消費者のニーズに応える必要が出てきました。
競争が激化しているリフォーム業界でこれからも生き残るためには経営戦略を考え直す必要があります。
他社との差別化
たくさんのリフォーム会社の中で、他社と同じようなことをしていると大勢の中に埋もれてしまいます。
消費者に選ばれるよう、独自の「売り」をつくって他社と差別化をはかることが有効的です。
地域に根ざす
地域で評判のいいリフォーム会社であれば、地域の人に安心感をあたえることができます。
地域に根ざした強みや得意分野を作り、その地域でNo.1のリフォーム会社を目指すとよいでしょう。
人と人のつながりを大切にすることで、人の紹介で自身の会社が広まったり、気軽にリフォームについて相談できる存在になり、求められ続ける会社になるでしょう。
顧客満足度を高くする
たくさんの企業の中で生き残るには、消費者に選ばれる会社作りをすることです。
顧客満足度をあげ、顧客の信頼を得ることが重要です。
適切な価格、良質な商品・サービス、アフターフォローにこだわり、誠実に一つずつの業務をこなしていくことが今後に繋がります。
建築業における経営分析に関する記事はこちら
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まとめ
いかがだったでしょうか。
リフォーム業界の需要は高まっています。
それと同時に大手参入などで競争率が上がっているのも事実です。
数多くあるリフォーム会社の中で生き残るため、自社の強みを生かして信頼してもらえる会社づくりを目指すことが成功の秘訣になるでしょう。
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