見積書を急いで作成して届けたい場合、PDFでメール送信できたら便利です。
見積書は契約前の提案書的な意味合いもある一方、取引の態様によっては見積書がそのまま請求書代わりとして機能することもあります。
税務上も取引を証明する書類として機能します。
そのため、見積書をPDFとして納品して良いのか、心配になる方もいるかもしれません。
この記事では、PDFの見積書は法的に有効なのかをはじめ、電子化のメリットや注意点を解説していきます。
目次
PDFの見積書は法的に有効?
PDFの見積書は法的に有効なのでしょうか。
そもそも、見積書は工事の内容の提案やかかる費用を示した書類で契約書類ではありません。
見積書を受け取ったから契約をしなくてはならないといった効果も発生しません。
もともと、見積書はどんな形式で作成しなくてはならないといった法的なルールは存在しないので、紙でもPDFでも見積書として有効です。
PDFの見積書に押印は必要?
では、PDFの見積書に押印は必要でしょうか。
この点、見積書を契約書や請求書などとして流用するケースもあるので、紙の見積書には押印しているケースも多いです。
もっとも、見積書に押印を義務付ける法的なルールはないので、紙であれ、PDFであれ押印は必要ありません。
ただし、誰が作成した見積書なのかを明らかにするためや、後日「見積書にこうあったから契約した。」、「契約内容が見積書と違う。」など、トラブルが生じた際の責任の所在を明確にするために、押印をしたほうが安心です。
PDFの場合は、電子印鑑やタイムスタンプなどを利用すると良いでしょう。
PDFの見積書の記載項目
見積書の書き方には、紙であれPDFであれ特に決まりはありません。
業種や工事の内容などによっても、必要な項目は変わってきます。
もっとも、会社が責任を持って作成した見積もりであることがわかるよう、以下の項目は最低限記載すると良いでしょう。
- 宛先
- 発行者(受注者)情報
- 発行日と有効期限
- 商品の情報(商品名や型番・数量・単価など)
- 各項目の小計・消費税・合計金額
見積書の記載方法に関する記事はこちら
見積書をPDF化する方法
では、今作っている見積書をPDFにしたい場合、どのようにすれば良いのでしょうか。
よく行われている方法として、エクセルで作成した見積書をPDFに変更する方法と、紙の見積書をスキャンしてPDF化する方法の2つが考えられます。
どのような方法か、概要を見ていきましょう。
エクセルで作成した見積書をPDFに変更
見積書をエクセルで作成している企業は少なくありません。
この場合は、Adobe Acrobatを使って簡単にPDF化できます。
会社のパソコンにアプリケーションが揃っていればすぐにできますし、導入されていない場合は、会社の場合はライセンスを購入するのがおすすめです。
紙の見積書をスキャンしてPDF化
専用のシステムなどで見積書を作成しているケースも多いのではないでしょうか。
見積もりや顧客管理、プレゼン専用の独自端末などを使っている場合、汎用的なアプリを入れることができず、会社のパソコンとも連携できないケースがあります。
この場合には、プリントアウトした紙の見積書をスキャンして、パソコンにデータとして取り込んでから、Adobe Acrobatを使ってPDF化しましょう。
手順1
スキャナーを導入する
上述した見積書をスキャンする方法を用いる場合、スキャナーが必要となるので、スキャナーがない企業は導入が必要です。
金額など契約に直結する重要な情報が記載されているため、スキャニングのミスなどが起こらないよう、高性能なスキャナーを導入するのがおすすめです。
手順2
スキャニングミスを確認する
もっとも、どんなに高性能なスキャナーでも、完璧にスキャニングできているとは限りません。
スキャニングをしたら、必ず変換ミスなどがないか、しっかりとチェックを行いましょう。
正しい状態にしたうえでPDF化しないと、やり直しになるなど手間や時間がかかってしまうので注意が必要です。
見積書の電子化に関する記事はこちら
見積書をPDF化するメリット
スキャニングによるPDF化は若干、手間がかかるものの、見積書を紙ではなくPDF化するメリットがあります。
どのようなメリットが生まれるのか見ていきましょう。
コスト削減
見積書をPDF化することによる大きなメリットとして「コスト削減」が挙げられます。
手渡しや郵送はコストがかかる
現在、見積書はどのように渡していますか。
訪問して手渡しでお渡しする場合や郵送やメール便などを利用しているケースもあると思います。
その際に急ぎで見積書を請求された場合は、速達や宅急便での時間指定、バイク便等を利用する可能性があります。
また手渡しであれば、交通費やガソリン代をかけ、時間を割いて訪問する必要があります。
このように、見積を郵送や手渡しで行う場合、コストがかさむ可能性が大きくなります。
見積もりはあくまでも提案の段階であり、契約に結びつかないケースが多々ある為、出来れはコストは削減したいところです。
PDF化で時間・費用のコストを削減
見積書をPDF化してメール添付で送信できれば、作成でき次第一瞬で送れるので、移動コストや時間の無駄もありません。
さらに、紙の見積書を印刷するコストや紙の代金、郵送や宅配、バイク便などのコストも削減できます。
セキュリティ強化
見積書は、依頼した企業がどのくらいの金額で工事を発注しようとしているかがわかってしまう書類です。
たとえ提案段階とはいえ、情報流失は避けたいです。
PDFはパスワードがかけられるうえ、エクセルやワードのファイルと違って編集できないように加工できます。
紙やほかのファイルに比べ、改ざん防止に役立ち、セキュリティ強化が可能です。
見積業務の効率化
見積書をPDFにすれば、作成して一瞬で送ることができます。
出先でノートパソコンで作成し、その場でメール添付して見てもらうことも可能です。
見積書を届けるためにわざわざ訪問する手間も時間もかかりません。
プリントアウトして送付状を作成し、封筒に入れて郵便局に持ち込むことや宅配業者やバイク便を手配して待つといった無駄な作業もカットできます。
見積業務の効率化に役立ち、スピーディーに見積書を届けられるので、契約チャンスを逃すリスクも減らすことが可能です。
見積書の送付方法に関する記事はこちら
見積書をPDF化する際の注意点
見積書をPDF化する際の注意点を確認していきましょう。
データの改ざん防止対策を行う
見積書はそのまま契約に結びつくこともあります。
自社では1,000万円と書いていたのに、勝手に900万円などと改ざんされ、「見積書に書いてあったではないか。」などと言われては困ります。
自社に不利な改ざんをされることやライバル会社に勝てないような改ざんをされては困るので、編集やコピペができないようにしたうえで、パスワードをかけましょう。
情報の流出に気を付ける
見積書は取引先への提案として重要な書類になるだけでなく、自社のノウハウや割引の仕組みなどが掲載されています。
情報が流出すると、取引先がどんな契約をしようとしているかがわかってしまうだけでなく、自社のプランニングや料金体系などのノウハウも流出するおそれがあります。
- パスワードをかける
- メールの宛先をダブルチェックするなどしっかり確認する
- ファイルとパスワードは別に通知する
などの対策をしましょう。
送付メールの件名で注意喚起する
送付メールの件名には「〇〇工事のお見積書」など、見積書が添付されていることをわかりやすく提示しましょう。
企業では日々たくさんのメールを受信するので、見逃してしまう場合やうっかり削除してしまうおそれもあります。
すぐに見つけてもらえるよう、わかりやすく簡潔なタイトルで伝えましょう。
個人情報保護に関する記事はこちら
PDFの見積書の保存方法
PDFとして発行した見積書や受け取った見積書は、電子帳簿保存法に沿って、プリントアウトして保存するのではなく、データのまま保存します。
その際は、真実性確保と可視性確保の要件を満たさなくてはなりません。
真実性確保と可視性確保の要件
真実性の確保とは、先にも見たように改ざんなどがなされない形式にしておくことです。
可視性確保の要件では、すぐに見つかる検索性の高さなどが求められます。
せっかく保存していても、どこに保存したかわからない、どのファイルだったかすぐに探せないのでは困ります。
ファイル名をわかりやすくするなど、一定のルール化が必要です。
社内ルールを定める必要がある
社内で決まりを作り、見積書を作成するスタッフごとに、バラバラにタイトルを付けるのは避けるようにしましょう。
たとえば、取引先名・工事名・日付とか、取引先名+通し番号など分類や管理がしやすいようにすることがおすすめです。
取引先も、データで保管しますので、取引先から見ても検索しやすく、管理しやすいファイル名になるよう配慮することが大切です。
見積書の管理・保存に関する記事はこちら
建築業向け管理システム『アイピア』
アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。 さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。
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まとめ
PDFの見積書は法的に有効であり、押印は必ずしも必要ありません。
ただし、偽造や改ざん防止、責任の所在を示すため、電子印鑑などを利用すると良いでしょう。
見積書をPDF化する方法として、エクセルで作成した見積書をPDFに変更する方法と紙の見積書をスキャンしてPDF化する方法などがあります。
メリットはコスト削減、セキュリティ強化、見積業務の効率化です。
注意点としては、データの改ざん防止対策を行うこと、情報の流出に気を付けること、送付メールの件名で注意喚起することが必要です。
PDFの見積書の保存方法は、電子帳簿保存法改正に則り、真実性と可視性の要件や保存期間などを守って、電子データとして保存しましょう。
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