請求書の金額は、支払える金額でないといけないため、1円未満の端数は処理しなくてはなりません。
近年は、消費税を計算して加算することで、1円未満の端数が生じるケースも増えてきました。
そこで、請求書の端数をどう処理するべきなのか解説していきます。
また、インボイス制度が始まることで端数処理も変わるのか、インボイス制度への対応についても見ていきましょう。
目次
請求書発行における端数処理とは
請求書は代金の支払いを求めるための書類です。
そのため、記載する代金は支払える単位でないといけません。
現在の日本では、1円未満の端数は現金での支払いはもちろん、銀行振込などもできず、キャッシュレス決済も不可能です。
そのため、消費税の計算などで1円未満の端数が生じた場合は、端数処理を行い、1円以上の支払いができる単位にすることが求められます。
端数処理の方法
端数処理の方法にはいくつかあり、四捨五入、切り捨て、切り上げなどがあります。
この点、法制度上は、どの方法を採ってもかまわないとされています。
ただし、取引の都度変更したり担当者ごとに違う方法を採ったりするのではなく、1つの企業において、いずれの方法を採るか統一しておくことが必要です。
また、四捨五入で繰り上がるケースや切り上げるケースだと、支払金額が増えます。
わずか1円であっても、取引相手によっては良い印象を持たないケースもあるので、切り捨てを採用する企業が少なくありません。
税務申告上も、一定の桁未満の端数は切り捨てで計算する仕組みになっているので、切り捨てを採用することで消費税額を大幅に肩代わりして支払うことにはなりません。
消費税額計算で端数が出た場合
インボイス制度を適用しない、現行の区分記載請求書においては、取引金額の記載は必要ですが、消費税額を明記する義務はありません。
そのため、消費税の端数処理についてのルールも明示されておらず、四捨五入、切り捨て、切り上げのいずれかを、企業が任意で採用して良いことになっています。
売上額で端数が出た場合
では、売上額に端数が生じる場合はどうすれば良いでしょうか。
たとえば、建築工事の場合、施工代金の計算にあたって、工数としてかける倍数により端数が生じるケースがあります。
売上額の端数処理については、法制度上特段のルールは設けられていません。
売上額の場合、わずかな端数でも、場合によっては大きな差が生じることもあります。
そのため、取引の相手方と端数処理について話し合いを行い、取り決めておくのが安心です。
請求書の書き方に関する記事はこちら
インボイス制度で端数処理はどう変わる?
2023年10月からインボイス制度が導入されることになりました。
インボイス制度が導入されると、端数処理のルールにも変更があるのでしょうか。
ここからは、インボイス制度とはそもそもどんな制度なのか、インボイス制度下での端数処理について見ていきます。
インボイス制度とは
日本では、標準税率と軽減税率の併存や消費税の非課税取引などにより、消費税の運用が複雑化しています。
消費税の計算や納税の適正化や効率化を図るために、消費税についてわかりやすい請求書を発行することを義務付けるインボイス制度が導入されることとなりました。
インボイス制度においては、売り手となる事業者は事前に登録をしなくてはなりません。
登録事業者である売り手は、買い手から求められれば、消費税などが記載されたインボイスを交付し、交付したインボイスの写しを保存しておくことが必要です。
買い手は仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として登録事業者から交付されたインボイスの保存などが必要です。
インボイス制度による端数処理の変更点
これまでの区分記載請求書では、軽減税率を適用する対象品目がある場合には仕入税額控除の適用を受けるために、税率ごとに区分して経理を行わなくてはなりませんでした。
もっとも、端数処理の方法は四捨五入、切り上げ、切り捨てのうち、いずれかを選ぶことが可能です。
インボイスでは、端数処理のルールが定められ、税率ごとに合計した対価の額に税率を乗じて消費税額の計算が求められます。
端数処理の回数
インボイス制度における端数処理のルールとして、1つのインボイスにつき税率ごとに1回だけ端数処理が認められます。
たとえば、標準税率の取引のみなら、1つのインボイスで複数の商品代金や工賃を合算することになっても、端数処理はまとめて1回だけです。
これに対して、軽減税率の品目もある場合には、軽減税率の品目をまとめて1回端数処理し、標準税率の品目をまとめて1回端数処理したうえで合算します。
端数処理の仕方は、四捨五入、切り上げ、切り捨て、いずれかを選択することが可能です。
積上げ計算の採用
消費税を納める税務申告のために、どのような計算が認められるかのルールも変更されます。
インボイス制度の導入前は、1年間の総売上に対する消費税を算出したうえで、全体の税額を求める割り戻し計算のみが認められてきました。
インボイス制度においては、積上げ計算の方式を採用することが可能です。
積上げ計算とは、売上ごとに発生した消費税の金額を足していき合算する方法です。
複数の書類での対応が可能
適格請求書とは、一定の事項が記載された請求書に限らず、契約書や納品書、その他、類似の書類も含まれます。
1枚の書類のみですべての記載事項を満たさなくても、請求書と納品書など、相互の関連が明確な複数の書類を全体として見て、インボイスで求められる記載事項を満たしていれば、複数の書類を合わせて1つのインボイス(適格請求書)とすることも認められます。
たとえば、テナントの賃貸借における賃料の支払いのケースについて見ていきましょう。
賃貸借取引では、賃貸契約書で毎月支払うべき賃料について定めます。
支払期日ごとに、請求書の発行や支払いの都度、領収書を発行することは稀です。
そこで、インボイスに記載すべき事項の一部が記載されている契約書と、毎月の支払いを示す通帳の記載や銀行の振込金受取書などを合わせて、インボイスに記載すべきすべての事項を網羅すれば、インボイスとして認められます。
請求書の電子化とインボイス制度に関する記事はこちら
インボイス制度へ経理担当者はどう対応すべき?
では、インボイス制度が導入されるに伴い、経理担当者はどう対応すべきなのでしょうか。
対応のポイントを見ていきましょう。
請求書への記載方法の確認
まず、インボイス制度で求められるインボイス(適格請求書)の記載方法をしっかり確認しましょう。
売り手としてインボイスを発行するには、事前申請を行い、登録事業者にならなくてはなりません。
そのうえで、現在使っている区分記載請求書の記載項目に加えて、登録事業者として割り振られた登録番号、請求書を発行するにあたって適用した税率および消費税額などの記載をすることが求められます。
その際、端数処理は適用税率ごとに1回といったルールも守りましょう。
システムを利用し業務を効率化させる
インボイスの作成は手書きでもかまいませんし、従来使用してきたエクセルなど表計算ソフトで作成した計算ツールや請求書発行ツールの計算式を見直すことや項目を増やすことで対処することも可能です。
もっとも、記載すべき内容を漏れなく記載し、かつ端数処理などのルールを正しく適用するには、インボイス制度に対応したシステムを導入するのがおすすめです。
ミスをなくし、余計な心配をせず、インボイス制度に対応した請求書が発行できるので、業務の負担が軽減でき、業務の効率化を図ることができます。
インボイス制度スタート後も、制度改正や軽微な改正があるかもしれないので、システムアップデートが無償かつスピーディーにできるシステムや瞬時に変更が反映できるクラウドシステムの利用がおすすめです。
請求管理システムに関する記事はこちら
インボイス制度にも対応!建築業向け管理システム『アイピア』
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まとめ
請求書発行で端数が出た場合の処理方法には、四捨五入、切り捨て、切り上げなどの方法がありますが、税法上はどの方法をとっても良いとされており、企業においていずれかの方法を採用することができます。
取引の都度変更したり担当者ごとに違う方法を採ったりするのではなく、いずれかの方法に統一しておきましょう。
もっとも、インボイス制度がスタートすると、端数処理の方法にルールが適用されます。
1つのインボイスにつき税率の異なるごとに1回だけ端数処理が認められ、税率ごとに合計した対価の額に税率を乗じて消費税額を求めることが必要です。
ただし、積上げ計算の採用や複数の書類での対応が可能です。
インボイス制度への対応方法として、経理担当者は、請求書への記載方法の確認や、システムを利用した業務効率化などが求められます。
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