少子高齢化でどの業界も若手人材が減少し、人手不足が問題になっています。
中でも、建設業界は若者離れが加速しています。
建設業は技術力や経験も重要ですが、やはり体力も必要です。
建設業の将来を担っていくためにも、技術やノウハウを継承させる必要があり、若手人材の育成は欠かせません。
建設業における若者離れの原因と、若者離れを止めるための7つの対策について見ていきましょう。
目次
建設業における若者離れの実態
2021年10月に国土交通省が発表した調査結果によると、建設業の就業者は55歳以上が約36%、29歳以下が約12%と高齢化が進行しています。
少子高齢化だから仕方ないと思われそうですが、全産業の29歳以下の比率は約17%のため、ほかの業界と比べても若手人材の割合は少ないのが実態です。
4割近くが55歳以上で、29歳以下は約1割という実態は、現在の担い手不足だけでなく、建設業の将来にとって大きな問題です。
新しい建物の建設はもちろんですが、建物は長く使っていく必要があり、メンテナンスも必要となります。
若手人材がいないと技術やノウハウも継承できず、建設業の将来が不安視されているのが現状です。
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建設業で若者離れが加速する理由
建設業で若者離れが加速する理由として、以下のような理由が挙げられます。
- 不安定な雇用形態
- 長時間労働
- 休日が少ない
- 収入が安定しない
- 旧態依然とした価値観
それぞれ詳しく見ていきましょう。
不安定な雇用形態
建設業では、正社員としての雇用ではなく、アルバイトや日雇いをはじめ、個人事業主として仕事を受けているケースも少なくありません。
そのため、他の業界と比べて社会保険への加入率が低いことが問題視されています。
雇用体系が不安定なので将来的な不安が募り、ほかの業界に流れてしまうのが実態です。
長時間労働
国土交通省の調査データによれば、建設業の年間の総実労働時間は、360時間以上と全産業と比べて2割も長くなっています。
全産業では、働き方改革の影響で、10年前に比べて労働時間が約266時間減少しています。
しかし、建設業は約40時間の減少と、減少幅も大幅に少ない状態です。
休日が少ない
国土交通省の調査データによれば、建設工事全体における技術者の約4割が4週4休以下となっています。
週に1日休みを取れるか取れないかの状態で、働き詰めの現状です。
収入が安定しない
建設業の現場労働者の多くは、仕事の依頼が入らなければ収入が得られず、雨などで仕事が休みになる日が多ければ、その分収入が減少します。
このように、収入が不安定であることも若者離れの原因の一つです。
旧態依然とした価値観
親方の背中を見て仕事を覚える、現場で修行させられるなど、旧態依然とした価値観も問題です。
基礎をしっかり理解したうえで、丁寧な指導を受けられる環境が求められています。
上下関係が厳しすぎる職場環境も、今の時代受け入れられにくくなっています。
建設業の働き方改革に関する記事はこちら
建設業における若者離れを止めるには?
建設業における若者離れを止めるためにはどうすれば良いのでしょうか。
若者離れを起こしている原因に即し、それを改善する対策が求められます。
ここからは、建設業における若者離れを止める7つの対策について見ていきましょう。
働き方改革の実現
建設業界には、長時間労働、休日が少ないなど、現代社会の傾向とは逆行する働き方がいまだ残されています。
若者離れを止めるには、業界を挙げての働き方改革が必要です。
大手ディベロッパーを中心に、建設現場の週休2日を実施するケースが増えています。
ですが、中小企業においては浸透していないケースも少なくありません。
また、大きな現場も下請業者が多いので、休みの間に別の仕事を入れるなど、結局休みが取れていないケースもあります。
ほかの産業における働き方改革の波に即し、
- 週休2日の実施
- 長時間労働の制限
- 有休が取りやすい
- 男性でも育休が取れる
など、職場環境の改革を進めていくことが必要です。
賃金の見直し
建設業界の日当や賃金は、ほかの産業に比べて高い場合もあります。
しかし、競争が激化したり、下請けが増えたりするほど賃金水準が低下します。
顧客から依頼を取るために安く請け負うと、下請けほど利益が少なくなり、従業員の賃金にしわ寄せがきてしまうのが現状です。
賃金を上げるためにも、下請けの請負金額の適正化が求められます。
また、顧客に見積もりを提示する際も、安請け合いをするのではなく、なぜこの金額になるのかをしっかりと説明し、適正料金で請け負うことが大切です。
雇用条件・福利厚生制度を明示する
中小企業などを中心に、非正規での雇用や、正社員としての位置づけでありながら、法律違反で社会保険に加入させていないようなケースが見受けられます。
正社員だと思って応募したのに、社会保険が完備されていなかったとなると、すぐに辞めてしまうなど、人材の定着も図れません。
トラブルがなく、安全かつ安定的に働くことができるよう雇用条件・福利厚生制度を明示したうえで、人材採用を行っていくことが大切です。
ICTの導入
建設業は危険な仕事も多く、安全管理の徹底は不可欠で、報連相も欠かせません。
また、現場の仕事以外に顧客への進捗報告なども必要です。
現状、管理職は現場の巡回や現場での管理仕事を終えてから、職場に戻って報告書などの作成を行うなど、残業が非常に多い状況にあります。
また、活用するツールが表計算ソフト程度しかなく、一から手入力で文字を入れたり、現場で撮影した写真を貼り付けたりするケースもあります。
こうした作業を現場でもすぐに短時間でできるようICTの導入が必要です。
現場のスタッフも、その日のスケジュールチェックや作業日報の報告などをスマホやタブレットでできるようになれば、効率も良くなります。
現場の状況確認や情報共有が進み、安全対策にも役立ちます。
スキルアップなどの制度を設ける
現場で先輩の指示に従うだけ、現場で見て技術を覚えるといった旧態依然のやり方では人材は育ちません。
どのようにスキルが身につき、職人としてステップアップできるのか、スキルアップ制度などを設けることも大切です。
会社の支援で重機の資格が取れるなど、建設業で仕事をしていくためのスキルがしっかり得られる職場にすることが求められます。
キャリアパスを示す
入社後、どのようなキャリアが積めるのか示すことも欠かせません。
一生、現場で指示に従ってひたすら働くだけといったイメージを払拭する必要があります。
どんな技術を身につけ、何年後には主任になれる、専任技術者や現場監督になれる道があるなど、モチベーションが持てるキャリアパスを構築し示しましょう。
会社のイメージアップを図る
大手の建設業者を中心に、テレビCMなどで、「社会の役に立つ企業」であることをPRするといった動きが見られます。
中小企業においても、会社のイメージアップ戦略は欠かせません。
危険な仕事で長時間労働で休みもなく、先輩も厳しい、雇用が不安定といったイメージを払拭することが重要です。
例えば、IT化を取り入れており、効率的に業務を行っていることを伝えることで昔ながらのやり方ではなく、若者にマッチした業務フローを取り入れていることをアピールすることができます。
安心して働けて、手に職がつき、将来性があり、職場環境が優れているなどといったことをアピールしましょう。
ホームページを開設し、
- 1日の仕事の流れや1週間のスケジュールの例を示す
- 先輩社員の声を掲載する
- 社員が笑顔で集まる写真を掲載する
- IT化で効率的に作業できることを掲載する
など、イメージアップ戦略が求められます。
建設業のデジタル化に関する記事はこちら
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まとめ
建設業で若者離れが加速する理由として、不安定な雇用形態、長時間労働、休日が少ない、収入が安定しない、旧態依然とした価値観などが挙げられます。
建設業における若者離れを止めるには、働き方改革の実現、賃金の見直し、雇用条件・福利厚生制度を明示する、ICTの導入、スキルアップなどの制度を設ける、キャリアパスを示す、会社のイメージアップを図ることが大切です。
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