近年、建設工事費の高騰が問題になっていますが、建設工事費はそもそもどの範囲の費用を指すのでしょうか。
また、建設工事費が高騰の背景はなんなのか、今後の動向を見ていきましょう。
目次
建設工事費とは
建設工事費は、一つの工事にかかる費用の総額のことです。
建設工事費の構成
建設工事費は、大きく直接工事費と間接工事費に分かれます。
直接工事費は、工事に直接必要となる費用で資材や建材などの材料費や現場で工事を担当する作業員の労務費、車両や機械を動かす費用などが含まれます。
間接工事費
間接工事費は、さらに共通仮設費、現場管理費、一般管理費に分けることが可能です。
共通仮設費とは、足場や現場事務所、休憩所や仮設トイレなどの費用です。
現場管理費は、工事現場を管理するための費用で現場監督の人件費や現地事務所の光熱費などが該当します。
一般管理費は、工事現場に直接関わる費用ではなく、企業の経営を維持するために必要な費用です。
本社や事務所の光熱費や通信費、固定資産税や広告料、本社の営業職員や事務員の給料が該当します。
工事原価に関する記事はこちら
建設工事費の推移
建設工事費はコロナショックが起こる前は上昇傾向にありました。
コロナ禍で一時、停滞することや下落傾向が見られましたが、再び上昇傾向にあります。
建設工事費上昇の背景
建設工事費が上昇する背景には、どんなものがあるでしょうか。
建物・構築物の老朽化
建設工事費上昇の背景の一つが、建物や構築物のライフサイクルがひとまわりしたことです。
戦後の高度成長期に建てられたオフィスビルや大規模な公共施設をはじめ、高速道路や橋梁などの老朽化が進み、中には新しい耐震基準を満たしていないものも増えました。
このことから、老朽化した建物や構造物を解体し、再建や再開発をする動きが高まったのです。
東京オリンピック開催による再開発
また、東京オリンピック開催に向けて、商業施設が建て替えられたり、新しい競技場や観戦客を受け入れるホテルなどがどんどん建てられたりしました。
建築工事を担う企業や人手は限られている中で、建設工事の需要が増えれば、需要と供給の関係で建設工事費は上昇します。
特に東京オリンピックなど、いつまでにという納期が決まっているケースでは、間に合わせるために建設工事費が値上げされることも少なくありません。
人件費の上昇
もう一つの背景は、人件費の上昇です。
工事の需要が増え、短い納期を求められる中では多くの人手が必要になります。
日本は少子高齢化で人手不足であり、建設工事の仕事は敬遠されがちなので、なかなか人が集まりません。
そこで賃上げして、必要な人手を確保しようとする動きもありました。
また、働き方改革や賃上げの要求が高まる中、人件費を上げざるを得ない状態にもなっています。
収支管理・コスト管理に関する記事はこちら
建設資材価格の推移
建設資材価格も、上昇傾向にあります。
資材価格高騰の背景
資材価格高騰の背景は、工事の需要が増えて資材が不足していることに加え、コロナショックやアメリカから始まったウッドショックやロシアとウクライナの戦争、石油価格の上昇、為替レートの円安加速などが挙げられます。
コロナ禍の輸入制限
コロナで各国が感染対策のために輸出入の制限を行ったり、資材の製造メーカーが工場の稼働を停止したりしました。
これにより、輸入材や住宅設備の部品など、輸入に頼っていた資材は入ってこなくなり、供給量が減って資材価格が高騰したのです。
ウッドショック
また、コロナ禍で人との接触を避けるためや家での時間を充実させるために、アメリカでは郊外に一軒家を建てるニーズが高まりました。
ただでさえコロナによる制限で輸入材が入ってこないのに、アメリカで材木を大量消費したために、世界の市場の出回る材木が減少し、ウッドショックと呼ばれる現象が起きました。
ロシアとウクライナの戦争
ロシアとウクライナの戦争が始まったことも、資材価格の高騰につながっています。
ロシアは材木の生産国の一つで、日本でも輸入を行っていましたが、ロシアへの経済制裁として輸入を停止したことで、ロシアの材木が世界的に流通しなくなっています。
世界情勢が不安定になり、石油価格も高騰を続けており、資材の製造コストや運搬コスト、輸入コストなども高まり、資材価格の高騰を後押ししている状況です。
為替レートの急激な変動
また、一時は円安により輸入資材の価格が大きく値上がりし、レートが動く前に契約した価格では工事ができないと悩む業者も少なくありませんでした。
為替レートの急激な変動により、利益確保が難しくなっています。
建設工事費の今後の動向
では、建設工事費は今後どうなっていくのでしょうか。
今後の動向としては、さらに高騰傾向にあると予測されます。
その要因として考えられるのが、建設工事の需要増加と働き方改革による人件費の高騰です。
建設工事の需要増加
高度経済成長期に建てられた建物や構造物をはじめ、バブル期に建てられた建物も老朽化が進み、建て替えのニーズが高まっています。
時代の変化に対応するためや人口減少を食い止めるための再開発の動きも、全国各地で起こっています。
また、近年大規模災害が増えており、地震や台風、豪雨などで建物が全壊するケースも増えてきました。
被災した建物の建て替えや災害に強い住宅や公共施設の建築などのニーズも高いです。
工事業者の供給に対し、建設工事の需要が上回れば、需要と供給の関係から建設工事費は上昇します。
働き方改革による人件費の高騰
働き方改革や賃上げ要求などにより、工事に携わる関係者をはじめ、本社などでも職員の賃上げをしていかなくてはなりません。
長時間労働の制限や週休2日の徹底のもとで、工事をスムーズに進めるためには、より多くの人材の確保も必要です。
日本は少子高齢化で、どの業界でも人手不足で人材獲得競争が激化している中、仕事が大変で人気が少ない建設工事業界に人を呼び込むには賃上げをする必要もあります。
このため、人件費は今後もどんどん高騰していく可能性があり、建築工事費の上昇につながります。
建設・リフォーム業界の今後に関する記事はこちら
建築・リフォーム業向け管理システム『アイピア』
アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。 さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。
アイピアはここが便利!6つのポイント
まとめ
建設工事費は、建設工事にかかる費用で、直接工事費と間接工事費で構成されています。
建設工事費は近年上昇傾向です。
建設工事費上昇の背景として、老朽化した建物や構造物の更新時期が到来したこと、東京オリンピック開催に向けた再開発や新築工事のラッシュが起きたこと、人件費の上昇などが挙げられます。
建設資材価格の推移も上昇傾向です。
資材価格高騰の背景としては、コロナ禍による輸入制限やアメリカに端を発するウッドショック、ロシアとウクライナの戦争や石油価格の上昇、為替レートの急激な変動などが挙げられます。
建設工事費の今後の動向として、建設工事の需要増加や働き方改革による人件費の高騰が影響し、上昇することが予想されます。
原価管理の基礎に関する記事
- 【建設業向け】原価管理とは?その目的とメリットを簡単にご紹介。
- 知っておきたい原価計算の基礎知識から計算方法まで詳しく解説!
- 原価管理をきちんと行うためのABC(活動基準原価計算)計算方法やメリットも解説
- 【リフォーム業界向け】原価計算書を作成して粗利率低下を防止